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奴隷市場から始まる異世界冒険譚―やり直す者たちの物語―  作者: たーけし
奴隷市場から始まって
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17/71

危険手当

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夕方。

西日に染まる街道を、四人は王都へ向かって歩いていた。

籠の中には月涙草。

依頼達成には十分な量だ。

ターケシの腕には応急処置の跡。

そして荷物の中には、熊と揉み合った際に剣や服に絡みついた黒い毛が一束。

なかなか濃い初依頼になった。

冒険者ギルドの扉を開く。

がやがやとした喧騒。

昼間とは違い、多くの冒険者が酒を飲み始めている。

ターケシはまっすぐ受付へ向かった。

「依頼達成だ」

受付嬢が籠を見る。

「月涙草ですね」

数を数える。

十分。

いや、少し多いくらいだった。

「確認しました」

ターケシは頷く。

「それと報告がある」

受付嬢が顔を上げる。

「報告ですか?」

ターケシは籠の横に黒い毛を置く。

「森で熊と遭遇した」

受付嬢の動きが止まった。

「……はい?」

ターケシは火傷した腕を見せる。

「これ」

さらに毛を指差す。

「たぶん熊」

たぶんではない。

どう見ても熊だった。

受付嬢の顔色が変わる。

「少々お待ちください!」

奥へ走っていく。

ターケシは首を傾げた。

「そんなに珍しいのか」

ロザリアが呆れた顔をする。

「普通は薬草採取で熊とは戦いませんわ」

「そうなのか」

「そうですわ」

シフォンも何度も頷いている。

やがて奥からギルドマスターが出てきた。

「おい」

開口一番だった。

「何をやらかした」

ターケシは正直に答える。

「薬草を採った」

「その腕は」

「熊」

「その毛は」

「熊」

「その嬢ちゃんたちは」

「無事だ」

ギルドマスターは額を押さえた。

周囲の冒険者たちも興味津々で集まってきている。

「詳しく話せ」

ターケシは順番に説明した。

月涙草の群生地。

シフォンの警戒。

熊の突進。

ロザリアの魔法。

フィリアの援護。

そして撃退。

話が進むにつれて、周囲が静かになっていく。

特に。

「シフォンが先に気付いた」

「ロザリアが火球を撃った」

「フィリアが熊の目を射た」

この辺りから冒険者たちの視線が変わった。

最初は奴隷を連れた変人を見る目だった。

今は違う。

戦力として見始めている。

話を聞き終えたギルドマスターがため息を吐く。

「なるほどな」

そしてシフォンを見る。

「お前が見つけたのか」

シフォンは少し緊張しながら頷く。

「はい」

「よくやった」

耳がぴんと立つ。

次にロザリア。

「火魔法か」

「少々ですわ」

「少々じゃねえな」

ロザリアが少し照れる。

最後にフィリア。

「森の民か」

「ご想像にお任せします」

ギルドマスターは苦笑した。

そしてターケシを見る。

「お前は」

「なんだ」

「薬草採取に行ったんだよな?」

「そうだ」

「熊を狩りに行ったわけじゃないな?」

「もちろんだ」

ギルドマスターは深く息を吐いた。

「ならまあいい」

帳簿を引き寄せる。

羽ペンを走らせる。

「月涙草採取達成」

さらさらと書く。

さらに。

「大型獣遭遇報告」

もう一行。

ターケシの目が少し輝く。

「追加報酬か?」

「出る」

「おお」

「ただし熊討伐じゃない」

「逃げたからな」

「逃げたからな」

妙に息が合った。

やがて受付嬢が小袋を持ってくる。

依頼報酬。

そして遭遇報告の追加分。

ターケシは中身を確認した。

「増えてるな」

「増えてますわね」

ロザリアも覗き込む。

シフォンも目を丸くする。

ターケシは頷いた。

「よし」

「何がですの?」

「今日は肉だ」

一瞬の沈黙。

そして。

シフォンの尻尾が猛烈に振られた。

ロザリアが吹き出す。

フィリアも笑う。

ギルドマスターはそんな四人を眺めながら思う。

朝は寄せ集めにしか見えなかったが、今は少し違う。

まだ未熟。

まだ危うい。

それでも確かに。

パーティーの形になり始めていた。

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