ゴブリン3匹に
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四人は森の奥へ進んでいく。
先ほどの野ウサギ騒ぎもあり、少し空気が和らいでいた。
しかし。
今度のシフォンは違った。
歩いていた足がぴたりと止まる。
耳が後ろへ倒れた。
尻尾も動かない。
主人公はすぐに異変を察した。
「どうした」
シフォンが声を潜める。
「あの……」
さらに小さな声。
「また何かいます」
主人公は即座にしゃがみ込む。
「どっちだ」
シフォンが前方の茂みを指差した。
今度は迷いがない。
主人公も真剣になる。
四人は静かに身を低くした。
森の音が聞こえる。
風。
木々の葉擦れ。
鳥の鳴き声。
そして――
かすかな話し声。
主人公にはまだ分からない。
だがフィリアが目を細める。
「あそこですね」
主人公が頷く。
さらに慎重に近付く。
やがて木の陰から姿が見えた。
緑色の肌。
醜い顔。
粗末な棍棒。
三匹。
ゴブリンだった。
フィリアが驚いたようにシフォンを見る。
「すごいですね」
「え?」
「私にもようやく見えました」
シフォンが目を丸くする。
主人公も小さく頷く。
「すごいな」
本心だった。
自分にはまだ気配しか分からなかった。
だがシフォンはずっと前から察知していた。
シフォンの耳が少し嬉しそうに動く。
主人公はすぐに意識を切り替える。
「ロザリア」
「はい」
表情が引き締まる。
「魔法を戦闘のやつに」
ロザリアが真剣な顔で頷く。
先ほど木を燃やした火球。
あれなら十分だろう。
主人公は前方を見る。
「俺がその後突っ込む」
「フィリアはできれば援護」
「承知しました」
フィリアはすでに枝を一本拾っている。
即席の矢だ。
主人公は最後にシフォンを見る。
「シフォン」
「はい!」
「みんなから離れるな」
シフォンが少し不満そうな顔をする。
「戦わなくていいんですか?」
主人公は首を振る。
「今はいい」
「どうしてです?」
主人公は正直に答えた。
「まだ戦い方を知らないからだ」
シフォンは黙る。
主人公は続ける。
「焦るな」
「今日は薬草採取だ」
「まずは生きて帰る」
シフォンは少し考え、
やがて力強く頷いた。
「分かりました」
主人公も頷く。
それでいい。
今のシフォンはまだ武器も技術もない。
だが周囲を見る力と、危険を察知する力はある。
それだけで十分戦力だった。
主人公は木陰からゴブリンたちを見据える。
三匹ともこちらに気付いていない。
好都合だ。
「ロザリア」
「いつでも」
「頼む」
ロザリアが静かに右手を掲げる。
魔力が集まる。
その横で主人公は腰を落とした。
前世で学んだ武道。
地下闘技場で鍛えた肉体。
今の自分にできることは限られている。
だが。
ゴブリン三匹程度なら十分だ。
森の空気が張り詰める。
そして次の瞬間。
ロザリアの掌に、赤い炎が灯った。




