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奴隷市場から始まる異世界冒険譚―第一部王都編  作者: たーけし
冒険者ギルドと最初の依頼

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出会った瞬間

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「火よ!」

ロザリアの声と共に、火球が放たれる。

轟っ――!

先頭にいたゴブリンが炎に包まれた。

悲鳴を上げる暇もない。

その瞬間にはもう、ターケシが飛び出していた。

地面を蹴る。

一直線。

迷いも躊躇もない。

ゴブリンは人を襲う魔物だ。

ここで見逃せば、いずれ誰かが死ぬ。

だから迷わない。

手にした剣を振り下ろす。

ごっ――!

鈍い音。

刃ではなく、重量で叩き潰すような一撃だった。

ゴブリンの頭頂に命中する。

頭蓋が砕け、魔物はその場に崩れ落ちた。

二体目がようやくこちらを向く。

遅い。

ターケシは踏み込む。

前蹴り。

全身の力を込めた一撃。

どごっ!

吹き飛んだゴブリンが仲間にぶつかる。

二体まとめて転がった。

そこでターケシは追撃する。

盾を構える。

そして振り抜く。

ぶんっ――!

鈍器そのものの一撃だった。

盾の縁が二体目の顔面を捉える。

骨が砕ける音。

血飛沫。

ゴブリンは地面に叩きつけられた。

しかし。

三体目はまだ生きていた。

ふらつきながら立ち上がる。

ターケシは間合いを詰めようとする。

その時だった。

ビシッ。

乾いた音。

ゴブリンが不自然によろめく。

何が起きたのか一瞬分からなかった。

次の瞬間。

ターケシは目を見開く。

ゴブリンの右眼。

そこに枝が突き刺さっていた。

即席の矢。

フィリアだ。

ターケシは思わず呟く。

「……俺がこいつじゃなくてよかった」

心からそう思った。

フィリアは少し離れた場所で静かに次の枝を構えている。

表情ひとつ変えていない。

ターケシは苦笑する。

敵に回したくない相手だ。

視界を戻す。

ゴブリンはまだ動いている。

眼球を貫かれながらも暴れている。

魔物らしい生命力だった。

ならば終わらせる。

ターケシは踏み込む。

剣を振る。

斜め右上から左下へ。

無駄のない一閃。

ざんっ――!

刃が肩口から食い込む。

鎖骨。

肋骨。

背骨。

まとめて断ち切る。

ゴブリンの身体が崩れ落ちた。

静寂。

風が吹く。

葉が揺れる。

戦いは終わっていた。

ターケシは周囲を確認する。

他に敵はいない。

「よし」

剣を下ろす。

振り返る。

シフォンは目を丸くしていた。

ロザリアも少し驚いている。

フィリアだけが冷静だった。

ターケシは三人を見る。

「怪我は?」

「ありません」

「大丈夫ですわ」

「問題ありません」

全員無事。

それが一番だった。

ターケシは頷く。

そしてシフォンを見る。

「最初に見つけたのはお前だ」

シフォンの耳がぴくりと動く。

「フィリアは援護」

フィリアが軽く会釈する。

「ロザリアは魔法」

ロザリアは少し誇らしげだ。

ターケシは最後に言った。

「いい連携だった」

三人とも少し驚いた顔になる。

褒められると思っていなかったのだろう。

だがターケシは本気だった。

ゴブリン三匹。

脅威ではなかった。

しかし――

誰も怪我をせず、

誰も慌てず、

役割を果たした。

それは十分評価に値する。

シフォンは嬉しそうに尻尾を振る。

ロザリアは照れ隠しに顔を背ける。

フィリアは静かに微笑んだ。

ターケシはそんな三人を見て思う。

(悪くない)

(本当に悪くないな)

薬草採取の依頼のはずだった。

だが、この日初めて。

ターケシは三人を「荷物」ではなく、「仲間候補」として見始めていた。

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