第30話 世界一
グランドファイナルリセット最終試合。
LEGACY Day3。
ラスベガスのメインアリーナは異様な熱気に包まれていた。セットカウントは二対二。勝った方が優勝、負けた方が準優勝という分かりやすい状況の中、世界中の視線がLEXとArthalへ注がれている。
実況席の神谷レンも興奮を隠せなかった。
「LEGACY最後の試合です! 世界王者KNIGHTか、それとも挑戦者MINATOか!」
白石アキラも真剣な表情でモニターを見つめる。
「技術も経験も精神力も限界です。今残っているのは積み重ねてきたもの全てでしょう。」
試合は序盤から激しかった。Arthalが距離を支配すればLEXが強引に踏み込み、LEXが攻めを継続すればArthalが的確な防御から切り返す。どちらも一度流れを掴めば体力を大きく奪えるため、一つの判断が勝敗を左右する極限の読み合いが続いていた。
会場が大きく沸いたのは中盤だった。KNIGHTが差し返しから完璧なコンボを決め、そのまま画面端へ追い込む。世界王者らしい精度だったが、MINATOも耐え切った。防御を固め、相手の癖を見抜き、わずかな隙を突いて流れを奪い返す。LEXの高速ラッシュが炸裂すると観客席から歓声が巻き起こり、コメント欄も『うおおおおお!』『まだ終わらない!』『MINATO!』と凄まじい勢いで流れていく。
最終ラウンド。
残り体力はほぼ互角。
会場は静まり返っていた。
神谷も白石も言葉を失う。
観客たちも息を呑む。
誰もが理解していた。
次の攻防で終わる。
Arthalが前へ出る。
LEXも下がらない。
互いに牽制を置きながら距離を探り、フェイントを混ぜながら反応を誘う。数秒にも満たない攻防だったが、その中には何百試合分もの経験と読み合いが詰め込まれていた。
そして。
KNIGHTが踏み込む。
Arthalの剣が伸びる。
だがその瞬間、MINATOのLEXが一歩だけ前へ出た。
カウンター。
会場が揺れた。
「入ったぁぁぁぁぁぁぁ!!」
神谷の絶叫が響く。
LEX。
カウンターヒット。
MINATOは迷わない。
コンボ。
追撃。
さらに追撃。
世界中が見守る中、一度もミスすることなく最高難度のルートを完走する。
体力ゲージが消し飛ぶ。
Arthalも最後まで生き残ろうとする。
だが届かない。
LEXの蹴りが決まる。
KO。
次の瞬間、大型モニターへ勝者の名前が表示された。
WINNER
MINATO
一瞬だけ静寂が訪れる。
そして。
会場が爆発した。
「決まったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
神谷が立ち上がる。
「MINATO優勝!!」
「LEGACY王者!!」
「世界最高峰の舞台を制しましたぁぁぁぁぁ!!」
観客総立ち。
拍手。
歓声。
どよめき。
コメント欄も止まらない。
『世界一!』
『やったああああ!』
『MINATO!!』
『主人公すぎる!』
『伝説だろ!』
選手席で湊はしばらく動けなかった。
勝った。
本当に勝った。
日本最大級の大会で負けた日から必死に前へ進み続けた。景虎を磨き、神楽シンを磨き、誰にも知られない場所でLEXを研究し続けた。その全てが今この瞬間に繋がっている。
対戦台の向こうではKNIGHTが立ち上がっていた。
世界王者は悔しそうに笑う。
そして手を差し出した。
「おめでとう。」
湊も立ち上がる。
「ありがとうございました。」
固い握手が交わされる。
会場から再び拍手が起きた。
白石が静かに言う。
「新しい時代ですね。」
神谷も頷く。
「ええ。」
「世界一になったのは。」
大型モニターへ映し出される。
LEGACY CHAMPION
MINATO
「天野湊です。」
歓声はいつまでも鳴り止まなかった。




