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『ラウンド1から世界へ。』  作者: 龍崎
第3章 CHRONOS STRIKE PRO LEAGUE

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第8話 先鋒戦

先鋒戦。


ACE対朝陽。


CSPL開幕戦最初の試合が始まろうとしていた。


ステージへ向かった二人を観客席が拍手で迎える。新規参入チームORBITと伝統の強豪PHOENIX。その最初のポイントを争う戦いだ。ACEは理論派プレイヤーとして長く評価されてきた選手であり、朝陽は近年急速に頭角を現した成長株として注目を集めていた。


コメント欄も試合開始前から盛り上がっている。


『ACE対朝陽楽しみ』『開幕戦から良いカードだな』『PHOENIX強そう』『朝陽どこまでやれるかな』『普通にレベル高そう』


キャラクター選択が始まる。朝陽はReika、ACEはChronosを選択した。


「両選手ともメインキャラクターですね」


「まずは一番得意な形でぶつかります」


READY。


FIGHT。


試合開始と同時に朝陽が前へ出る。Reikaの強みは機動力だ。その長所を押し付けるように距離を詰めるが、ACEは焦らない。Chronosの長い通常技を置きながら間合いを管理し、朝陽が踏み込む瞬間だけを狙っていた。


「ACE選手、かなり慎重ですね」


「まずは相手を見るつもりでしょう」


朝陽は止まらない。ただ突っ込むわけではなく、歩き、止まり、下がり、また前へ出る。細かく距離を揺らしながら少しずつChronosの懐へ入り込もうとしていた。


(速い。反応じゃないな)


ACEはそう判断する。朝陽は一度止められた行動を繰り返さない。飛び込みを落とされれば歩きへ変え、歩きが止められればダッシュを混ぜる。その場で考え、その場で修正していた。


最初に試合を動かしたのはACEだった。朝陽が前へ出た瞬間、Chronosの牽制が刺さる。そのままコンボへ繋ぎ、最初の主導権を握ると会場も大きく沸いた。


「ACE選手!」


「良い差し返しです!」


朝陽もすぐに立て直す。しかしACEは追わない。体力リードを持ったまま距離を管理し、Reikaが飛び込んでくる瞬間だけを狙い続ける。焦れた朝陽が踏み込んだところへ再びChronosのカウンターが決まり、そのまま第一ラウンドはACEが先取した。


『うまいな』『ACEらしい』『落ち着いてる』『でも朝陽も悪くない』


控室で見ていたREIGNも小さく頷く。


「ACEのペースだな」


「まだ分かりませんよ」


MINATOはモニターから目を離さない。


試合が変わったのは二ラウンド目だった。開幕から朝陽の動きが明らかに違う。今度は無理に距離を詰めない。Chronosの牽制が届く場所で止まり、様子を見ながらACEが技を振るタイミングだけを狙って前へ出る。


「修正してきましたね」


「早いです」


朝陽は一ラウンド目で得た情報をそのまま使っていた。Chronosの強みも弱みも理解した上で、少しずつACEの間合いへ踏み込んでいく。


(なるほど。面白いじゃないか)


ACEは小さく口元を緩める。


Reikaのダッシュが通る。投げを見せ、守れば下段を通し、打撃を警戒すれば投げる。少しずつChronosが画面端へ追い込まれていき、会場の空気も変わっていった。


「朝陽選手良い攻めです!」


「一ラウンド目とは別人ですね」


最後はReikaの連続攻撃が決まり、朝陽が二ラウンド目を取り返す。一対一になると会場はさらに盛り上がり、コメント欄も一気に流れ始めた。


『朝陽強い』『普通にやばい』『フルセットだ!』『開幕戦から熱い』


最終ラウンド。


開幕戦最初のポイント。その全てがここで決まる。


しかし両者とも不用意には動かない。ここまで戦ったことで互いの癖も選択肢もある程度見えていた。だからこそ読み合いが深くなる。


Chronosが牽制を置く。


Reikaが止まる。


その牽制を見てから距離を詰める。


ACEも迎撃する。


どちらも決定打がないまま時間だけが過ぎていく。


「緊張感がありますね」


「どちらも一発が重いですから」


体力はほぼ互角。


残り時間三十秒。


ここで朝陽が勝負に出た。


Reikaの踏み込み。


ACEは読んでいた。


Chronosの迎撃。


だが読まれていたのは自分だった。


朝陽はその迎撃を誘っていたのだ。


技を空振らせる。


差し返し。


カウンター。


会場が爆発する。


「入ったぁぁぁぁ!!」


実況の絶叫が響く中、Chronosの体力が一気に削られる。


ACEも最後まで諦めない。起き上がり、前へ出て、最後の読み合いへ持ち込もうとする。しかし朝陽は下がらない。リードを守るのではなく、自分から前へ出る。


(勝ちに来るか)


ACEは思わず笑った。


その選択は嫌いじゃない。


残り時間はわずか。


最後の攻防。


Reikaの牽制が刺さる。


K.O。


一瞬の静寂の後、会場は歓声に包まれた。


「朝陽選手!! PHOENIX先制です!!」


ステージ上で朝陽はようやく息を吐く。派手なガッツポーズはない。ただ勝ったという事実だけを噛み締めていた。


ACEも立ち上がる。悔しさはある。しかし最後の読み合いで上回られたことも理解していた。


二人はステージ中央で握手を交わす。


『朝陽強すぎる』『PHOENIX先制』『ACE惜しかった』『最後の読み合いやばかった』『開幕戦から熱いな』


控室へ戻ったACEが短く頭を下げると、REIGNは即座に首を振った。


「気にするな。良い試合だった」


「普通に強かったですね」


MINATOもそう言いながらモニターを見る。


スコアは0―10。PHOENIXが先制した。


だがORBITもまだ終わっていない。


大型モニターには次のカードが映し出される。


中堅戦。


REIGN対迅。


開幕戦の流れを左右する戦いが、まもなく始まる。

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