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『ラウンド1から世界へ。』  作者: 龍崎
第1章  〜初めての大舞台〜

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第3話 広がる名前

「よし、あと少し。」


天野湊はランキング画面を閉じた。現在一位。だが、それで何かを達成した気にはなれなかった。ランキングの頂点に立った実感はある。それでも意識は既にREVOLT JAPANへ向いている。ランクマッチと大会は別物だ。それは誰よりも自分が理解していた。


REVOLT JAPANまで残り一か月。


最上位帯のマッチングも以前とは様変わりしていた。プロ選手、有名配信者、海外勢、大会上位常連。今では誰と当たっても簡単な試合など存在しない。


「もう一戦。」


景虎を選択する。


マッチング開始。


数秒後、対戦相手が決まった。


【Mio】


「あれ。」


見覚えがある名前だった。


CHRONOS STRIKE界隈では有名な女性配信者。登録者数は数十万人。明るい配信スタイルと高い実力を兼ね備えた人気プレイヤーで、大会にも時々出場している。


本人かどうかは分からない。


だがこのランク帯なら本人の可能性は高かった。


相手キャラクターは玲華【舞姫】。


景虎対玲華。


差し合いが重要になる組み合わせだった。


試合開始。


開幕から数秒で湊は違和感を覚える。


玲華が前へ出る。


また前へ出る。


無理に攻めてくる。


「焦ってるな。」


玲華本来の強みは機動力と差し合いだ。だが目の前の玲華は勝負を急いでいるように見えた。


飛び込み。


対空。


ヒット。


起き攻め。


再びヒット。


体力差が開く。


玲華はさらに攻める。


景虎は差し返す。


コンボ。


画面端。


追撃。


そのまま第一ラウンド終了。


ほぼ完勝だった。


第二ラウンドになると相手も慎重になる。だが湊は既に多くの情報を手に入れていた。逃げるタイミング。暴れるポイント。守り方。試合中に見えた癖を整理しながら景虎を動かしていく。


中段。


下段。


投げ。


ガード。


再び投げ。


玲華も反撃するが届かない。試合が進むほど読み合いの主導権は景虎へ傾いていく。


そして最後。


差し返し。


カウンター。


コンボ。


KO。


WINNER MINATO


試合終了。


湊は小さく息を吐いた。


「強かったけど。」


少し首を傾げる。


もっと強いと思っていた。


いや、正確には実力を出し切れていなかったように見えた。


そんな印象だった。


その頃。


Mioは配信部屋で頭を抱えていた。


「いや無理無理無理!」


コメント欄が一気に流れる。


『MINATOじゃん』『ランキング一位』『景虎うますぎ』『格が違う』『処理されてた』『何もできてない』


「だって強すぎるでしょ!」


Mioは思わず机を叩いた。


玲華は長年使い続けているメインキャラだ。苦手なわけではない。むしろ自信がある。


それでも何もできなかった。


攻めても読まれる。


守っても崩される。


通ると思った行動が通らない。


試合が進むほど逃げ道がなくなっていく。


そんな感覚だった。


「ランク一位ってこんななの?」


コメント欄も盛り上がる。


『RJ優勝候補だろ』『大会未経験なの怖い』『景虎でこれだぞ』『化け物』『今一番話題の選手』


Mioは苦笑しながら椅子へもたれた。


悔しい。


だが納得もしている。


今の試合は完敗だった。


「RJで暴れそうだなぁ。」


その一言にコメント欄もさらに盛り上がる。


『ダークホース』『絶対注目選手』『どこまで行くんだろ』『楽しみになってきた』


一方その頃、当の本人は何も知らない。


「次いくか。」


湊は再びマッチングボタンを押す。有名配信者に勝ったことも、配信で話題になっていることも、SNSで名前が広がり始めていることも気にしていなかった。


彼にとって大事なのはランキングでも知名度でもない。


もっと強くなること。


そしてもっとゲームを楽しむこと。


そのために今日もまた次の対戦へ向かっていた。

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