決勝戦 アルセイン&エルフィナ 後編後段①
ロザリアの魔法が闘技場を二つに分かった頃。
ガァンッ!!
一方では木剣同士が激突した。
「エルフィナ!!」
炎の壁へ向かおうとしたアルセインを、二本の木剣が阻む。
「行かせません!!」
シフォンだった。
灰色の耳を立て。
二刀を構え。
地下格闘技大会を制した獣人の戦士が、王国最強の騎士の前に立ちはだかる。
「シフォン……!」
「あなたの相手は私です!!」
アルセインは歯を食いしばった。
炎の向こう。
エルフィナは、たった一人でロザリアと対峙している。
四年前。
守れなかった。
そして今。
また。
また、大切な人を守れないのか。
その瞳に、激しい動揺が走る。
獣人の少女は、それを見逃さなかった。
「あなたが四年間戦ってきたように!」
ガンッ!!
「ロザリアさんも!!」
ガァンッ!!
「四年間、生き残るために戦ってきたんです!!」
アルセインの目が揺れる。
「奴隷って何か知っていますか!?」
「……!」
「あなたは、奴隷についてどれだけ知っていますか!?」
シフォンの二刀が、激しく打ち込まれる。
「お屋敷のメイドさん達と何が違うか、分かりますか!?」
「私は……。」
「私達は!!」
ガンッ!!
「奴隷ですけど、かわいそうな弱者じゃありません!!」
アルセインは言葉を失った。
「四年前を悔やむのは分かります!!」
「ですが!!」
「今も何も知らないなら、それは見て見ぬふりをしてきたということです!!」
「……っ。」
「あなたが本当に悔やむなら!!」
シフォンは更に踏み込む。
「四年前じゃない!!」
「闇に向き合えなかった、この四年間を悔やんでください!!」
ガァァァンッ!!
激突。
その時だった。
「勝者!!」
審判の声が響く。
「ロザリア・フォン・ハリントン!!」
「エルフィナ、戦闘不能!!」
歓声が、闘技場を揺らした。
アルセインが顔を上げる。
炎は既に消え去っていた。
その向こう。
倒れるエルフィナ。
そして、その前に立つロザリア。
「エルフィナ……。」
「大丈夫です。」
シフォンが静かに言った。
「ロザリアさんは、ちゃんと手加減できます。」
長い沈黙。
やがて。
「そうか。」
アルセインは、小さく呟いた。
「また、守れなかったと思った。」
木剣を握る。
「だが。」
その瞳から、迷いは消え始めていた。
「エルフィナは、守られる女じゃない。」
ゆっくりと顔を上げる。
「ロザリアも。」
「お前も。」
「俺が、勝手にそう思っていただけだった。」
シフォンの耳がぴくりと動く。
「シフォン。」
「はい。」
「決勝戦の続きをしよう。」
そこに立っていたのは。
四年前で時を止めた青年ではない。
王国最強の若手騎士。
アルセインだった。
「せめて。」
木剣を正眼に構える。
「王国最強の名に恥じぬ戦いをしよう。」
「来い。」
シフォンは、一瞬だけ目を丸くした。
そして。
ふっと笑う。
「はい!!」
「今のあなたなら、倒す意味があります!!」
次の瞬間。
ドンッ!!
灰狼族の少女が地面を蹴る。
アルセインもまた、正面から迎え撃った。
ガァァァンッ!!
二人の木剣が、闘技場の中央で激突する。
その音は。
まるで、一人の男がようやく過去と決別したことを告げる鐘のように、王都中へ響き渡った。




