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最初の自己紹介

https://51577.mitemin.net/i1187633/

「そう言えば、名前を聞いていなかった。

軽く自己紹介してくれるか。おれはターケシ…」

と言って、続かない。

「えーと。Dランクの冒険者だ。いろいろあって今に至る。Cランクの依頼を受けたい。仲間がいる。君たちを買った。以上だ。」

獣人の少女は、きょとんとした顔でターケシを見つめた。ぴんと立った耳がかわいらしい。

金髪の少女は露骨に眉をひそめる。

エルフの少女は無表情に目を細めた。

「……以上ですの?」

金髪の少女に問われる。

「以上だ」

「自己紹介というものは、もう少し自分のことを話すものではなくて?」

「話すほどのこともない」

ターケシがそう答えると、金髪の少女は呆れたようにため息をついた。

「名前も最後まで言えておりませんでしたわよ」

「ああ」

ターケシは少し考える。

考えて。

考えて。

「ターケシだ」

「今考えましたわよね?」

「気のせいだ」

明らかに気のせいではなかった。

エルフの少女の口元が動く。笑ったのだろうか。

獣人の少女は不思議そうに耳を揺らしていた。

だが、ターケシの言葉に嘘が邪念はないことだけは伝わったらしい。

取り繕う気もない。

格好をつける気もない。

ただ事実だけを並べている。

そんな印象だった。

しばらくして、獣人の少女がおずおずと手を上げた。

「あ、あの……」

「ん?」

「わ、私はシフォンといいます」

ぺこりと頭を下げる。

灰色の耳も一緒に垂れた。

「灰狼族です。年は十五です」

そこで少し言葉に詰まる。

「……奴隷になったのは、八歳くらいでした」

食堂に少しだけ沈黙が落ちた。

シフォンは慌てて続ける。

「あ、あの! 特技は掃除と洗濯です! 料理も少しできます!」

まるで品定めされる商品のような言い方だった。

長い奴隷生活で身についた癖なのだろう。

ターケシは何も言わない。

ただ頷いた。

「そうか」

それだけだった。

だがシフォンは、なぜか少しだけほっとしたように笑った。

次に金髪の少女が咳払いをし、口元に手をやって話す。

「では、わたくしですわね」

背筋を伸ばす。

どこか誇り高い仕草だった。

「ロザリア・フォン・ハリントン」

名乗った瞬間、空気が少し変わる。

本人もそれを察したらしい。

一瞬だけ目を伏せた。

「……元、ですけれど」

ターケシは黙って聞く。

「年は十八。ハリントン家の次女でしたわ」

"でした"

その言葉に込められたものは重い。

「剣術と魔法を少々。礼儀作法も一応できますわ」

そこでターケシを見る。

「奴隷として振る舞えと言われれば従いますが、媚びるつもりはありません」

「別に言わない」

即答だった。

ロザリアが少しだけ目を丸くする。

そしてそっぽを向いた。

「……そうですの」

最後にエルフの少女が話す。

「…フィリアです」

短い名乗りだった。

「…見ての通りエルフです」

「年齢は?」

「…女性に聞くことではありませんね」

ターケシは納得した。

「そうか」

「…納得するのですか」

「聞かれたくないんだろ」

「…ええ。そういうことにしておいてください」

だが、その瞳の奥には何かを隠している気配がある。

ターケシは気付いたが、追及はしなかった。

まだ昨日会ったばかりだ。

話したくなれば向こうから話すだろう。

話したくなければ話さない。

それでいい。

三人の自己紹介が終わった。

ターケシはカップに残っていたスープを飲み干す。

「よし」

「何がよしですの?」

「名前が分かった」

「今さらですわね」

「今さらだな」

誰も反論できなかった。

ターケシは立ち上がる。

「飯を食ったら冒険者ギルドに行く」

三人が顔を上げる。

「仲間登録をする」

シフォンの耳がぴくりと動く。

ロザリアの表情がわずかに変わる。

フィリアは静かにターケシを見る。

ターケシは続けた。

「勘違いするな」

三人が黙る。

「俺は君たちを買った」

食堂の空気が張り詰める。

「だが、依頼の間は仲間として扱う」

ターケシは三人を順番に見た。

「働いてもらう。飯も食ってもらう。風呂にも入ってもらう」

そして肩をすくめる。

「死なれると困るからな」

あまりにも不器用な言い方だった。

だが。

シフォンは少しだけ笑った。

ロザリアは呆れたように目を細める。

フィリアは無表情のままだ。

三人とも思った。

――この人は、たぶん悪い主人ではない。

だが、

今まで出会ったどの主人よりも、変な人ではあるのだろう、と。

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