第9話 中堅戦
ORBIT 0―10 PHOENIX
先鋒戦を制したPHOENIXが一歩リードする形となったが、会場の熱気はむしろ高まっていた。大型モニターに次の対戦カードが映し出される。
REIGN対迅。
その瞬間、会場から大きな歓声が上がった。
コメント欄も一気に流れ始める。
『REIGNきた』『中堅で出てくるのか』『迅も強いぞ』『ここ重要すぎる』『実質大将戦レベルじゃね』
ステージへ向かったREIGNは普段と何も変わらない。歓声にもブーイングにも反応せず、ただ席へ座ってモニターを見つめる。対する迅も同じだった。長年トップシーンで戦ってきた選手らしく、余計な感情を表へ出さない。
キャラクター選択が始まる。迅はGald、REIGNはArthalを選択した。
「王道対決ですね」
「どちらも環境上位キャラクターです」
READY。
FIGHT。
試合開始。
開幕から両者とも無理には動かない。牽制と歩きを繰り返しながら距離を測り、相手の出方を探っていた。Galdは一度触れば大きく減らせるパワータイプ。Arthalはどの距離でも戦える万能型だ。だからこそ不用意な一歩が命取りになる。
「速いですね」
「ええ。ただ速いというより判断が早いです」
迅が踏み込む。しかしREIGNもすぐに迎撃へ動く。Galdは止まり、別の角度から再び圧力を掛ける。その繰り返しだった。
(上手いな)
REIGNは小さく笑う。
PHOENIXが長年上位に居続けている理由がよく分かる。簡単に崩れてくれないし、相手へ考える時間も与えてくれない。
試合時間が進むにつれ、少しずつ迅が前へ出る回数が増えていく。Galdの圧力がArthalを押し込み始めたのだ。しかし最初の大きな展開を作ったのはREIGNだった。
Galdが前へ出た瞬間、Arthalが差し返す。カウンターヒット。会場が沸く。
「REIGN選手!」
「今のは大きい!」
そのままコンボへ繋ぎ、一気に体力差を作る。しかし迅は焦らない。むしろそこからだった。Galdの圧力がさらに増す。守れば投げ、投げを警戒すれば打撃、打撃を意識すれば再び投げ。少しずつArthalが後ろへ下がっていく。
コメント欄も盛り上がる。
『迅うまい』『圧がやばい』『これ見てて苦しい』『レベル高すぎる』『どっちも強い』
「Galdの圧力が凄いですね」
「REIGN選手も対応していますが、迅選手が押しています」
体力はほぼ互角のまま終盤へ入る。しかし最後に動いた瞬間をREIGNは見逃さなかった。迅が踏み込んだ一瞬へ差し返しを合わせ、そのままコンボで削り切る。
第一ラウンドはREIGNが先取した。
会場から拍手と歓声が上がる。
『うまっ』『今の反応したのか』『REIGNやばい』『流石だな』
だが二ラウンド目は迅が取り返した。
今度はGaldの圧力が最後まで途切れない。端へ追い込み、逃がさず、少しずつ削り続ける。Arthalも反撃を狙うが隙がない。最後は強引に押し切り、試合を最終ラウンドへ持ち込んだ。
「フルセットです!」
「やはり簡単には終わりませんね」
一対一。
開幕戦の流れを左右する一戦は最後のラウンドへ入る。
ここまで戦ったことで、お互いの癖も選択肢も見えている。だからこそ読み合いはさらに深くなっていた。牽制が当たれば歓声が上がり、差し返しが決まればどよめきが起こる。一つ一つの行動に観客が反応していた。
『分からん』『どっちだこれ』『緊張する』『頼むREIGN』『迅強すぎる』
残り時間二十秒。
体力はほぼ互角。
先に動いたのは迅だった。Galdが前へ出て投げを狙う。しかしREIGNはそれを読んでいる。投げ抜けで距離を離すと、迅は間髪入れず再び前へ出た。
普通なら守る。
普通なら下がる。
だがREIGNは違った。
(そこか)
Arthalも同時に前へ出る。
会場がどよめいた。
最後の読み合い。
勝ったのはREIGNだった。
カウンター。
コンボ。
K.O。
「決着ーーーー!!」
実況の絶叫が会場へ響く。
「REIGN選手勝利!! ORBITが追い付きました!!」
会場は大歓声に包まれた。
ORBIT 10―10 PHOENIX
中堅戦を制したORBITがスコアを振り出しへ戻す。
ステージを降りたREIGNは特に喜ぶ様子もなく控室へ戻ると、MINATOへ向かって短く言った。
「繋いだぞ」
「ありがとうございます」
MINATOも短く答える。
スコアは10―10。
勝負は大将戦へ持ち込まれた。
大型モニターに最後のカードが映し出される。
紅蓮対MINATO。
その瞬間、今日一番の歓声が会場を包んだ。
開幕戦。
最後の二十ポイント。
そして最初の勝敗。
全てを決める戦いが、いよいよ始まる。




