第28話 怪物投入
グランドファイナルリセット。
LEGACY Day3。
ラスベガスのメインアリーナは異様な熱気に包まれていた。
先ほどまで行われていたグランドファイナルでは、MINATOが神楽シンを投入し、無敗だったKNIGHTを破ってリセットを発生させた。会場の興奮はまだ収まっていない。観客席ではMINATOコールが続き、コメント欄も試合の感想で埋め尽くされていた。
「まさか本当にリセットするとは思いませんでした。」
実況の神谷レンが苦笑する。
「KNIGHT選手相手ですよ? しかもグランドファイナルです。」
白石アキラも頷いた。
「神楽シンの投入は完全に成功でした。ただ問題はここからです。KNIGHT選手は一度見たものへの対応力が異常に高い。リセット後も同じ展開になるとは限りません。」
観客席から大きな歓声が上がる。
両選手が再びステージへ姿を現したのだ。
KNIGHT。
MINATO。
世界王者と挑戦者。
本当の決着をつけるため、再び席へ着く。
キャラクター選択画面が大型モニターへ映し出される。
KNIGHTは迷わずArthalを選択した。
王者の相棒。
ここまで共に戦ってきた絶対的なメインキャラクター。
会場から歓声が上がる。
そしてMINATOのカーソルが動いた。
景虎。
神楽シン。
観客たちがざわつく。
そのままカーソルはさらに移動する。
LEX。
決定音。
会場が爆発した。
「LEXだぁぁぁぁぁ!!」
神谷が思わず立ち上がる。
「ここでLEX投入!!」
「MINATO選手、第三のキャラクターを出してきました!!」
コメント欄も一気に流れる。
『マジか!?』
『LEX使えたのか!?』
『隠してた!?』
『やばいぞこれ』
『怪物きたぁぁぁ』
白石も驚いていた。
「これは誰も予想していませんでした。」
「景虎、神楽シンに続いてLEXです。」
「しかもこの舞台で出してくるということは、相当な自信があるはずです。」
ロード画面。
LEX。
Arthal。
世界中が見守る中、グランドファイナルリセット第一試合が始まった。
開始直後だった。
会場がどよめく。
LEXの動きが異常に速い。
前ステップ。
下段。
投げ。
連係。
ガードさせて有利。
再び攻め。
神谷が叫ぶ。
「速い!!」
「LEXの攻めが止まりません!!」
Arthalも反撃を狙う。
だがLEXは触った瞬間に流れを握るキャラクターだった。
一度触る。
攻める。
また触る。
攻め続ける。
KNIGHTですら防戦を強いられていた。
「これは凄いですね。」
白石も驚きを隠せない。
「LEXそのものも強力ですが、MINATO選手の理解度が高い。」
「新キャラとは思えません。」
会場が沸く。
コメント欄も爆発する。
『なんだこれ』
『強すぎる』
『仕上がってる』
『いつ練習したんだ』
第一試合。
MINATO。
観客席から大歓声が巻き起こった。
続く第二試合。
KNIGHTも対応を始める。
世界王者が簡単に崩れるはずがない。
距離を調整し、LEXの連係へ割り込むポイントを探し、少しずつ試合を組み立て直していく。
だがMINATOも止まらない。
景虎で培った差し合い。
神楽シンで磨いた読み合い。
その全てをLEXへ落とし込んでいた。
単純なラッシュではない。
相手の反応を見ながら攻め方を変えている。
「上手い!」
神谷が叫ぶ。
「LEXに振り回されているように見えて、実際はMINATO選手が試合をコントロールしています!」
終盤。
LEXのラッシュが通る。
画面端。
高火力コンボ。
KO。
第二試合もMINATO。
セットカウントは2-0。
会場が騒然となる。
『うおおおおお!!』
『世界王者相手に!?』
『LEXやばい!!』
『MINATO!!』
しかし。
KNIGHTは笑っていた。
焦りではない。
むしろ楽しそうだった。
白石がそれに気付く。
「来ますね。」
神谷も頷く。
「ええ。」
「KNIGHT選手、何か掴みました。」
第三試合。
試合開始と同時に空気が変わった。
Arthalの動きが変わる。
LEXの攻めを受けるのではなく、先に触りに行く。
距離管理。
差し返し。
確認精度。
全てが一段階上がっていた。
会場からどよめきが起こる。
「これですよ!」
神谷が叫ぶ。
「世界王者KNIGHT!!」
「対応してきたぁぁぁ!!」
今度はMINATOが守る側になる。
LEXが攻める。
Arthalが返す。
再び攻める。
再び返される。
世界最高峰同士の攻防だった。
そして最後。
Arthalの一撃が決まる。
KO。
会場が大歓声に包まれた。
セットカウントは2-1。
まだMINATOがリードしている。
だが流れは変わり始めていた。
白石が静かに言う。
「面白くなってきました。」
「LEXという怪物を投入したMINATO選手。」
「それに適応し始めたKNIGHT選手。」
「ここからが本当の勝負です。」
世界一を決める戦いは、まだ終わらない。




