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『ラウンド1から世界へ。』  作者: 龍崎
第1章  〜初めての大舞台〜

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第5話 届いたDM

ランキング一位になってから数日が経った。


天野湊の日常はほとんど変わっていない。昼はアルバイトへ行き、帰宅したらCHRONOS STRIKEを起動する。やることは今までと同じだ。


ただ一つだけ変わったことがある。


Nexの通知だった。


「うわ。」


スマホを開いた瞬間、思わず声が漏れる。


また増えている。


フォロワー数。


通知数。


いいね。


リポスト。


ランキング一位到達の投稿が予想以上に広まったらしい。


湊自身も昔からNexは使っていた。大会情報を見たり、有名選手の投稿を読んだりする程度だが、アカウント自体はずっと持っている。


数日前に投稿した内容も特別なものではなかった。


MINATO


『ランク1位到達!まだまだ頑張ります。RJも楽しみです!』


ただそれだけだ。


それでも反応は想像以上だった。


『おめでとう!』『RJ期待してる』『景虎で一位はすごい』『ダークホース』『大会で見たい』『本番どうなるか楽しみ』


通知欄は今も流れ続けている。


「ありがたいけど慣れないな。」


苦笑しながら画面をスクロールする。


正直、ランキング一位になった実感はあまりない。次の日もアルバイトへ行ったし、夜になればいつも通りランクマッチをしていた。生活が変わったわけではない。


だが周囲から見れば違うらしい。


少しずつ。


確実に。


MINATOという名前が広がり始めていた。


その時だった。


DM通知が表示される。


珍しい。


普段はほとんど使わない場所だった。


企業アカウントか何かだろう。


そう思いながら開く。


そして。


湊は固まった。


「……は?」


送信者の名前を見て二度見する。


見間違いではない。


認証マークも付いている。


本物だった。


CHRONOS STRIKE界のトッププロ。


五大大会優勝経験者。


配信で何度も見たことがある有名選手。


その名前が画面に表示されている。


「え?」


思わず声が出る。


DMを開く。


内容を読む。


『突然すみません。』『RJ出場予定ですよね?』『もし良ければ今度トレモ付き合いませんか?』『景虎対策をしたいので。』


数秒。


思考が止まる。


「え?」


もう一度読む。


変わらない。


再び読む。


やはり変わらない。


トッププロから練習の誘いだった。


しかも景虎対策。


つまり。


自分を対策対象として見ている。


そして練習相手として認識している。


「いやいやいや。」


湊は思わず立ち上がった。


部屋には誰もいない。


それでも落ち着かない。


今まで画面の向こうにいた存在だ。


五大大会で活躍し、実況が名前を叫び、何万人もの視聴者が見守る舞台で戦っていた選手。


そんな相手からDMが届いている。


「マジか……。」


少しずつ実感が湧いてくる。


ランキング一位。


有名配信者との対戦。


RJ出場。


気付かないうちに自分は少しずつ注目される側になっていたらしい。


湊は深呼吸する。


そしてキーボードへ手を伸ばした。


『こちらこそお願いします!』


送信。


数秒後。


既読が付く。


さらに返信が返ってくる。


『助かります。日時決めましょう。』


本物だった。


完全に本物だった。


「なんか急にRJって感じしてきたな。」


思わず笑う。


ランキング一位になった時よりも実感があった。


有名配信者に勝った時よりも実感があった。


トッププロが自分の景虎を研究しようとしている。


それはつまり、自分が同じ舞台へ立とうとしている証拠だった。


湊は改めてメッセージ画面を見る。


まだ大会は始まっていない。


だが確実に何かが動き始めている。


REVOLT JAPANまで残り三週間。


そしてこのDMこそが、後に天野湊の人生を大きく変える出会いの始まりになることを、まだ本人は知らなかった。

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