第4話 それぞれの調整評価
Ver3.2アップデート公開から数時間。競技シーンは完全に新環境一色になっていた。プロ選手、配信者、解説者、誰もが調整内容について語り合っている。当然、CSPL各チームでも話題はその話ばかりだった。
まず反応が大きかったのはCRIMSONだった。チームルームではKNIGHTたちがパッチノートを確認している。
「LEXはまあ予想通りだな」
KNIGHTが言う。
FALCONも頷いた。
「弱くはなってる」
「でも終わってない」
RAYも同意する。
「むしろArthalの方が気になる」
そこは全員一致だった。Arthalは長く競技シーンを支配してきた王キャラだ。しかしKNIGHTは肩をすくめる。
「この程度ならまだトップだろ」
「だよな」
「結局残る」
ただ神楽シンの項目を見た瞬間だけ空気が変わった。
「盛りすぎじゃね?」
FALCONが呟く。
「盛ってる」
RAYも即答した。
KNIGHTは少し笑う。
「MINATO喜んでそうだな」
その一言で部屋に笑いが起きた。
一方LIBERTYでも同じ話題になっていた。CROWNはパッチノートを閉じながら天井を見上げる。
「神楽シン強そうだな」
蒼真が頷く。
「増えそう」
紫苑は冷静だった。
「かなり増えると思います」
「CSPL始まったら確実に見るでしょうね」
「面倒だな」
CROWNは率直だった。
神楽シン自体への不満というより、対策を作り直さなければならない面倒さだった。
AEGISでは白狼が腕を組んでいた。
「神楽シン強いな」
神威が笑う。
「素直に認めるんだな」
「強いものは強い」
冬馬もパッチノートを見ながら言う。
「LEXはもう少し触ってほしかった」
「あれはまだ残る」
白狼も頷く。
守備型の彼にとってLEXは元々厄介な相手だった。だから少しだけ不満はある。しかし大きな文句ではない。競技シーンではよくあるレベルの調整だった。
PHOENIXでは紅蓮が配信をしていた。
「神楽シンやばくね?」
コメント欄が流れる。
『やばい』
『強い』
『MINATO強化』
『環境変わる』
紅蓮も笑う。
「いや普通に強いな」
「たださ」
少し考える。
「景虎はそのままなんだな」
コメント欄が反応する。
『確かに』
『何も触られてない』
『地味に怖い』
『安定して強い』
紅蓮は頷いた。
「神楽シンだけじゃないからな」
「MINATOは景虎もある」
VORTEXでは月読が調整内容をノートへまとめていた。
龍牙が覗き込む。
「どうだ」
「面白くなった」
月読は即答した。
「ただ」
「なんだ」
「また神楽シン対策増える」
龍牙が吹き出した。
「それは確かに面倒だな」
戦術派チームらしい反応だった。
VALORでも話題になっている。
LONGは静かにパッチノートを読んでいた。
「神楽シン来たな」
春樹が言う。
「CSPL増えるか?」
「増える」
LONGは即答した。
「間違いなく増える」
「嫌か?」
「嫌だな」
珍しく本音だった。
神楽シンとの読み合いは得意ではない。
だから素直に面倒だと思っている。
そしてORBIT。
MINATOたちは既に神楽シンを動かしていた。画面では新コンボの検証が続いている。
ACEがダメージ表を確認する。
「伸びてますね」
「伸びてますね」
MINATOも笑う。
ZEROは横から画面を見ながら短く言う。
「強い」
REIGNは少し離れた場所で腕を組んでいた。
「良かったな」
「ですね」
「でもな」
MINATOが振り返る。
「なんですか」
「明日から全員神楽シン対策だぞ」
数秒沈黙する。
そして。
「それは嫌ですね」
施設に笑い声が広がった。
新環境。
新しい研究。
新しい対策。
どのチームも多少の不満と期待を抱えている。しかし共通していたことが一つだけあった。
神楽シン。
その名前が確実に競技シーンの中心へ近付いている。
CSPL開幕まで残り六日。
各チームの研究競争が静かに始まろうとしていた。




