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『ラウンド1から世界へ。』  作者: 龍崎
* 第2章 挑戦者、ラスベガスへ向かう

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第27話 侍の切り札

LEGACY Day3。


ラスベガスのメインアリーナは、この日最大の熱気に包まれていた。


グランドファイナル。


大型モニターには二人の名前が映し出されている。


KNIGHT。


MINATO。


世界王者にして五大大会王者。そしてウィナーズを無敗で勝ち上がった男。対するはルーザーズブラケットから世界中の強豪を倒して這い上がってきた挑戦者だった。


「皆さん、お待たせしました!」


実況の神谷レンが会場へ向けて声を張り上げる。


「LEGACYグランドファイナルです! 世界最高峰の舞台、その頂点を決める戦いが始まります!」


観客席から大歓声が巻き起こる。国旗が揺れ、無数のスマートフォンがステージへ向けられていた。白石アキラも大型モニターを見上げながら口を開く。


「MINATO選手にとっては三度目の挑戦ですね。REVOLT JAPAN、そして今大会のウィナーズファイナル。どちらもKNIGHT選手に敗れています。しかし今のMINATO選手はその頃とは別人です。ルーザーズを勝ち上がる中で確実に成長してきました。」


選手紹介が始まると会場の熱量はさらに高まった。KNIGHTが紹介されれば王者への歓声が響き、MINATOが紹介されれば挑戦者を後押しする声援が重なる。やがて両者が席へ着き、キャラクター選択画面が映し出された。


KNIGHTは迷わずArthalを選択する。会場から歓声が上がる。王者の象徴とも言えるキャラクターだ。


そしてMINATOのカーソルが動く。


景虎。


今大会を支えてきた相棒。


だがカーソルは止まらない。


そのまま神楽シンへ移動し、決定音が鳴った瞬間、会場が大きくどよめいた。


「神楽シンだぁぁぁぁぁ!!」


神谷が思わず立ち上がる。


「ここで神楽シンを出してきました! 今大会の大半を景虎で戦ってきたMINATO選手ですが、グランドファイナルで切り札を投入です!」


コメント欄も一気に流れ始める。


『マジか!?』


『神楽シンきた!』


『景虎じゃない!』


『準備してたのか!』


白石も驚きを隠せなかった。


「これは大きいですね。神楽シン自体は以前から高い完成度を見せていましたが、ここまで温存していたのは間違いなく戦略でしょう。」


試合が始まる。


序盤はKNIGHTが主導権を握った。神楽シン特有の間合いを素早く把握し、Arthalの万能性能を活かして差し合いを制していく。神楽シンの居合を誘い、空振りへ差し返しを合わせる動きは流石の一言だった。一本目を落としたMINATOだったが、表情は変わらない。むしろ試合が進むほど神楽シンの動きは鋭くなっていった。


二本目では距離管理を修正し、居合を見せるだけで相手の選択肢を制限する。踏み込むか、待つか、飛ぶか。その全てへ圧力を掛け続け、神楽シン本来の読み合いへ持ち込んだ。一本を取り返すと会場が沸き、実況席の声にも熱が入る。


「追いついたぁぁぁ!」


「これが神楽シンです!」


「相手へ選択を迫り続ける!」


しかしKNIGHTも止まらない。三本目では再び対応を進め、神楽シンの癖を読み切ったかのような立ち回りを見せた。MINATOが居合を狙う位置を外し、逆に攻めの起点を作る。世界王者の修正力だった。


セットカウントは2対1。


王者が優勝へ王手を掛ける。


だがMINATOは諦めない。


ここまで勝ち上がってきた試合も同じだった。相手が修正するなら、さらにその先を探す。読み合いの一歩先を取り続けることでここまで来た。


四本目。


神楽シンが躍動する。


居合だけではない。投げ。下段。中段。相手の意識を散らし続ける。試合中に組み立てを変え、KNIGHTの対応を再び崩していく。その姿に白石も感心したように頷く。


「本当に凄い選手ですね。試合中の成長速度が異常です。」


「同じ相手と戦うほど強くなるタイプです。」


最終的に神楽シンの一閃が決まり、セットカウントは2対2。会場は総立ちとなり、誰もがフルセットの結末を見届けようとしていた。


最終試合。


最終ラウンド。


体力はほぼ互角だった。


神楽シンとArthalが画面中央で向かい合う。


誰も動かない。


数万人の観客が見守る中、両者は相手の出方を探り続けていた。前へ出るか、下がるか、技を置くか、待つか。その全てが勝敗に直結する。


「ここは完全に読み合いです。」


白石の声にも緊張が滲む。


「技術は両者とも世界最高峰。今は判断力と精神力の勝負ですね。」


やがてKNIGHTが動いた。


Arthalが前へ踏み込む。


牽制ではない。


明確な攻めだった。


だがMINATOも反応する。


神楽シンが前へ出る。


抜刀。


一閃。


居合がカウンターで突き刺さった瞬間、会場が爆発した。


「入ったぁぁぁぁぁぁ!!」


神谷の絶叫が響く。


神楽シンはそこから最大火力のコンボへ移行する。画面端まで運び、追撃を重ね、最後まで一切の迷いなく完走した。体力ゲージが消し飛び、最後の一撃が決まる。


KO。


大型モニターへ勝者が表示される。


WINNER


MINATO


一瞬の静寂。


次の瞬間、アリーナ全体が揺れた。


「勝ったぁぁぁぁぁ!!」


神谷が立ち上がる。


「MINATO勝利!!」


「そしてリセットだぁぁぁぁぁ!!」


歓声と拍手が会場を埋め尽くす。観客席ではMINATOコールが巻き起こり、コメント欄も爆発していた。


『うおおおおおお!!』


『リセット!!』


『神試合!!』


『まだ終わらない!!』


白石も興奮を隠せない。


「見事です。」


「神楽シンという選択が完全に機能しました。景虎対策を崩し、自分の土俵へ持ち込みましたね。」


だが湊は立ち上がらない。


まだ終わっていないからだ。


KNIGHTもまた静かだった。


世界王者の表情に焦りはない。


むしろ少しだけ笑っている。


面白い。


そう言いたげだった。


大型モニターが更新される。


GRAND FINAL RESET


世界一を決める最後のBO5。


本当の決着は、これからだった。

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