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最初の朝

https://51577.mitemin.net/i1187576/

「あ、あの……お、おはようございます、ご主人様」

囁くような小さな声。

獣人の少女だ。

黒色の髪に、灰色の耳がぴょこりと飛び出している。

年の頃は10代半ばの少女。

「ふん、やっと起きましたのね。全く、私のような高貴な身分のものが、どうしてこんな下賤の者に買われなければなりませんのかしら」

毒づくのは、獣人の少女よりは年上だろうか、金髪碧眼の美少女、と言ってよいであろう。元貴族令嬢、だったか。

ようやく体を起こした自分に、見下した視線を向けている。

もう一人いたよな、と思って部屋の隅を見れば、まだ毛布にくるまっている少女。緑の髪からとがった耳の先が見える。エルフだったな。

「……朝から元気だな」

自分でも間の抜けた声だと思った。

金髪の少女が眉を吊り上げる。

「元気ではありませんわ。不愉快なのです」

「そうか」

「そうか、ではありませんわ!」

怒鳴りかけて、金髪の少女は口をつぐんだ。

獣人の少女がびくりと肩を震わせたからだ。

その様子を見て、金髪の少女は気まずそうに視線を逸らす。

主人公は顎をかいた。

「とりあえず、飯にするか」

「……え?」

三人の声が重なる。

「腹、減ってるだろ」

昨夜からは何も食わせていない。

いや、水は飲ませた。

風呂も使わせた。

毛布も渡した。

それで十分だと思っていた。

だが、よく考えれば違う。

買った。

連れてきた。

寝た。

以上。

それでは犬猫以下だ。

主人公は立ち上がり、衣服を確認する。

「下で何か食える。来い」

獣人の少女が、おそるおそる尋ねた。

「あ、あの……私たちも、ですか」

「当たり前だろ」

少女は目を丸くした。

その反応の意味が、主人公にはすぐには分からなかった。

金髪の少女は腕を組む。

「当然ですわ。奴隷とはいえ、空腹では役に立ちませんもの」

「そういうことだ」

「……あなた、会話が雑ですわね」

「よく言われる」

部屋の隅で、毛布がもぞりと動いた。

緑の髪の少女が、半分だけ顔を出す。

「……朝食、ですか」

「そうだ」

「…毒は」

「入ってない」

エルフの少女はしばらく主人公を見つめていた。

そして小さく息を吐く。

「…分かりました。行きます」

三人が動き始める。

獣人の少女はまだ怯えている。

金髪の少女は怒っている。

エルフの少女は思考が読めない。

主人公はそれを見て、ようやく理解した。

自分は昨夜、三人を安心させるようなことを何一つ言っていない。

けれど、今さら何を言えばいいのかも分からない。

だから、まずは飯だ。

飯を食わせる。

それから考える。

それが、この世界で十年生き延びた男にできる、最初の誠意だった。

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