第24話 怪物たちの生存競争
ガブリエル・コスタとの激闘を終えた湊は、ステージ裏へ戻ると静かに椅子へ腰を下ろした。体力的な疲労はもちろんあったが、それ以上に神経を削られる試合だった。世界上位のLEX使いとの対戦は得るものも大きかった。画面越しに見ていた時には分からなかった圧力、判断速度、そして一瞬の隙を逃さない勝負強さ。その全てが世界トップクラスだった。
だが休む時間は長くない。
LEGACY Day3。
敗者復活戦。
ここでは一試合が終わればすぐ次がやってくる。
大型モニターでは次々と試合結果が更新され、残っていた有力選手たちの名前が少しずつ消えていく。敗者復活戦とはそういう場所だった。優勝候補と呼ばれた選手ですら一度負ければ終わる。歓声を浴びていた選手が数十分後には敗退している。そんな光景が当たり前のように繰り返されていた。
会場では別の試合が行われている。
北米王者。
韓国トッププロ。
欧州の強豪。
大型モニターへ映し出される名前はどれも世界大会常連ばかりだった。
「やっぱり凄いな……。」
思わず呟く。
REVOLT JAPANでも強豪は多かった。
だがLEGACYは違う。
世界中から怪物たちが集まっている。
そして今、自分はその中にいる。
その事実が少しだけ不思議だった。
一方、実況席でも敗者復活戦の話題で持ち切りだった。
「いやぁ本当にレベルが高いですね。」
神谷レンが興奮気味に言う。
「先ほどのMINATO対ガブリエル戦もそうですが、どの試合も決勝レベルです!」
白石アキラも頷く。
「ここから先は優勝候補同士の潰し合いです。実力だけでなく体力や集中力も重要になります。」
「そしてMINATO選手ですが、KNIGHT選手との激戦直後にガブリエル選手を倒しました。」
「精神面の強さも見せましたね。」
コメント欄も盛り上がっていた。
『MINATOまだいるぞ』
『景虎強すぎる』
『ここからが本番』
『世界大会みたいなメンツ』
『誰が優勝してもおかしくない』
その頃、湊はスマホでトーナメント表を見ていた。
残っている名前を確認する。
見覚えのある選手ばかりだった。
世界ランキング上位。
各地域王者。
国際大会優勝経験者。
どこを見ても簡単な相手はいない。
だが不思議と恐怖はなかった。
むしろ楽しみだった。
もっと戦いたい。
もっと強い相手と戦いたい。
そのためにここまで来たのだから。
やがてスタッフが近付いてくる。
「MINATO選手、次の試合準備をお願いします。」
湊は立ち上がった。
ペットボトルの残りを飲み切り、深く息を吐く。
大型モニターでは新たな対戦カードが表示され始めていた。
観客席がざわめく。
実況席も慌ただしく動き始める。
敗者復活戦は止まらない。
世界最高峰の舞台は、敗者へ立ち止まる時間を与えてはくれなかった。
湊はコントローラーケースを手に取り、再びステージへ向かって歩き出す。
まだ終わらない。
世界一への道は、ここからさらに険しくなっていく。




