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『ラウンド1から世界へ。』  作者: 龍崎
第3章 CHRONOS STRIKE PRO LEAGUE

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第14話 大将戦④

第四ラウンド。


MINATOが二本、紅蓮が一本。あと一本で開幕戦は終わる。


会場の空気はこれまで以上に張り詰めていた。先鋒戦から積み重なった熱気は消えるどころか膨れ上がり、観客席もコメント欄も落ち着く気配がない。


『王手きた』『でも紅蓮だぞ』『まだ分からん』『ここからだろ』『開幕戦熱すぎる』


READY。

FIGHT。


開始直後から紅蓮は前へ出た。


後がない以上、受けに回る理由はない。Leonisの牽制で距離を支配しながら少しずつLEXを押し込み、主導権を握ろうとする。


「紅蓮選手、かなり積極的ですね」


「ここは行くしかありません」


Leonisの攻撃が何度か通り、試合序盤は紅蓮が優勢だった。観客席からも歓声が上がり、コメント欄にもPHOENIXを後押しする声が増えていく。


『紅蓮きた』『まだ終わらん』『追いつけるぞ』『流石だな』


しかしMINATOは焦らない。


ここまで戦ってきて分かったことがある。紅蓮は強い。対応力も高い。だからこそ守り切るだけでは終わらず、勝つために必ず前へ出る。


(来るな)


予感ではなかった。


読みだった。


体力リードを持った紅蓮は距離を詰める。Leonisらしい圧力でLEXを追い込みながら勝負を決めに来るが、MINATOはそこで待っていた。


Leonisがもう一歩前へ出る。


その瞬間、LEXの差し返しが刺さった。


会場がどよめく。


「MINATO選手!」


「返しました!」


コンボが決まる。起き攻めが続く。投げを見せて打撃を通し、打撃を意識させて再び投げる。


ほんの数秒前まで紅蓮が握っていた流れが、一気にMINATO側へ傾いた。


『うおおお!』『LEXだ!』『速すぎる』『そこから返すのか』『面白すぎる』


それでも紅蓮は崩れない。


Leonisも応戦する。牽制を置き、差し返しを狙い、少しでも流れを取り返そうとする。


だがMINATOも止まらない。


同じ攻めを繰り返しているように見えて、少しずつ形を変えている。紅蓮が対応した頃には別の選択肢が飛んでくる。


「MINATO選手、攻めの形を変えていますね」


「試合中の修正が早いです」


試合は終盤へ入る。


体力はほぼ並び、残り時間も少ない。ここまで来るとキャラクターではなく選手同士の勝負だった。


どちらも相手の癖を知っている。


どちらも相手の狙いを理解している。


だからこそ簡単には動けない。


観客席も静かになる。


コメント欄だけが流れていた。


『頼む』『どっちだ』『分からん』『緊張する』『マジで読めない』


先に動いたのは紅蓮だった。


Leonisが距離を詰める。


MINATOも動く。


反応ではない。


ここまで積み上げてきた読み合いの答えだった。


攻撃が交差する。


次の瞬間、会場が揺れた。


カウンターヒット。


決めたのはLEXだった。


歓声が爆発する中、MINATOは迷わずコンボを完走する。Leonisの体力が消え、画面中央へK.O.の文字が表示された瞬間、実況の絶叫が会場へ響いた。


「決着ーーーーーー!!」


「MINATO選手勝利!! ORBIT開幕戦勝利です!!」


張り詰めていた空気が一気に弾ける。


観客席は総立ちになり、コメント欄も追えない速度で流れていた。


『きたあああああ!』『MINATO!!』『ORBIT勝利!』『開幕戦から神試合』『優勝候補だろこれ』


MINATOはようやく息を吐いた。


嬉しいというより先に疲労が来る。


長かった。


チーム結成。


メンバー集め。


スクリム。


環境研究。


リーグ開幕。


全部が終わったわけではない。それでも最初の一歩を勝利で終えられたことは大きかった。


向かい側では紅蓮も立ち上がっていた。


二人はステージ中央で短く握手を交わす。


「強かったな」


紅蓮が言う。


MINATOは少し笑った。


「そっちも」


それ以上は言わない。


言わなくても伝わる。


PHOENIXは強かった。


だからこそ勝てたことに価値がある。


大型モニターには試合結果が表示されていた。


ORBIT 30―10 PHOENIX


リーグ開幕戦。


その最初の勝者はORBITだった。


会場の歓声を背に控室へ戻るMINATOの表情は静かだったが、その背中だけは少し軽く見えた。リーグはまだ始まったばかりだが、今日だけはこの一勝を噛み締めてもいい気がした。

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