第11話 大将戦①
ORBIT 10―10 PHOENIX
体力はほぼ互角。
しかし流れは少しずつ変わり始めていた。
開幕直後こそMINATOが押していたが、紅蓮は既にLEXの攻めへ慣れ始めている。連携の癖。距離の取り方。攻めを継続するための選択肢。その全てを試合中に整理しながら戦っていた。
「紅蓮選手、対応していますね」
「ええ。最初のラッシュほど通らなくなっています」
Leonisの牽制がLEXへ触れる。
無理に攻めれば迎撃される。
だからMINATOも少し形を変えた。
さっきまでのように前へ出続けるのではなく、一度距離を置く。Leonisが前へ出れば迎撃し、下がれば追い掛ける。攻めるだけではなく、紅蓮の反応を利用して崩そうとしていた。
コメント欄も試合の変化に気付いている。
『対応してるな』『紅蓮うまい』『MINATOも変えてきた』『読み合い始まった』『レベル高い』
試合は中盤へ入る。
派手なコンボは少ない。
その代わり一回の牽制、一回の前歩き、一回のガードに観客が反応する。ここまで来ると技より選択が見どころだった。
LEXが距離を詰める。
Leonisが止める。
そこで終わらない。
MINATOは止められる前提で次を仕込んでいる。
紅蓮も読んでいる。
だからさらに一手先を考える。
「深いですね」
「二人とも次の行動を読んでいます」
体力差は僅か。
リードしているのは紅蓮だった。
差は本当に少しだ。
しかしその少しが大きい。
追う側は動かなければならない。
だからMINATOが前へ出る。
LEXのダッシュ。
投げ。
紅蓮は抜ける。
打撃。
ガードされる。
下段。
今度は通る。
歓声が上がる。
『うまい!』『入った!』『まだ分からん!』
コンボ。
起き攻め。
再び投げ。
Leonisの体力が削られていく。
試合開始から初めてMINATOが完全に流れを掴んだ。
紅蓮は守る。
だが崩れる。
守る。
また崩れる。
LEXというキャラクターの恐ろしさがそのまま現れていた。
「MINATO選手止まりません!」
「一気に行くつもりですね!」
観客席も立ち上がり始める。
会場の熱気がさらに上がる。
そして最後。
Leonisが暴れた。
LEXが読んでいた。
カウンター。
コンボ。
K.O。
第一ラウンド。
MINATO。
会場が爆発した。
『うおおおお!』『LEXやば!』『MINATOきた!』『開幕戦熱すぎる!』
MINATOは表情を変えない。
まだ一ラウンド。
必要なのはあと一つだ。
しかし席の向こう側にいる紅蓮も変わらない。
悔しそうな顔もない。
焦った様子もない。
ただモニターを見ている。
その姿を見てMINATOは少しだけ笑った。
(そうだよな)
簡単に終わる相手じゃない。
PHOENIXの大将。
長年トップシーンに居続けた選手。
一ラウンド取った程度で崩れるはずがなかった。
二ラウンド目が始まる。
今度は紅蓮から前へ出た。
Leonisの牽制。
前歩き。
LEXの迎撃。
お互いの攻撃が交差する。
さっきまでとは違う。
紅蓮が攻める。
MINATOが迎え撃つ。
会場の空気が再び変わり始めていた。
開幕戦最後の試合は、まだ終わらない。




