第10話 ラスベガスへ
今回からタイトルに題名をつけます!
これまでの題名は後々でお願いします!笑
LEGACY開幕まで残り三日。
ORBITの練習施設には朝から慌ただしい空気が流れていた。長かった調整期間も昨日で一区切りとなり、今日はラスベガスへ出発する日だ。湊も大きなキャリーケースを引きながら施設へ向かっていた。人生初の海外、人生初のラスベガス。楽しみなはずなのに、不思議と実感はまだ薄い。
会議室へ入ると、既にREIGNたちが集まっていた。
「おはよう。」
「おはようございます。」
「荷物持った?」
「持ってきました。」
「パスポートは?」
「あります。」
「本当に?」
「ありますって。」
REIGNは疑わしそうな顔をしている。
「見せてみ。」
「なんでですか。」
「いいから。」
「子供じゃないんですよ。」
そう言いながらも鞄を開く。
パスポート。
財布。
スマホ。
全部ある。
「ほら。」
「おお、本当にあった。」
「信用なさすぎません?」
「ちょっとな。」
その横でACEが頷いた。
「でも確認は大事ですよ。」
「ACEさんまで。」
「毎年いますから。」
「何がです?」
「空港で気付く人です。」
「嘘でしょ。」
ZEROもスマホから顔を上げる。
「去年いた。」
「本当にいるんだ。」
「泣いてた。」
「笑えないな。」
会議室に笑いが広がる。
ORBITへ加入したばかりの頃なら、こんな風に話せなかっただろう。世界王者のREIGN、トッププロのACE、韓国の精鋭ZERO。今でも凄い人たちだと思っているが、同時に頼れるチームメイトでもあった。
しばらくするとSAGEが姿を見せる。
「揃いましたね。」
自然と空気が引き締まる。
「今回の目標は変わりません。世界大会出場権獲得です。」
全員が頷く。
そのために練習してきた。
そのためにここまで準備してきた。
「結果を恐れる必要はありません。皆さんはやるべきことをやりました。後は大会で出し切るだけです。」
SAGEは一人一人を見渡した後、小さく微笑んだ。
「そして、楽しんできてください。」
その言葉に少しだけ肩の力が抜ける。
REIGNが立ち上がった。
「じゃあ行くか。」
「いよいよですね。」
「海外初だろ?」
「そうなんですよ。」
「なら楽しんどけ。大会以外も結構面白いぞ。」
「観光してる余裕ありますかね。」
「知らん。」
「適当だな。」
ACEが笑いを堪えていた。
こういう何気ない会話も最近は増えている。
以前なら緊張して聞くだけだった。
今は自然と会話へ入れる。
それが少し嬉しかった。
数時間後。
羽田空港。
湊は思わず周囲を見回していた。テレビで見たことはあるが、実際に来るとやはり違う。人の多さも、飛び交う言葉も、全部が新鮮だった。
「完全に観光客だな。」
「だって初めてなんですよ。」
「俺も最初はそんな感じだった。」
「REIGNさんも?」
「キョロキョロしてた。」
「ちょっと安心しました。」
搭乗まで少し時間があった。
ACEはノートPCを開いて試合映像を見ている。
ZEROは音楽を聴いている。
REIGNはコーヒーを飲みながらスマホを触っていた。
湊は空いた時間でNexを開く。
空港の写真を撮り、少しだけ考えてから投稿した。
【行ってきます。】
投稿から数秒で通知が鳴り始める。
『頑張れ!』『世界獲ってこい!』『応援してる!』『MINATOならいける!』『日本代表頼んだ!』
画面を見ながら思わず笑ってしまう。
少し前まで大会に出ることすら夢だった。
それが今ではプロチームに所属し、海外大会へ向かい、多くの人が応援してくれている。
不思議な感覚だった。
「人気者だな。」
「やめてくださいよ。」
「事実だろ。」
「まだ全然です。」
「そういうとこ変わらないな。」
搭乗案内が流れる。
いよいよだった。
周囲の空気も少しだけ変わる。
湊は立ち上がり、搭乗口へ向かって歩き出した。
緊張がないわけではない。
不安もある。
だが、それ以上に楽しみだった。
世界中の強豪が集まる舞台。
まだ見ぬプレイヤーたち。
そして、自分がどこまで通用するのか。
試してみたい。
その気持ちが何より強い。
飛行機へ乗り込む直前、湊は窓の外へ目を向けた。青空の向こうにはラスベガスがある。そして、その先には世界大会への切符が待っている。
ORBITの挑戦が、いよいよ始まろうとしていた。




