第16話 Day1終了
LEGACY Day1。
長かった一日がようやく終わろうとしていた。
朝から途切れることなく続いていた試合も少しずつ終了し、会場には疲労と安堵が入り混じった空気が流れている。勝ち残った選手たちは明日へ進み、敗れた選手たちは静かに会場を後にしていた。
大型モニターにはDay1終了の文字。
その下には勝ち残った選手たちの名前が並んでいる。
「お疲れ様でした!」
神谷レンの実況が締めに入る。
「LEGACY Day1終了です!数千人で始まった大会ですが、ここで大きく人数が絞られました!」
速水ユウも頷く。
「まだ大会は続きますが、ここまで残った選手は本当に実力者ばかりです。明日からはさらに厳しい戦いになりますね。」
チャット欄も盛り上がっていた。
『初日終わったー!』
『長かった』
『選手お疲れ』
『ここからが本番』
一方その頃。
湊は対戦エリアの近くでスマホを見ていた。
最後の試合が終わってからしばらく経つが、まだ少し現実感がない。
Day1。
全勝。
ルーザーズへ落ちることなく初日を突破した。
もちろん満足しているわけではない。
だが素直に安心はしていた。
「生き残ったな。」
後ろから声がする。
REIGNだった。
「なんとか。」
「なんとかじゃないだろ。」
REIGNは少し笑う。
「初めてのLEGACYでDay1全勝なら十分だ。」
「でも結構危なかった試合もありましたよ。」
「危なくない試合なんかない。」
即答だった。
湊も思わず苦笑する。
確かにその通りだ。
今日だけでも何度も実感した。
世界大会に弱い相手などいない。
名前を知らなくても強い。
実績がなくても強い。
だから一試合ごとに神経を削られる。
「疲れたか?」
「正直かなり。」
「だろうな。」
REIGNも会場を見渡す。
周囲には椅子へ座り込んでいる選手もいた。チームメイトと笑い合う選手もいれば、悔しそうにモニターを見つめる選手もいる。
その全員が今日一日を戦い抜いてきた。
「でも面白いです。」
湊がそう言うとREIGNは少しだけ笑った。
「顔見れば分かる。」
「そんなにですか。」
「かなり。」
自分では気付いていなかった。
だが確かに楽しかった。
苦しい。
緊張する。
疲れる。
それでも面白い。
世界中の強豪と同じ舞台で戦えることが純粋に嬉しかった。
その時だった。
少し離れた場所から聞き覚えのある声が聞こえる。
「おーい!」
振り返る。
龍牙だった。
「いたいた!」
その後ろには蒼真、レオン、飛鳥の姿も見える。
全員Day1を突破したらしい。
「お疲れ!」
飛鳥が笑顔で手を振る。
「お疲れ様です。」
「どうだった?」
龍牙が聞く。
「思った以上にキツかったです。」
「分かる!」
龍牙は大きく頷いた。
「俺も今日だけで寿命縮んだ気がする!」
「毎回言ってません?」
レオンが呆れたように笑う。
「でも今年レベル高くない?」
飛鳥の言葉に蒼真も静かに頷いた。
「高い。」
短い。
だが全員同じ意見だった。
Day1の段階で既に強い。
例年より強いかどうかは分からない。
だが少なくとも今大会のレベルが異常に高いことだけは誰もが感じていた。
「世界四強も順調だしな。」
龍牙が結果表を見る。
アレックス・ハート。
パク・ジフン。
リン・シャオ。
イワン・ペトロフ。
全員ウィナーズ側。
優勝候補たちは順当に勝ち上がっていた。
「まだ遠いな。」
龍牙が笑う。
「遠いですね。」
湊も頷いた。
今はまだ。
だが同じ大会にいる。
同じトーナメントにいる。
それだけでも数か月前の自分からすれば信じられないことだった。
会場の片付けも少しずつ始まる。
スタッフが機材を整理し、選手たちもホテルへ戻り始めていた。
Day1は終わった。
だが大会は終わっていない。
むしろここからが本番だ。
数千人から大きく人数が削られた今、残っているのは実力者ばかり。その中で勝ち続けなければ世界一には届かない。
会場を出る直前、湊はもう一度大型モニターへ目を向けた。
そこには明日のトーナメント表が表示されている。
Day2。
Top128。
Top64。
そしてさらにその先へ。
世界一への道はまだ続いていた。
湊は静かに息を吐くと、チームメイトたちと共に会場を後にした。
LEGACY Day2まで、あと十二時間だった。




