第26話 挑戦者の入場
KNIGHTがステージへ姿を現し、王者に相応しい歓声を浴びながら選手席へ座ると、会場の熱気はさらに高まっていた。しかし観客たちはまだ知っている。LEGACYグランドファイナルの主役はまだ一人残っていることを。
照明が再び落ちる。
巨大な会場が暗闇に包まれ、無数の観客たちの視線が大型スクリーンへ集まった。重低音が鳴り響き、映像が始まる。
最初に映し出されたのはREVOLT JAPANだった。
大会初出場。
ランクマッチ一位。
無名の挑戦者。
そんな言葉と共に景虎を操る一人の青年の姿が流れる。LONGとの激闘。会場を驚かせたアップセット。ベスト4進出。そしてLEGACY。世界中の強豪が集まる舞台で、ガブリエル・コスタ、欧州の強豪、北米トッププレイヤー、そしてパク・ジフンとの死闘まで、今大会の名場面が次々と映し出されていく。
会場がざわめく。
その映像を見ているのは観客だけではなかった。
実況席の神谷レンも自然と声に力が入る。
「皆さん覚えていますか。」
神谷は大型モニターを見上げながら言った。
「この選手が初めてREVOLT JAPANへ現れた時、多くの人はランクマッチの強豪選手だと認識していました。しかし今どうでしょう。」
大型スクリーンには世界中の強豪たちを倒してきた試合映像が流れ続ける。
「LEGACY初出場。」
「世界大会経験なし。」
「それでも世界最高峰の舞台でグランドファイナルまで勝ち上がってきた。」
神谷の言葉に観客席から大きな拍手が起こった。
白石アキラも静かに頷く。
「もうダークホースという表現は適切ではないでしょうね。」
「ここまで来れば世界トッププレイヤーです。」
「実力でこの舞台へ辿り着いた選手です。」
コメント欄も凄まじい勢いで流れていた。
『ここまで来るとは思わなかった』
『本当に強い』
『世界で通用してる』
『MINATO!!』
『主人公すぎる』
映像はさらに続く。
敗北した場面も流れる。
苦しんだ試合も流れる。
そして立ち上がった瞬間も流れる。
勝利だけではない。
挑戦の軌跡そのものが映し出されていた。
やがて映像が終盤へ差しかかる。
パク・ジフンとのルーザーズファイナル。
景虎の拳。
決着の瞬間。
歓声。
そして最後。
画面が暗転した。
会場が静まり返る。
誰もが次を待っていた。
数秒後。
巨大スクリーンいっぱいに文字が映し出される。
【MINATO】
その瞬間、会場が爆発した。
何千人もの観客が立ち上がり、歓声と拍手が一斉に降り注ぐ。日本から駆け付けたファンたちはもちろん、海外の観客たちも惜しみない歓声を送っていた。ここまでの試合内容が、それだけの支持を集めていた。
スポットライトが花道を照らす。
その先から一人の青年がゆっくりと姿を現した。
天野湊。
派手な演出はない。
大きく手を振るわけでもない。
ただ真っ直ぐ前を見て歩いている。
それなのに歓声は止まらなかった。
会場全体がその存在を歓迎していた。
神谷が興奮を抑えきれない様子で叫ぶ。
「来ました!!」
「LEGACY最大のサプライズ!!」
「そして今大会最大の主役の一人です!!」
歓声がさらに大きくなる。
「REVOLT JAPANベスト4!!」
「ORBIT所属!!」
「景虎使い!!」
「世界を驚かせた日本の挑戦者!!」
神谷は息を吸い込み、会場全体へ向けて叫んだ。
「MINATOOOOOOOO!!」
観客席が揺れた。
白石も思わず笑みを浮かべる。
「凄いですね。」
「数か月前までは一般プレイヤーでした。」
「それが今、世界最高峰の舞台で優勝を争っています。」
湊は歓声の中を歩き続ける。
その先には選手席。
そして反対側にはKNIGHTが座っている。
REVOLT JAPANで敗れた相手。
LEGACYウィナーズ決勝で敗れた相手。
二度立ちはだかった王者。
だが今は違う。
ここはグランドファイナル。
世界一を決める最後の舞台だった。
湊が席へ座る。
KNIGHTも静かに視線を向ける。
会場は自然と静かになっていく。
歓声が収まり、期待だけが残る。
神谷がゆっくりと口を開いた。
「日本最強格の王者。」
「世界を驚かせた挑戦者。」
「LEGACYグランドファイナル。」
「ついにここまで来ました。」
大型モニターには両選手の名前が映し出される。
【KNIGHT】
【MINATO】
会場が再び大歓声に包まれる。
世界一を決める戦いが、今まさに始まろうとしていた。




