燃える思い
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ついに霊廟の外に出る。ターケシはエドガーに叫ぶ。
「このスケルトンは放置できない、霊廟で抑え込む必要があるということでいいか!」
「…も、もちろんだ」
意図を理解しきれていないエドガーがなんとか答える。
ターケシはニヤリといたずらっぽく笑った
「ロザリア、もうひとがんばりしてもらうぞ。魔力をためろ。いい感じにたまったら教えてくれ。」
「シフォン、野営地まで調査隊を引率。」
「フィリアはここでおれとスケルトンが外に出るのを防ぐ。ロザリアの魔力が溜まるまでの辛抱だ。」
それぞれに指示を与え、
そのまま霊廟の入口で盾を持って立ちはだかる。
ガッ…ゴッ…
殺到するスケルトンの攻撃を防ぎ、斬撃で押し返す。
ロザリアが叫ぶ。
「 十分たまりましたわ!いつでも撃てます!」
「よし、こっちに来い。」
はい、と、そばに寄ったロザリアを抱きかかえる。
えっ…え!?何を…と恥ずかしさで赤くなるロザリアに、
「入口の上は吹き抜けになっている。地上からでは見えないが、スケルトンは出口へ殺到して団子になっている。そこへ上空から撃ち込めば、一度に焼ける。」
「というわけで投げるぞ。」
「えっ!?」
「入口の真上から撃て。全部熱消毒しろよ」
入り口の上方、殺到したスケルトンたちの真上へ放り投げる。
「ひゃ、ひゃああああ!」
「撃て、ロザリア!」
宙へ放り出されたロザリアは、悲鳴を上げながらも反射的にレイピアを構えた。
「もう、知りませんわ!」
両手に集まった炎が一気に解放される。
轟音。
巨大な火炎が入口へ殺到していたスケルトンの群れへ降り注いだ。
業火が骨を包み、乾いた骨が次々と崩れ落ちる。
紫色の光さえ炎に飲み込まれた。
「きゃああっ!」
魔法を放ち切った反動で、ロザリアの体が落ちてくる。
ターケシは盾を投げ捨てるように身を翻し、燃え盛る炎の中へ飛び込んだ。
炎が肩や腕を舐める。
熱風が頬を焼く。
それでも構わない。
両腕を伸ばし、落下してきたロザリアをしっかりと受け止める。
勢いのまま地面を転がり、ようやく止まった。
「……ケガはないか、ロザリア。」
ロザリアは目をぱちぱちと瞬かせる。
「だ、大丈夫……ですわ。」
「無茶をさせて悪かった。」
そう言ってロザリアを抱きかかえたままターケシは立ち上がる。
地面に足をつかせ、パンパンと煤や砂を払ってやる。
ロザリアの頬は、燃え盛る炎よりも赤く染まっていた。
その時だった。
野営地へ調査隊を送り届け、全力で戻ってきたシフォンが二人の姿を目にする。
「あーっ!」
灰色の耳をぴんと立て、思わず叫ぶ。
「いいなぁ! ロザリアさん、ずるいです!」
緊迫した戦場に、一瞬だけ空気が和らいだ。
ターケシは苦笑しながら剣を握り直した。
「文句は全部終わってから聞く。」
「まだ終わってないぞ。残りのスケルトンを殲滅する。」
ほどなく、霊廟のスケルトンは一掃された。
調査隊が戻ってきた。
そこには、入口の石壁は黒く煤け、柱の一部は焦げ、中からまだ灰色の煙が立ち上る霊廟があった。
「な……。」
「これは……。」
調査隊員たちは言葉を失う。
エドガーも呆然と霊廟を見つめる。
その時、ようやく彼は気付いた。
「あの時の確認は……。」
霊廟を焼く許可を、自分に求めていたのだ。
文化財を損傷させる可能性がある。
それでも、人命を優先する。
その決断を、調査隊長である自分に委ねたのだ。
エドガーは思わず苦笑した。
「最初から、そこまで考えていたのか……。」
ターケシは肩をすくめる。
「あとで『勝手に焼いた』なんて言われても困りますからね。」
「責任者は隊長でしょう?」
一瞬の静寂。
やがて調査隊の誰かが吹き出した。
その笑いは次第に広がり、張り詰めていた空気をほどいていく。
エドガーも苦笑しながら首を振った。
「まったく……。」
「君は本当に、とんでもない冒険者だ。」
ターケシは照れくさそうに頭をかき、焼け跡の霊廟へ目を向ける。
「霊廟は修復できても、人の命は戻りませんから。」
その言葉に、誰も反論する者はいなかった。




