第十二話 納言さんと遠足 前編
今回、遠足は梅野公園ですることになっている。
梅野公園は、府内でも有数の大きな公園だ。
緑が豊かで、とても綺麗に保たれている。
私たち私立平安学園中等部は、その梅野公園内に集まり、先生の説明を聞いていた。
「まずは、学級委員企画です。学級委員さん、お願いします」
先生がそう言うと、定子さまと一条さんが立ち上がった。
そして、先生たちが話していた方へ行く。
中等部全ての学級委員、総勢三十名が横並びになる。
そのちょうど中央にいる背の高い女子が、一歩前に進み出て、手元の紙に目を落とした。
「おはようございます、学級委員長の寝占です。今回学級委員会が企画するのは、クイズ大会です。学級委員が各地に隠れているので、見つけたら話しかけてください。そうすると、学級委員がクイズを出します。それを解くと、事前に配ったプリントにスタンプを押します。コンプリート目指して頑張りましょう!」
学級委員長の言葉を聞き、みんなの目がらんらんと光りだす。
私も、闘志に燃えてきた。
隠れる担当の学級委員は、話し中にどこかに行っているようだ。
一条さんの姿がいつの間にか見当たらなくなっていた。
「今から三十分後の十一時半には、ここに再集合してください。それでは、スタート!」
スタートの合図が聞こえてくると、すぐに私たちは動きだした。
定子さまも、前から戻ってきた。
「どこから行く?」
地図係の私は、公園の地図をバインダーの一番上に挟み直す。
まずは、作戦会議からだ。
「あっ、もしかしてさ。定子、隠れ場所を知ってたりする?」
うちの班に一人学級委員がいることを利用しようとしたのか、秋月がニヤリと笑いながら問いかける。
が、定子さまは首を横に振った。
「残念ながら、知らないわ。会議では、隠れる人たちとは別れて話し合っていたから」
「情報漏洩対策は、万全というわけですか」
世尊寺が、拳を顎のあたりに当てて考え込む。
なんだか、物語に出てくる探偵のようだった。
私も周りを見渡しながら考えた。
「地図で見ても意味がないかもしれない。茂みに隠れているとか、ありそうだけど」
「そうかもしれないわね。さすがは納言さん」
「エヘヘ、照れちゃいますよ」
定子さまから褒められて、頭の後ろをかく。
「それ、さっきもやってなかった?」
和泉がクスクスと笑う。
「さ、時間はあまりないわ。十五人の学級委員が隠れているからね。行きましょう」
定子さまが、その場の空気を変えてくれた。
私たちは、定子さまを先頭にして歩き出す。
木の下や茂みを見ていくと、草むらに隠れている男子を見つけた。
「一番乗りですよ。では、プリントを出してください」
定子さまが代表してプリントを渡すと、男子学級委員はポンとスタンプを押した。
そんな調子でたくさん回っていくと、十一時半から五分前になった。
集合場所の少し遠くまで歩いてきていた。
「そろそろ戻らないと、間に合わないかもです」
「マジかよー、あと一個でコンプするのに」
「とにかく、急ぎましょう」
小走りで来た道を戻っていると、木の陰に誰かがいた。
「あっ! あそこ、います!」
私が指をさすと、班の全員がそちらを向いた。
「バレちゃったか」
木の後ろから出てきた人影は、なんと――。
「懐仁!」
そう、一条さんだった。
「来るときになんで気づかなかったんだろ〜」
和泉の一言を皮切りに、みんなが笑いだす。
「みんな、お疲れさま」
一条さんの手で、最後のマスにスタンプが押される。
全てのマスにスタンプが押され、なんだか達成感が湧いてきた。
そんな中、世尊寺が時計を確認し、
「あっ! あと三分で集合しないと!」
と大声をあげたので、みんなそろって走る羽目になったのだった。




