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廃鉱山の調査

廃鉱山の入口。

昼なお暗い坑道から、冷たい風が吹き出してくる。

ターケシは松明へ火を移すと、三人を見回した。

「絶対に一人になるな。」

「誰かが立ち止まったら、全員止まれ。」

「返事が一つでも返ってこなかったら、その場で引き返す。」

「その他はいつもどおりだ。」

シフォンが頷く。

「はい。」

「俺は前に立つ。」

松明を左手に持ち直し、盾を構える。

「だが、俺は一番見えていない。」

三人がターケシを見る。

「この松明は便利だ。」

「だが、光がある分、暗闇は見えなくなる。」

ターケシは苦笑した。

「だから俺の目は、お前たちだ。」

シフォンへ向く。

「鼻を頼む。」

「はい!」

灰色の耳がぴくりと立つ。

「風向き。」

「血の臭い。」

「獣の臭い。」

「全部教えてくれ。」

「任せてください。」

続いてフィリアを見る。

「目を頼む。」

フィリアは静かに頷いた。

「影。」

「足跡。」

「天井。」

「少しでも違和感があったら止める。」

「分かりました。」

最後にロザリアを見る。

「お前は二人を守れ。」

ロザリアはレイピアへ手を添える。

「援護ですね。」

「ああ。」

「俺の後ろじゃない。」

「シフォンとフィリアの間に立て。」

「魔法は切り札だ。」

「無駄撃ちはするな。」

「承知しました。」

ターケシは盾を軽く叩いた。

「俺は前しか見ない。」

「だから、前以外は任せる。」

三人が同時に頷く。

ターケシは笑った。

「じゃあ行くぞ。」

松明が暗闇を照らす。

その灯りの先へ、一歩踏み込む。

しかし、本当に四人を導いているのは松明ではなかった。

シフォンの鼻。

フィリアの鋭い眼。

ロザリアの冷静な判断。

そして、それらを信じて前へ進むターケシ。

四人で一人。

そんな隊列が、静かに廃鉱山の闇へ消えていった。


少し前、冒険者ギルド。

ギルドマスターは依頼書を机へ置いた。

「Cランク昇格依頼だ。」

ターケシが目を通す。

『旧黒狼鉱山調査』

「調査だけですの?」

ロザリアが尋ねる。

「ああ。」

ギルドマスターは腕を組む。

「妙なことが起きてる。」

部屋が静かになる。

「最初は方向感覚を失うだけだった。」

「一本道の坑道を真っ直ぐ進んだはずなのに、気がつくと入口へ戻っている。」

ターケシが眉をひそめる。

「迷路じゃないのか?」

「一本道だ。」

「地図も合っている。」

「それでも戻る。」

ギルドマスターは続けた。

「そのうち、奥から歌が聞こえるようになった。」

シフォンの耳がぴくりと動く。

「歌……?」

「ああ。」

「女とも子供ともつかない声だ。」

「近づくと止む。」

「離れると、また聞こえる。」

フィリアの表情が僅かに曇る。

「……妖精ではありませんね。」

「そして。」

ギルドマスターの声が一段低くなる。

「三件目で死人が出た。」

誰も言葉を挟まない。

「四人で入った。」

「出口へ戻ってきたのは三人だった。」

シフォンが息を呑む。

「一人は?」

「分からん。」

「探した。」

「何日も探した。」

「荷物も。」

「武器も。」

「血痕も。」

「遺体も。」

「何一つ見つからなかった。」

会議室が静まり返る。

「だから今、その鉱山は立入禁止になっている。」

ターケシは依頼書を閉じる。

「魔物じゃないな。」

「少なくとも、それだけじゃない。」

ギルドマスターは頷く。

「だから調査なんだ。」

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