第29話 世界王者の修正
グランドファイナルリセット。
セットカウントは2-1。
MINATOがリードしている。
だが第三試合を取り返したことで、会場の空気は明らかに変わっていた。
観客たちも感じている。
KNIGHTがLEXへ慣れ始めていることを。
実況席でも同じ認識だった。
神谷レンが大型モニターを見つめながら口を開く。
「第三試合は完全に流れが変わりましたね。」
白石アキラも頷く。
「LEXの強さは変わっていません。ただ、KNIGHT選手が対応の糸口を見つけました。問題はここからです。MINATO選手がさらに上を見せられるか、それともKNIGHT選手が完全に攻略するのか。」
第四試合のロード画面が表示される。
LEX。
Arthal。
会場から大きな歓声が上がった。
両者が再び向かい合う。
世界王者。
挑戦者。
どちらも表情は変わらない。
だが対戦台の周囲には張り詰めた空気が漂っていた。
試合開始。
開幕からArthalが前へ出る。
第三試合と同じだった。
待たない。
守らない。
LEXに攻めさせる前に主導権を握る。
その意図が誰の目にも明らかだった。
「KNIGHT選手から動く!」
神谷が叫ぶ。
「今までとは違います!」
Arthalの牽制が刺さる。
差し返しが決まる。
確認からコンボ。
起き攻め。
さらに攻め継続。
会場がどよめいた。
今度はLEXが防御を強いられている。
だがMINATOも黙っていない。
相手の攻めを耐え、隙を見つけ、触った瞬間に流れを奪い返す。
LEXが画面端まで運ぶ。
高難度コンボ。
観客席から歓声が上がる。
コメント欄も凄まじい勢いで流れていた。
『うますぎる』
『ミスしない』
『レベル高い』
『世界一決定戦だ』
試合は最後まで互角だった。
Arthalが流れを掴めばLEXが奪い返す。
LEXが攻め続ければArthalが防ぎ切る。
どちらも譲らない。
どちらも簡単には崩れない。
白石が思わず笑う。
「これは凄い。」
「もはやキャラクター相性ではありません。」
「選手の実力がそのままぶつかっています。」
終盤。
残り体力はほぼ同じ。
あと一回。
あと一度の読み合いで勝敗が決まる。
会場全体が静まり返る。
LEXが前へ出る。
Arthalも前へ出る。
互いに距離を測る。
牽制。
様子見。
フェイント。
その一瞬だった。
Arthalの剣が届く。
カウンター。
歓声。
コンボ。
KO。
第四試合。
KNIGHT。
会場が爆発した。
神谷が立ち上がる。
「追いついたぁぁぁぁぁ!!」
「世界王者KNIGHT!!」
「セットカウント2-2!!」
観客席から割れんばかりの拍手が送られる。
コメント欄も止まらない。
『フルセット!』
『決まらない!』
『最高の試合』
『どっちも世界一だろ』
MINATOは静かにモニターを見つめていた。
焦りはない。
LEXは通用している。
それは確信できた。
だがKNIGHTも対応している。
だからこそ勝負は最後までもつれ込んだ。
対戦台の向こうではKNIGHTが小さく息を吐く。
こちらも余裕はない。
互いに限界まで集中している。
神谷が深呼吸する。
「皆さん。」
「ついに来ました。」
白石も静かに頷く。
「LEGACY2026。」
「最後の一試合です。」
大型モニターには第五試合のロード画面。
LEX。
Arthal。
勝った方がLEGACY王者。
負けた方は準優勝。
世界中の視線が集まる中、運命の最終試合が始まろうとしていた。




