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地下の戦い

リディアに見送られ、一行は穴の奥へと進んだ。

先頭はシフォンとフィリア。

シフォンが匂いと足跡を追い、フィリアが弓を構えて前方の闇を警戒する。

中央にはエドガーたち調査隊とロザリア。

そして最後尾を、ターケシが守った。

洞窟は、以前潜った廃坑道よりも広い。天井も高く、壁面には人工的に削られた跡が残っている。湿った空気が肌にまとわりつくが、気温は低く、吐く息がわずかに白んだ。

「足跡を探せ」

ターケシは低く言った。

「スケルトンの群れが自然発生したんじゃないなら、最近ここに入った奴がいるはずだ」

シフォンが鼻をふんふんと動かしながら、地面に目を凝らす。

フィリアはその横で、黙って弓を構えたまま進む。

しばらくして。

「……ありました!」

シフォンの耳がぴんと立った。

彼女は膝をつき、湿った土の上に残るかすかな窪みを指差す。

「足跡です。匂いは……人間と……それから……」

そこで一度、眉をひそめた。

「スケルトン、だと思います」

エドガーが息を呑む。

「骨に匂いが残るのか?」

「普通は、あまり。でも……これは、土と古い墓と、腐った魔力みたいな匂いがします」

ターケシは足跡を見下ろした。

人間の足跡。

そして、その周囲に残る、細く硬いものが地面を擦ったような跡。

「有力な手がかりだ」

ターケシは剣の柄に手を置いた。

「足跡と匂いを辿ろう。だが急ぐな。相手がいるなら、向こうもここを知っている」

シフォンが小さく頷く。

フィリアが静かに矢を番えた。

洞窟の奥から、湿った風が吹いてきた。

まるで、何かが一行を待っているようだった。

「……何かが、近いです。」

シフォンが立ち止まり、鼻をふんふんと動かした。

「スケルトンか?」

「いえ……もっと匂いが強いです。腐った肉と……魔力の匂いが混ざっています。」

ターケシは周囲を見回した。

洞窟は静まり返っている。

「どこだ。」

「……ここです!」

シフォンが足元を指差す。

その瞬間。

ターケシは迷わず剣を地面へ深々と突き立てた。

ボコッ。

地面が大きく膨れ上がる。

まるで土の中で何か巨大な虫が暴れているようだった。

やがて泥をかき分け、一対の腐った腕が姿を現す。

続いて肩、胴体、顔。

皮膚は黒ずみ、ところどころ骨が覗き、濁った体液が滴っている。

「ひっ……!」

シフォンが息を呑む。

ロザリアも調査隊の騎士たちも思わず一歩後ずさった。

「落ち着け。」

ターケシは静かに言う。

「ゾンビだ。スケルトンと同じだ。死体に魔力を流し込んで動かしているだけの魔物だ。」

腐乱死体が低いうめき声を上げながら立ち上がろうとする。

その前に。

剣が一閃した。

腐った首が宙を舞い、胴体が崩れ落ちる。

「頭を落とすのが一番早い。」

その言葉を合図にしたかのように――

ボコッ。ボコッ。ボコッ。

前方。

側壁。

足元。

至るところで土と岩が盛り上がる。

腐乱死体が次々と姿を現した。

「ロザリア!」

「はい!」

レイピアを掲げたロザリアの足元に魔法陣が広がる。

「水よ――奔れ!」

幾筋もの激しい水流が洞窟内を駆け抜けた。

腐った肉を引き裂き、立ち上がったばかりのゾンビたちを次々と壁へ叩きつける。

腕が飛び、胴が砕け、動きを止める。

「残った奴を仕留める!」

ターケシが駆け出す。

「シフォン! フィリア!」

「はい!」

「了解。」

シフォンは低く潜り込み、二本のダガーで首筋を断つ。

フィリアは矢を放ち、頭蓋を正確に射抜く。

「私も加勢する!」

エドガーが剣を抜き、側方から迫るゾンビへ踏み込んだ。

一体。

二体。

冷静な剣筋で首を断ち、動きを止める。

ターケシは小さく笑う。

「やるじゃないか。」

短い戦闘は、ほどなく終わった。

洞窟には再び静寂が戻る。

散乱する腐乱死体を前に、司祭マティアスが静かに聖印を掲げた。

「安らかな眠りを。」

鎮魂の祈りが、洞窟に静かに響く。

ターケシも剣を納め、亡骸へ向かって静かに頭を垂れた。

「……俺も祈ろう。」

誰も好きで、こんな姿になったわけではない。

洞窟を吹き抜ける冷たい風だけが、その祈りに応えるように静かに流れていった。

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