本当に面倒なこと
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「マスター。」
ターケシは依頼書から目を離さず問いかけた。
「白聖王の霊廟とは何だ。最近、何かあったのか?」
ギルドマスターは羊皮紙を丸め、腕を組む。
「王都の北方だ。馬車で一日ほど行った先にある。」
奥の棚を探ると、一枚の古びた地図を取り出して机へ広げた。
「旧王家代々の墓所だ。初代白聖王から歴代の王族が眠っている。」
指で地図をなぞる。
「入口を入ると長い回廊が続く。その先に広間があって、一番奥に初代白聖王を祀る墓所がある。」
四人は身を乗り出して見入る。
「どうも最近、その霊廟で夜な夜な怪しげな光を見たとか、スケルトンが歩いていたとか、そんな話が出回っていてな。」
ターケシの表情が変わる。
「……夜な夜な怪しげな光。」
廃教会で見た、あの紫色の光景が脳裏をよぎる。
「廃教会と同じだな。」
ギルドマスターは静かに頷いた。
「そうだ。」
「だから、おそらく王宮は、お前たちを選んだ。」
「廃教会を探索し、死霊術の本を回収した。」
「さらに廃鉱山を踏破し、生還した。」
「実績だけ見れば、お前たち以上に適任な若手冒険者はいない。」
「す、すごいじゃないですか、ご主人様!」
シフォンの耳がぴんと立ち、嬉しそうに笑う。
ターケシは苦笑することもなく、小さく首を振った。
「……単純にそれだけなら、いいんだが。」
「ん?」
「依頼なら分かる。」
「だが、王宮が俺たちを名指しで、しかも集合場所まで指定して呼び出すか?」
部屋の空気が少しだけ重くなる。
ギルドマスターは苦い顔をした。
「そこなんだ。」
しばらく黙ったあと、低い声で続ける。
「気をつけろよ。」
「裏があるかもしれん。」
「……ないかもしれん。」
「俺にも分からん。」
「だが、王宮ってのは、善人だけがいる場所でも、悪人だけがいる場所でもない。」
「だから厄介なんだ。」
ターケシは深く息を吐いた。
「……面倒だな。」
少し間を置いて、もう一度呟く。
「本当に面倒なこと、でなければいいんだが。」




