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王都の巡回

次の日に息抜きがてら、と請け負った王都の巡回依頼は、思いのほか平和だった。

逃げ出した犬をシフォンが嗅覚で追いかけ、角を曲がった先で無事に捕まえる。

「よしよし、もう逃げちゃだめだぞ。」

ターケシから犬を受け取った子どもは、何度も頭を下げた。

次は、広場の大きな樫の木。

子猫が高い枝から降りられず、みゃあみゃあと鳴いている。

フィリアが軽々と木に登り、そっと抱き上げると、集まった子どもたちから拍手が起こった。

「お姉ちゃん、すごーい!」

照れたように笑うフィリアへ、子猫は安心したように喉を鳴らす。

昼過ぎ。

広場では大道芸が始まっていた。

猿回しに、玉乗り。

道化師のパントマイムに、子どもたちは腹を抱えて笑っている。

ロザリアも思わず笑みを浮かべる。

「平和ですわね。」

ターケシも頷いた。

「ああ。こういう依頼も悪くない。」

その時だった。

「――っ!」

シフォンの体がびくりと震える。

振り返ると、一人の男が彼女の尻尾を乱暴につかんでいた。

「汚ねぇ獣人が!」

男は吐き捨てる。

「しかも奴隷じゃねえか。一丁前にきれいな服なんか着やがって――」

ターケシが男の腕をつかむ。

「放せ。」

静かな声だった。

男は鼻で笑う。

「なんだ、お前も獣人使いか?」

ターケシはもう一度だけ言った。

「放せ。」

男はターケシの胸を突き飛ばそうとした。

その瞬間。

ターケシの右拳が、最短距離で男の顎を打ち抜く。

乾いた音。

男は白目をむき、その場へ崩れ落ちた。

「やりやがった!」

仲間が一斉に飛びかかる。

一人目。

正拳突きが腹へ決まる。

二人目。

突っ込んできた腕を取り、そのまま柔道の背負投。

三人目。

腰を低くして踏み込み、相撲の突き押しの要領で屋台まで吹き飛ばす。

最後の一人は蹴りを放ってくるが。

ターケシは半歩かわし、軸足を払う。

男は見事に尻もちをついた。

「まだやるか?」

立ち上がろうとした男たちは、ターケシの眼を見て動きを止めた。

誰もが理解した。

――勝てない。

静まり返った広場。

次の瞬間。

「おおーーっ!」

どこからともなく歓声が上がる。

大道芸人が帽子を振り回して叫ぶ。

「いやぁ、今日は芸をする必要がありませんな!」

観客は大笑い。

子どもたちは目を輝かせる。

「すごーい!」

「もう一回やって!」

ターケシは頭をかきながら苦笑する。

「いや、もう終わりだ。」

ロザリアは呆れ半分、誇らしげに肩をすくめる。

「あなたらしいですわ。」

シフォンは自分の尻尾をそっと撫でながら、小さく笑った。

「……ありがとうございます。」

巡回を終えた帰り道。

屋台で香ばしく焼かれた羊肉の包み焼きを四つ買う。

焼きたての薄いパンに、香辛料の効いた肉と玉ねぎ、香草をたっぷり包んだ王都名物だ。

「おいしい……。」

頬張るシフォンを見て、ロザリアもフィリアも笑う。

夕焼けに染まる王都を歩きながら、四人は宿への道をたどる。

今日もまた、小さな平和を守れた。

そんな満足感とともに。

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