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『ラウンド1から世界へ。』  作者: 龍崎
第3章 CHRONOS STRIKE PRO LEAGUE

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第15話 チームを背負うということ

控室へ戻ると、ようやく試合が終わった実感が湧いてきた。


会場の歓声はまだ壁越しに聞こえてくる。大型モニターには試合結果が残ったままで、ORBIT 30―10 PHOENIXの文字が静かに表示されていた。勝った。間違いなく勝ったはずなのに、MINATOの頭には最後のK.O.よりも別の光景が残っていた。


控室ではACEが既に先鋒戦の映像を見返している。負けた試合だ。普通なら見たくもないはずなのに、本人は真剣な顔でメモまで取っていた。その隣ではREIGNも中堅戦を確認している。こちらは勝った試合だが、満足している様子はまったくない。


「もう見てるんですか」


思わず聞くと、ACEは画面から目を離さないまま答えた。


「見ますよ。来週も試合ありますし」


言われてみればその通りだった。リーグは終わっていない。今日の勝敗は今日の勝敗でしかなく、来週になればまた別の相手と戦うことになる。頭では分かっていたが、目の前で当たり前のようにそれをやっている二人を見ると少し感覚が違った。


MINATOは椅子へ座り、何となくモニターへ目を向ける。そこには先鋒戦の映像が流れていた。


ACEが負けた場面だった。


あの時、チームは追いかける側になった。個人戦ならそこで終わりだ。負けた選手が悔しがって終わる。しかし今日は違った。REIGNが勝って追いつき、最後に自分へ回ってきた。


試合中はそんなことを考えていない。ただ勝つことだけを考えていた。だが終わった今になって振り返ると、一人で戦っていた頃とは何かが違う。


もし自分が負けていたらどうなっていたか。


REIGNが取り返した意味はなくなる。ACEの敗戦もそのまま残る。勝敗表に記録されるのは自分の負けではなく、チームの敗北だ。


その違いは思ったより大きかった。


「どうでした?」


ACEが映像を止めながら聞く。


「何がですか」


「初めてのリーグ戦です」


MINATOは少し考える。


楽しかったのは間違いない。ただ、それだけでは説明できない感覚が残っていた。


「思ったより責任ありますね」


ACEは笑った。


「大将ですからね」


「いや、それだけじゃなくて」


言葉を探しながらモニターを見る。


先鋒戦。


中堅戦。


大将戦。


どれか一つ欠けても今日の結果は変わっていた。


自分が勝ったから勝てたわけじゃない。REIGNが繋いだから自分に回ってきたし、ACEが先鋒に出ていたから自分は大将だった。当たり前の話だが、実際に経験すると重さが違う。


「まあ、そのうち慣れますよ」


ACEは軽い調子で言う。


「慣れるんですか」


「多分」


「適当ですね」


二人が笑う。


そのやり取りを聞いていたREIGNが、ようやくモニターから目を離した。


「慣れない方がいい」


突然の言葉に二人ともそちらを見る。


「慣れると雑になる」


それだけ言うと、REIGNはまた映像へ視線を戻した。


ACEが苦笑する。


「確かに」


MINATOも少し納得した。


責任は重い。


正直、個人戦の方が気楽だったと思う瞬間もある。


それでも嫌ではなかった。


誰かの負けを取り返し、誰かの勝ちを繋ぐ。そのために自分が戦うという感覚は、今まで味わったことのないものだった。


モニターにはまだ試合結果が映っている。


ORBIT 30―10 PHOENIX


リーグは始まったばかりだ。


これから負けることもあるだろう。自分が助けられる日もあれば、逆に助ける日もあるはずだ。


チーム戦がどういうものなのか、まだ全部は分からない。


ただ一つだけ確かなのは、今日の一勝が自分一人のものではないということだった。

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