第12話 大将戦②
第二ラウンド開始直後から紅蓮は明らかに戦い方を変えていた。
第一ラウンドでLEXの攻めを受け切ったことで見えてきたものがあるのだろう。Leonisの長い牽制を押し付けながら距離を管理し、MINATOに得意なテンポで攻めさせない。派手な攻撃ではないが、一つ一つの選択が正確だった。
「紅蓮選手、対応していますね」
「第一ラウンドでかなり情報を取ったように見えます」
実際、その通りだった。
開幕直後はMINATOが主導権を握っていた。しかし今は違う。LEXが前へ出ようとするとLeonisが止める。無理に踏み込めば差し返される。攻める側だったはずのMINATOが、少しずつ考えさせられる側へ回っていた。
コメント欄も試合の変化に気付いている。
『対応してるな』『紅蓮うまい』『さっきと流れ違う』『流石PHOENIX』『レベル高い』
Leonisは攻め急がない。
投げを見せる。
打撃を見せる。
時には何もしない。
だから読み切れない。
体力差も少しずつ紅蓮側へ傾いていった。
(やっぱり強いな)
MINATOはガードを続けながら考える。
想定外ではない。
むしろ想定通りだ。
紅蓮が一ラウンドで終わる相手なら、PHOENIXの大将なんて任されていない。
だから焦らない。
焦れば負ける。
LEXの強みは攻撃力だけではない。試合中に形を変えられることだ。
少しずつ立ち回りを修正する。
正面から攻める回数を減らし、Leonisが前へ出る瞬間を狙う。
そして試合中盤。
その狙いが初めて当たった。
Leonisが一歩深く踏み込む。
その瞬間、LEXの差し返しが刺さった。
会場が沸く。
「MINATO選手!」
「返しました!」
コンボが決まる。
さっきまで広がっていた体力差が一気に縮まる。
コメント欄も勢いを増した。
『そこ通すのか』『LEXやば』『まだ分からん』『面白い』
試合は再び振り出しに戻る。
今度は紅蓮も下がらない。
Leonisが前へ出る。
LEXも迎え撃つ。
お互い相手の狙いが見えている。
だからこそ引かない。
攻撃が通れば歓声が上がり、返されればさらに大きな歓声が起こる。観客席も実況席もコメント欄も、誰一人として目を離していなかった。
「凄いですね」
「開幕戦とは思えないレベルです」
残り体力は僅か。
残り時間も少ない。
だが焦っている選手はいない。
ここまで来ると技ではなく選択の勝負だった。
最後に勝負を動かしたのは紅蓮だった。
MINATOは投げを見せる。
紅蓮は警戒する。
その読み合いのさらに外側。
Leonisの置き技がLEXの踏み込みへ噛み合った。
カウンター。
会場がどよめく。
「入った!」
実況が叫ぶ。
Leonisはそのままコンボへ繋ぎ、体力を奪い切る。
K.O。
一瞬遅れて歓声が爆発した。
「紅蓮選手!!」
「第二ラウンドを取り返しました!!」
コメント欄も一気に流れる。
『うおおお!』『紅蓮やばい』『今の読んでたのか』『これは強い』『一対一だ!』
紅蓮は静かに息を吐く。
MINATOも表情を変えない。
どちらも驚いていなかった。
ここまで来る相手だ。
簡単に終わるはずがない。
スコアは1―1。
開幕戦最後の試合は振り出しへ戻った。
「さあ面白くなりました!」
「ここから先は一本の価値がさらに重くなります!」
会場の熱気はまだ上がり続けている。
第三ラウンド。
勝敗を左右する重要な一本が始まろうとしていた。




