表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍発売中】追放騎士は冒険者に転職する 〜元騎士隊長のおっさん、実力隠して異国の田舎で自由気ままなスローライフを送りたい〜  作者: 犬斗
第十章 秋の雷光

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

325/329

第317話 皇帝陛下のクエスト10

 白い砂漠に不時着した翠玉の翼(ルーディア)

 緊急事態にもかかわらず、ラミトワの操縦は神がかっていた。

 その証拠に、船体は全く傾いていない。


 俺は抱えていたラミトワを床に立たせた。


「ラミトワ、怪我はないか?」

「うん、大丈夫。ありがとう、マルディン」


 俺は操縦室を見渡した。


「みんな、大丈夫か?」

「ああ、問題ない。それにしても一体何だったのだ?」


 キルスが答えた。

 どうやら全員無事のようだ。


 アリーシャが窓際に立ち、外の様子を確認している。

 その表情には、焦りが滲み出ていた。


「マルディン。先程の振動はコル・アビリムの大角です。振動の有効範囲に入ったのでしょう。近くにいるはずです。警戒してください」

「分かった。ラミトワ、船を上昇させるんだ。キルス、俺たちは出るぞ」


 すでにラミトワは操縦席の前で、計器類をチェックしていた。

 さすがは一流の運び屋だ。


「船体の損傷具合は分からないけど、飛べないほどじゃないよ」

「よし、俺たちが降りたら一旦この場を離れろ。またあの振動に巻き込まれたら、最悪翠玉の翼(ルーディア)は大破する」

「え! 危険だよ!」

「俺たちはコル・アビリムを討伐しに来てるんだぞ。危険は当然だ」

「う……、分かったよ」


 アリーシャは窓の外に視線を向けたままだ。


「マルディン。砂の壁(サルスーン)ほどではないですが、砂に不自然な動きがあります。コル・アビリムが地中で動いているようです」

「了解した。広い砂漠なら好都合だ。コル・アビリムを討伐してくる。狼煙を上げたら迎えに来てくれ」

「はい。気をつけてください」


 キルス、ティアーヌ、シャルクナは一階に向かった。

 俺もすぐに後を追う。


 一階船尾のハッチを開け、キャンプ物資が入った大きな木箱を降ろす。

 そして、伝声管に向かって、離陸を指示した。


 翠玉の翼(ルーディア)が上昇していく。

 船底に傷があるものの、飛行は問題なさそうだ。

 とはいえ、あの落下で船体が歪んだ可能性もある。

 帰ったらラルシュ工業へ点検に出す必要があるだろう。


 シャルクナが方位計を取り出した。


「マルディン様、東に一キデルトの方角に、コル・アビリムの巣があります」

「地図もないのによく憶えているな」

翠玉の翼(ルーディア)が落下する距離や、太陽の位置を確認していました」

「あの落下の最中に……。さすがだな」

「と、とんでもないことです」


 珍しくシャルクナが頬を赤く染めた。

 褒められて照れているのだろう。


 もちろん俺は褒めたつもりなどない。

 あの落下の中で、冷静に状況を判断していたことに感心せずにはいられなかった。

 さすがは黒の砂塵(アルドバ)だ。


 俺はキルスに視線を向けた。


「キルス、どうする?」

「そうだな。巣から一キデルトの距離であれば、ここをベースキャンプ地にして問題なかろう」

「確かにな。じゃあ、組み立てちまうか」


 俺たちはさっそく組み立て式の簡易小屋を建てた。

 これはラルシュ工業が開発したもので、冒険者のキャンプに革命を起こしたと言われている。

 特に砂漠のような場所だと、テントでは風に飛ばされてしまう。

 組み立て小屋の唯一の欠点は重量だが、飛空船で運搬すれば問題ない。


 組み立てが終わった小屋の中で、キルスが全員を見渡す。


「ここからは本格的な狩猟だ。皆、準備はいいか?」

「ああ、問題ない。しかし、あの大角が空気の振動を生み出すのであれば、まずは大角を対処しなければならんぞ」


 俺はティアーヌを見つめる。


「お任せください!」


 ティアーヌが笑顔を浮かべながら、右手で胸を叩いていた。

 こんな状況でも、この娘の明るさは変わらない。

 本当に頼もしい。


 ティアーヌの武器は重槌(マルテッロ)だ。

 剣と違い、破壊を得意とする。

 しかも、その素材は俺の愛剣悪魔の爪(ヴォル・ディル)と同じで、一角虎(ガーラ)のネームドであるヴォル・ディルからローザが作った。

 間違いなく、この世に二つとない重槌(マルテッロ)と言える。


「確かにティアーヌの悪魔の重撃(ヴォル・トール)なら、大角を破壊できるかもしれんな」

「私もサポートします」


 隣でシャルクナも頷いていた。


 シャルクナの武器は両断剣(ツヴァイヘンダー)だ。

 大剣である両断剣(ツヴァイヘンダー)は、斬ると同時に破壊もできる。


「此度の討伐は、お主たち二人にかかっている言っても過言ではない。頼んだぞ」

「「はい!」」

「マルディン。私たちは二人が大角を狙えるように立ち回るぞ」

「ああ、任せろ」


 コル・アビリムの討伐は、砂上で行われることになった。

 当初の想定通りだ。


「おっと、そうだった。リーシュからこれを貰ったんだ」


 俺は道具箱から保護眼鏡(ゴーグル)を四つ取り出した。


「なんだこれは? 保護眼鏡(ゴーグル)にしては仰々しいな」


 キルスが手に取る。


開発機関(シグ・ナイン)で新たに開発した保護眼鏡(ゴーグル)だ。防塵面(マスク)と一体型なんだよ。砂漠でも視界が確保できて、呼吸も楽にできるそうだ」


 キルスは興味深そうに確認しながら、保護眼鏡(ゴーグル)を顔に装着した。


「視界が広い。それに、呼吸が楽だぞ。これは凄いな。ふむ、皇軍で導入してもいいだろう」


 キルスは早くも気に入ったようだ。


 恐らく開発機関(シグ・ナイン)の上層部では、それを見越して俺に提供したのだろう。

 皇軍で導入となれば数万個単位で発注される。

 たった四つの提供で、莫大な利益を上げるというわけだ。


 開発機関(シグ・ナイン)の局長は、世界一の鍛冶師であるローザだ。

 それにしても……。


「ローザさんって、商売もお上手なんですよ。ふふ」


 俺の考えを見抜いたティアーヌが、右手を口に添えて笑っていた。


 開発機関(シグ・ナイン)はギルドで唯一予算を不要としている。

 全て独自の収益でやりくりしているのだが、あまりにも好き勝手やりすぎることで時折暴走するという。

 そのため、ギルドの暴れ馬と呼ばれていた。


 俺は保護眼鏡(ゴーグル)を包んでいた綿も取り出す。


「ちょうどいいな。キルス、これも使おう」

「綿?」


 俺は綿を千切って固く丸めながら、細長い形状に整えた。


「これを耳栓にしよう。あの振動は強烈だ。鼓膜にまで響く。ないよりマシだろう」

「そうだな。良い案だ」


 各自それぞれ綿を丸め、耳に詰めた。

 そして準備を終え、小屋を出発。


 俺たちはまずシャルクナが指し示した場所へ向かう。

 一歩、また一歩と白い砂漠を進む。


「見た目は雪原と同じだな」


 俺は呟きながら、後ろを振り返った。

 四人の足跡がくっきりと残る。

 その様子はまさに雪原だが、気温は高く、大量の汗をかくというなんとも不思議な状況だ。


「ん?」


 足跡を眺めていると、砂が震え始めた。


「キルス!」


 俺は叫びながら、腰の悪魔の爪(ヴォル・ディル)を抜き放った。

 ティアーヌとシャルクナが、それぞれ武器を構える。

 キルスもすでに、長剣(ロングソード)砂塵の雷(セクレル)を抜いていた。


 砂の振動が徐々に大きくなる。

 地中から何かが突き上がってくる感覚だ。


 砂が舞い上がり、視界を遮る。

 それはまるで吹雪のようだ。

 だが、保護眼鏡(ゴーグル)のおかげで目は開けていられた。

 呼吸も問題ない。


「来るぞ!」


 悪魔の爪(ヴォル・ディル)を握る手に力が入る。

 防塵面(マスク)の下で生唾を飲み込んだ。


「グゴアァァァァアアァァァァ!」


 砂地の爆発とともに、モンスターの咆哮が鳴り響く。

 耳栓をしていなければ、両手で耳を塞いだだろう。


 天に届くかのような大角を振り回す砂泳角竜(セントラウス)


 コル・アビリムが姿を現した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ