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奴隷市場から始まる異世界冒険譚―第一部王都編  作者: たーけし
王宮からの使者
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馬車の出発

https://51577.mitemin.net/i1189263/

王宮前の広場には、二台の馬車が用意されていた。


荷台には調査用の道具や食料が積み込まれ、馬たちは静かに鼻を鳴らしている。


「それでは出発いたしましょう。」


エドガーが穏やかに微笑み、一台目の馬車へ手を向けた。


「皆様、ご乗車ください。」


その時だった。


「一つ、お願いがあります。」


ターケシが静かに口を開く。


「できれば、一台目の御者を私に務めさせていただけませんか。」


その場の全員が一瞬だけ驚いた。


「御者を……ですか?」


エドガーが眼鏡の奥で目を瞬かせる。


ターケシは頷いた。


「何か起きてから飛び出していては、間に合わないことがあります。」


「御者であれば周囲を警戒しながら進めますし、異変にもすぐ対応できます。」


「護衛として、その方が都合がいいと考えました。」


しばらく考えていたエドガーは、小さく笑みを浮かべる。


「……なるほど。」


「分かりました。」


「では一台目はターケシ殿にお願いします。」


その言葉に、リディアが一歩前へ出た。


「ならば二台目は私が御者を務めよう。」


短く言って手綱を受け取る。


準備が整い、それぞれが馬車へ向かう。


すると、シフォンが勢いよく手を挙げた。


「はい!」


「私はご主人様の隣がいいです!」


迷いのない一言だった。


ターケシが苦笑する。


「狭いぞ。」


「大丈夫です!」


その様子を見ていたフィリアが、ロザリアへ視線を向ける。


「……ロザリアも、ご主人の隣がいいらしい。」


「なっ!」


ロザリアの肩がびくりと跳ねる。


「そ、そんなことありませんわ!」


「私は別に……。」


言いかけてから、小さく咳払いをする。


「……で、でも。」


「ど、どうしてもというのでしたら、お隣に座って差し上げてもよろしくてよ。」


フィリアの口元がわずかに緩んだ。


「素直じゃない。」


「う、うるさいですわ。」


「じゃあ頼むよ。ロザリア。」


「ま、まったく、しかたないですわね!」


結局、一台目の御者席にはターケシ。


その左右に、嬉しそうなシフォンと、少し照れくさそうなロザリアが腰を下ろした。


二台目では、手綱を握るリディアの隣にエドガーが座り、後方にはベネディクト、マティアス、ミリア、そしてフィリアが乗り込む。


「それでは。」


エドガーの合図とともに、


二台の馬車はゆっくりと王都を後にした。


誰もまだ知らない。


この旅が、王国の闇へ踏み込む最初の一歩になることを。

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