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プロローグ
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初夏の陽光が、木々の間から木漏れ日となって降り注ぐ。
風が若葉を揺らす。
王都北方の森。
一見すれば、どこにでもある穏やかな森だった。
だが。
「……静かですね。」
シフォンが足を止め、小さく呟いた。
灰色の耳が忙しなく動く。
ロザリアが首を傾げる。
「それが何か?」
フィリアが静かに首を横へ振った。
「生き物の気配がありません。」
ターケシも周囲を見回す。
「ああ。」
「最初に薬草採取へ来た時は違った。」
シフォンが鼻をふんふんと鳴らす。
「ウサギ、いました。」
フィリアも思い出すように空を見上げた。
「木の上にはリス。」
「鳥も、たくさん鳴いていました。」
ターケシは苦笑する。
「熊とも戦ったな。」
シフォンも思わず笑う。
「あの時は怖かったです……。」
その笑みも、すぐに消えた。
今は違う。
風が吹くだけ。
鳥は鳴かない。
木々の間を駆け回る小動物もいない。
獣の臭いもしない。
森は生きているはずなのに。
まるで、息を潜めているようだった。




