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『ラウンド1から世界へ。』  作者: 龍崎
第3章 CHRONOS STRIKE PRO LEAGUE

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プロローグ 新しい部屋、新しい日常

LEGACY優勝から一か月。


CSPL開幕まで残り二週間。


ORBITのチームハウス近くにあるマンションの一室で、天野湊は段ボールの山を前に頭を抱えていた。


「思ったより多いな……。」


部屋の中央には未開封の荷物が積み上がっている。モニター、配信用機材、衣類、ゲームソフト、書籍、そしてプロになってから増え続けたスポンサー関連の荷物。元々住んでいたアパートより広くなったとはいえ、一人で片付けるにはなかなか骨が折れそうだった。


LEGACY優勝後、生活は大きく変わった。


ORBITとの契約更新。


スポンサー契約の増加。


取材依頼。


イベント出演。


CSPL開幕準備。


そして今回の引っ越し。


以前のアパートでも生活はできたが、配信環境や移動時間を考慮し、チームハウス近くへ移ることになったのだ。


「まあ、少しずつやるか。」


そう呟きながら段ボールを開けていく。しかし三十分後には早くも集中力が切れていた。


気分転換にPCを起動する。


せっかくだから少し配信でもしよう。


そう思った。


タイトルはシンプルだった。


【雑談】引っ越しました


配信開始から数分で視聴者は数千人を超える。


コメント欄もすぐに流れ始めた。


『きたあああ』


『新居!?』


『世界王者だ』


『引っ越しおめでとう』


『部屋見せて』


湊は苦笑する。


「見せられる状態じゃないです。」


カメラを少し動かす。


映るのは大量の段ボール。


コメント欄が盛り上がる。


『汚部屋じゃん』


『片付けろ』


『プロゲーマーあるある』


『想像以上だった』


「今まさに片付けてたんですよ。」


『やってない顔してる』


『信用できない』


『絶対サボってた』


「いや、本当にやってました。」


コメント欄とのやり取りをしながら雑談は続いていく。CSPLの話、最近の練習、ORBITメンバーの話題。そんな中で、湊は前から少し考えていたことを口にした。


「そういえば一個相談があるんですけど。」


コメント欄の流れが少し変わる。


『何?』


『どうした』


『重大発表?』


『結婚?』


「なんでですか。」


笑いが起きる。


湊は続けた。


「Vlogとか撮ろうかなって思ってるんですよね。」


数秒遅れてコメント欄が爆発した。


『やれ』


『見たい』


『絶対見る』


『海外遠征編頼む』


『ORBITの日常』


『チームハウス見たい』


『需要しかない』


予想以上の反応だった。


「そんなにですか?」


『むしろ今までなかったのがおかしい』


『世界王者の日常見たい』


『海外大会の裏側見せて』


『練習風景も』


『空港から撮って』


湊は少し考える。


確かに最近は大会だけでなく移動も増えた。海外遠征もある。チーム活動もある。配信では見せられない部分も意外と多い。


「でも編集できないんですよね。」


『REIGNにやらせろ』


『ACEにやらせろ』


『ZEROにやらせろ』


『全部他人任せで草』


コメント欄を見て思わず笑う。


「いや、そこは自分でやります。」


『不安』


『不安しかない』


『編集覚えろ』


『世界王者頑張れ』


雑談はさらに続いた。どんな動画が見たいか。海外遠征か、チーム活動か、それとも普段の生活か。コメント欄からは次々と案が飛んでくる。


配信終了が近づいた頃には、湊の中でも少し気持ちが固まっていた。


「じゃあやってみます。」


コメント欄が盛り上がる。


『きたあああ』


『決定』


『楽しみ』


『待ってる』


「まずはCSPL開幕までに一本。」


『おおお』


『ガチじゃん』


『楽しみすぎる』


湊は少し笑った。


LEGACYで優勝し、世界王者になった。


だが人生は終わらない。


CSPLが始まる。


世界大会も待っている。


そして新しい部屋、新しい生活、新しい挑戦も始まろうとしていた。


段ボールが積み上がる部屋の中で、天野湊は配信を終了する。


画面が暗くなる。


静かになった部屋を見渡しながら、小さく息を吐いた。

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