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隠し洞窟への潜入

ぽっかりと口を開けた穴は、人ひとりがようやく通れるほどの幅しかない。

足元は急な斜面になっており、松明の光を落としても底は見えなかった。

「……深いな。」

ターケシは周囲を見回すと、崩れずに残っていた石柱へ丈夫な縄を固く結び付けた。

反対側を自分の腰へ回し、何度も結び目を確かめる。

「どこまで続いているか分からない。まず俺が降りる。」

シフォンの耳がぴくりと動いた。

「ご、ご主人様……一人でですか?」

「ああ。」

ターケシは穏やかに頷く。

「危険があれば縄を強く引く。それを合図に引き上げてくれ。」

「……はい。」

シフォンは縄を両手で握り締める。

ロザリアも、フィリアも、そして他の仲間たちも無言で見守った。

ターケシは慎重に斜面を下り始める。

松明の明かりは少しずつ闇に飲まれ、その姿もやがて見えなくなった。

残された者たちは静かに待つ。

誰も口を開かない。

縄だけが静かに洞窟の奥へ伸びている。

……

一分。

二分。

さらに時間が過ぎる。

しかし縄が激しく引かれることはなかった。

やがて、

「よし、引き上げてくれ。」

下から聞こえた声に、一同は安堵の息をついた。

縄を手繰り寄せると、土埃を払ったターケシが姿を現す。

「どうでした?」

シフォンが真っ先に尋ねる。

「底まで降りた。」

ターケシは頷いた。

「自然洞窟につながっている。今のところ魔物も罠も見当たらない。ただ……。」

一度、洞窟を振り返る。

「どこまで続いているかは分からない。」

ベネディクトが眼鏡を押し上げる。

「自然洞窟ですか……地下水脈や古い地層と繋がっている可能性がありますね。」

ターケシは頷く。

「何人かでなら探索できそうだ。」

その時、エドガーが静かに口を開いた。

「ですが、ここにも誰か残した方がいいでしょう。」

全員の視線が集まる。

「万一、洞窟内で崩落や魔物との遭遇があれば、外から救援を呼ぶ者が必要です。」

リディアが一歩前へ出た。

「でしたら私が探索へ――」

しかしエドガーは首を横に振る。

「いや。」

その声には迷いがなかった。

「ここにはリディア、君に残ってもらう。」

「ですが……。」

「学者のベネディクト殿、司祭のマティアス殿、技師のミリア殿は、この先の調査には欠かせません。」

三人は静かに頷く。

エドガーはさらに続けた。

「そして何かあった時、馬を駆って王宮へ救援を求められるのは君だけだ。」

リディアはなお反論しかけた。

「それならエドガー、あなたが――」

「隊長は私だ。」

短い一言だった。

「だからこそ、現場を離れるわけにはいかない。」

その言葉に、リディアは唇を噛む。

なお何か言いたげだったが、エドガーと目が合うと、小さく息をついて口を閉じた。

「……必ず戻ってきてください。」

「ああ。」

とだけ答えた。

エドガーは仲間たちを見回す。

「それでは探索を開始する。」

松明が次々と灯される。

ターケシを先頭に、シフォン、フィリア、ロザリア、エドガー、ベネディクト、マティアス、ミリアの八人は、闇深い地下洞窟へと足を踏み入れた。

背後では、リディアが一人、縄と馬を守りながら、仲間たちの無事を祈るように洞窟の入口を見つめ続けていた。

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