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わからないことは怖いし知らないことは不安だ

地下室から戻ったターケシたちは、教会の外へ出た。

夕陽が森を赤く染めている。

誰もすぐには口を開かなかった。

「どう思いますの?」

ロザリアが最初に沈黙を破る。

ターケシは崩れた鐘楼を見上げた。

「分からん」

正直な答えだった。

孤児の失踪。

焼けた孤児院。

大量の人骨。

そして地下室。

どれも繋がりそうで繋がらない。

「ですが」

フィリアが言う。

「骨の集積は意図的です」

ターケシも頷く。

「墓ではない」

「ええ」

「供養でもない」

「はい」

シフォンが不安そうに尋ねる。

「じゃあ、なんのために……?」

誰も答えられない。

ターケシはしばらく考えた後、

静かに言った。

「夜を待とう」

三人がターケシを見る。

「夜?」

「こういう場所は昼と夜で顔が変わる」

前世の知識ではない。

この世界で学んだことだった。

魔物。

呪術。

怨霊。

死霊術。

暗くなってから動き出すものは少なくない。

「今日は見張りだ」

「戦うのですか?」

シフォンが尋ねる。

ターケシは首を振った。

「まず見る」

「敵を知る」

「それからだ」

夜。

森は静まり返っていた。

ターケシたちは教会の二階から地下入口を見張っていた。

灯りは消してある。

風の音だけが聞こえる。

深夜。

シフォンの耳がぴくりと動いた。

「ご主人様」

「どうした」

「下です」

全員の表情が変わる。

地下室。

その方向から。

ぼんやりと。

青白い光が漏れていた。

誰も灯りなど置いていない。

それなのに。

まるで呼吸するように。

明滅している。

「行くぞ」

四人は静かに立ち上がった。

地下への階段を降りる。

昼間よりも空気が冷たい。

骨の山が見えてくる。

そして。

地下室の中央。

骨の山の奥。

ガサゴソと無遠慮に骨の山を漁る。

「ご、ご主人様」

心配そうにシフォンが問いかける。

「わからないものは怖い。」

「 え…」

「知らないことは不安だ。」

「 はい…?」

「だが、怖い不安だと逃げて目を背けているだけでは、何もわからないままだ。」

そしてそこにあった。

一冊の本。

昼間はなかった。

いや。

あったのかもしれない。

骨に埋もれて見えなかっただけなのか。

黒い革表紙。

鈍く青白い光を放っている。

「死霊術の本……」

フィリアが呟く。

ターケシはゆっくり近づいた。

本能が警告している。

触るな。

危険だ。

だが。

ここまで来て見逃すわけにはいかない。

ターケシは骨を払い、

本を掴んだ。

その瞬間。

地下室から光が消えた。

完全な静寂。

嫌な沈黙。

そして。

カタ。

小さな音。

ターケシの足元。

骨の指が動いた。

全員の顔色が変わる。

カタカタカタカタ……

床一面の骨が震え始める。

まるで見えない糸に引かれるように。

頭骨が転がる。

腕骨が跳ねる。

肋骨が浮き上がる。

「下がれ!」

ターケシが叫ぶ。

骨が集まる。

一体。

二体。

三体。

十体。

二十体。

地下室中の骨が寄り集まり、

人の形を作っていく。

空洞の眼窩に。

青白い光が灯る。

シフォンが息を呑む。

ロザリアがレイピアを構える。

フィリアが矢を番える。

そしてターケシは死霊術の本を抱えながら、

目の前に並ぶ骸骨たちを見据えた。

「なるほどな」

ギシギシと骨が鳴る。

スケルトンたちが立ち上がる。

「骨を集めていた理由が分かった」

死霊術師は墓を作っていたのではない。

軍隊を作っていたのだ。

次の瞬間、

数十体のスケルトンが一斉にターケシたちへ向かって襲いかかった。

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