お気に入りの装備
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薬草園での依頼を終えた帰り道。
ターケシは三人を防具屋へ連れて行った。
店先には革鎧、鎖帷子、鉄兜、盾が所狭しと並び、革の香りと金属を打つ音が店内に満ちている。
ターケシは少し申し訳なさそうに頭をかいた。
「ごめんな。ああいう汚れ仕事をする時、普通の服じゃすぐ駄目になる。今まで気づかなかった」
三人は顔を見合わせる。
「防具って、私たちにも……ですか?」
シフォンが遠慮がちに尋ねる。
「もちろんだ。怪我を減らすためでもあるし、服を長持ちさせるためでもある」
その一言に、シフォンは嬉しそうに耳をぴくりと動かした。
最初に選んだのはシフォンの装備だった。
ターケシは棚から茶色の革鎧を手に取る。
「これだな。」
胸当て、肩当て、籠手まで、自分が着ているものによく似ている。
「お、おそろい……」
思わず漏れた言葉に、シフォンは慌てて口を押さえた。
ターケシは気づかないまま続ける。
「前衛は一番攻撃を受ける。軽くて動けることが大事だ。」
店主が背中の革紐を締める。
身体にぴったり合った革鎧は、今までの粗末な服とは比べ物にならないほど動きやすい。
シフォンは腕を回し、軽く跳ねてみる。
「動きやすい……!」
尻尾が左右に大きく揺れていた。
次はロザリア。
ターケシは細身の軽装鎧を手に取った。
右肩だけ金属製の肩当てが付いている。
「レイピアは半身になることが多い。利き腕側を守れれば十分だ。」
ロザリアは鏡の前で剣を構える。
肩当てが光を反射し、貴族令嬢らしい気品も損なわない。
「これは……意外と悪くありませんわ。」
そう言いながら、何度も姿を鏡で確かめている。
ターケシは苦笑した。
「気に入ったか?」
「べ、別に見た目ではありませんわ。実用性です。」
言葉とは裏腹に、少しだけ頬が緩んでいた。
最後はフィリア。
彼女は店の奥に掛けられた緑と茶色を基調とした服を静かに見つめていた。
革の胸当て。
腕が動かしやすい細身の袖。
膝までの丈。
森で枝に引っ掛からない短めのマント。
ターケシは頷く。
「フィリアにはこれだな。」
「……森を走る者の服。」
小さく呟く。
弓を背負い、試しに弦を引く動作をする。
肩も肘も全く引っかからない。
「撃ちやすい。」
その一言だけだったが、ターケシには十分伝わった。
会計を済ませ、店を出る。
三人は新しい装備を身につけたまま歩き始めた。
シフォンは革鎧を何度も触りながら嬉しそうに歩く。
ロザリアは金属の肩当てを撫で、時折姿勢を正している。
フィリアは新しいブーツの感触を確かめるように静かに歩幅を変えていた。
ターケシは満足そうに三人を見回す。
「これでようやく、冒険者らしくなったな。」
その言葉に、三人は自然と笑みを浮かべる。
防具は単なる装備ではなかった。
使役されるだけでも、守られるだけでもない。
共に戦う仲間だ。
そんなターケシの無言の思いが、その一式には込められていた。




