第13話 大将戦③
スコアは1―1。
開幕戦最後の試合は完全に振り出しへ戻っていた。
会場の熱気は落ちるどころかさらに増している。先鋒戦、中堅戦、そしてここまでの大将戦。観客もコメント欄も、この試合が期待以上の内容になっていることを理解していた。
『1-1きた』『ここからだろ』『マジで分からん』『どっち勝つんだ』『レベル高すぎる』
第三ラウンドが始まる。
これまでと違ったのはMINATOだった。
開始直後から前へ出ない。
LEXと言えばラッシュ。
LEXと言えば攻撃。
そんなイメージを持っている観客も多い。しかしMINATOは動かなかった。
「おっと」
実況が少し驚いた声を出す。
「今回は様子を見ていますね」
「紅蓮選手も少し警戒しています」
Leonisも前へ出ない。
互いに動かないまま数秒が過ぎる。
だが停滞ではない。
探り合いだった。
ここまで二ラウンド戦ったことで、お互いの選択肢はある程度見えている。だからこそ簡単に動けない。
(対応が早い)
MINATOはモニターを見ながら考える。
紅蓮は試合中の修正能力が高い。
一ラウンド目で見せた攻めは、もう通用しない。
なら別の形を作る。
LEXの強みは速さだけじゃない。
相手にそう思わせることも強みだった。
MINATOが少しだけ前へ出る。
Leonisが反応する。
さらに一歩。
今度は牽制が飛んでくる。
その瞬間だった。
LEXが踏み込む。
「通した!」
実況の声と同時に会場が沸く。
牽制を空振らせる。
差し返し。
コンボ。
一気に体力を奪う。
コメント欄も流れる。
『うまっ』『そこ狙ってたのか』『LEXきた』『今のエグい』
しかし紅蓮も慌てない。
体力で負けている。
それでも焦らない。
Leonisが少しずつ前へ出る。
投げを見せる。
打撃を見せる。
下がったところを追う。
第二ラウンドと同じだ。
だがMINATOも理解している。
同じ展開にはしない。
攻める。
守る。
攻める。
守る。
テンポを変える。
リズムを変える。
紅蓮が慣れ始めた頃に、また別の選択肢を出す。
「MINATO選手、形を変えていますね」
「同じ攻め方を続けていません」
体力差はまだLEX有利。
だが紅蓮も少しずつ追い上げる。
Leonisの火力は高い。
一度触れば試合はひっくり返る。
だから会場も落ち着かない。
『まだある』『全然分からん』『紅蓮なら返せる』『LEX逃げ切れるか』
終盤。
残り時間三十秒。
ここで紅蓮が勝負へ出た。
距離を詰める。
投げ。
通らない。
再び前へ出る。
今度は打撃。
ガード。
もう一度。
そこでMINATOが動いた。
(そこだ)
LEXが前へ出る。
紅蓮も反応する。
だが半歩遅い。
差し返し。
カウンター。
会場が揺れた。
「MINATO選手!」
実況が叫ぶ。
コンボ。
追撃。
さらに起き攻め。
Leonisの体力が大きく削られる。
紅蓮も最後まで諦めない。
立ち上がる。
迎え撃つ。
しかし体力差は大きかった。
最後はLEXの下段が通る。
K.O。
会場が歓声に包まれた。
「第三ラウンドはMINATO選手!」
「これで2―1です!」
コメント欄も一気に流れる。
『きたあああ!』『MINATO強い』『LEXやばい』『王手だ!』『紅蓮頑張れ!』
MINATOは軽く息を吐く。
一本。
大きな一本だ。
だがまだ終わりではない。
紅蓮は静かにレバーへ手を置いている。
表情は変わらない。
その姿を見てMINATOも笑う。
簡単に終わる相手ではない。
だから面白い。
スコアは2―1。
開幕戦の勝敗を決める戦いは、第四ラウンドへ突入する。




