それぞれの選択
服選びに夢中になっているシフォンを見て、ロザリアとフィリアもようやく自分たちの服へ目を向けた。
「さて……私も選ばせていただきますわ。」
ロザリアは店内をゆっくり歩き、一着一着を丁寧に見て回る。
布地を指先で確かめ、縫い目を眺め、裾の仕立てまで確かめる。
派手なレースや鮮やかな色の服にはほとんど目もくれない。
やがて手に取ったのは、深い紺色のワンピースだった。
飾りは胸元に細い銀糸が一本入っているだけ。
袖も裾も実に簡素だ。
「こちらでお願いします。」
店主は少し驚いた顔をした。
「お嬢様なら、もっと華やかなものもお似合いになりますよ。」
ロザリアは穏やかに微笑む。
「ありがとうございます。でも、今の私は冒険者ですもの。」
服を胸に当て、小さく頷く。
「丈夫で、動きやすくて、長く着られる。それが一番ですわ。」
少しだけ目を細める。
「……華やかな服は、いつか本当に必要になった日に着ます。」
その横顔には、ハリントン家を再興するという静かな決意が宿っていた。
一方、フィリアは迷う様子すらなかった。
棚を一周しただけで、一着の服を手に取る。
生成り色のチュニックに、深緑の外套。
飾りらしい飾りはなく、腰を革帯で締めるだけの質素な装いだった。
「もう決まったのか?」
ターケシが少し驚いて尋ねる。
フィリアは頷く。
「森では、服は飾るものではなく、身を守るものだから。」
布を広げる。
軽く、それでいて丈夫。
腕も動かしやすい。
弓を引いても邪魔にならない。
「これなら旅にも向いています。」
実にエルフらしい選び方だった。
すると、ロザリアがくすりと笑う。
「フィリア、それでは少し地味すぎませんこと?」
「そう?」
「ええ。」
ロザリアは棚から淡い若葉色の肩掛けを取り出した。
縁には細かな草花の刺繍が施されている。
「こちらの方が、あなたの髪にも目にもよく合いますわ。」
フィリアは少しだけ考えた。
「……派手ではない?」
「十分控えめです。」
「なら。」
フィリアは素直に受け取った。
肩へ羽織ってみる。
柔らかな若葉色が、銀緑の髪によく映えた。
「ほら!」
ロザリアが満足そうに笑う。
「やっぱりこちらの方が素敵ですわ。」
フィリアは照れくさそうに肩掛けへ触れ、小さく笑う。
「……ありがとう。」
少し離れた場所でその様子を見ていたターケシは、思わず苦笑した。
「結局、お前たちは自分の服を選ぶより、お互いの服を選んでるな。」
三人は顔を見合わせる。
そして、同時に笑い出した。
廃教会で死と向き合った少女たちとは思えないほど、その笑い声は明るく、穏やかに店いっぱいへ広がっていった。




