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『ラウンド1から世界へ。』  作者: 龍崎
* 第2章 挑戦者、ラスベガスへ向かう

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第9話 プロと配信者

ORBITへ加入してから一か月近くが経った。


最初は何もかも新鮮だったプロ生活も、少しずつ日常になり始めている。チーム練習、ミーティング、配信活動。そのどれも忙しかったが、不思議と苦ではなかった。


この日も練習を終えた湊は帰宅するとすぐに配信の準備を始めた。以前は配信ボタンを押すだけでも少し緊張していたが、今ではその感覚もほとんどない。


「こんばんは。」


配信を開始すると、いつものようにコメント欄が勢いよく流れ始める。


『きた!』『待ってた』『今日もランク?』

『ORBITどう?』『最近配信慣れたよな』


「ORBITどう?って親戚みたいな聞き方やめてくださいよ。」


思わず笑いながら返すと、コメント欄もすぐに盛り上がる。


『草』『最近どう?』『元気してる?』『ちゃんと食べてる?』


「なんなんですかその流れ。」


湊は苦笑しながら景虎を選択する。


「元気ですし、ちゃんと食べてます。むしろ最近は前より健康的かもしれないです。」


『プロっぽい』

『意識高い』

『本当に?』


「いや、本当に。」


そう言いながらも少し考える。


確かに生活は変わった。


以前は好きな時間にゲームをして、好きな時間に寝る生活だった。しかし今はチーム練習もあるし、配信の予定もある。自然と生活リズムも整っていた。


「まあでも、まだ慣れないこともありますけどね。」


『例えば?』


「普通にREIGNさんとか。」


コメント欄が一気に反応する。


『草』

『分かる』

『世界王者だもんな』

『毎日いるの?』


「いますよ。」


湊は即答した。


「普通に隣に座ってます。」


『慣れた?』


「いや、まだたまに思いますよ。」


『何を?』


「なんでこの人と同じチームなんだろうって。」


コメント欄が笑いで埋まる。


だが半分は本音だった。

REIGNだけではない。ACEもZEROもそうだ。


以前なら配信で見ていたような選手たちと、今は同じチームで練習している。


不思議な感覚だった。


ランクマッチを続けながら雑談していると、コメント欄に見慣れた名前が現れる。


『天羽ミコト:こんばんはー!』


「あ。」


『本人きた』

『ミコトだ』

『先生呼ばれてるぞ』


「こんばんは。」


湊が挨拶すると、すぐにコメントが返ってくる。


『今日も頑張ってください!』


「ありがとうございます。」


『先生モードで草』

『急に丁寧』

『よそ行きの顔』


コメント欄が騒ぎ始める。


「いや別にそんなことないです。」


そう言った直後だった。


『今日コラボですよね!?』


「あ。」


完全に忘れていた。

時計を見る。

開始まで三十分。


コメント欄が大爆笑する。


『忘れてたw』

『先生ェ』

『ミコト泣くぞ』

『最低で草』


「いや違うんですよ。」


慌てて弁解する。


「忘れてたというか、時間を確認してなかっただけで。」


『同じです』

『アウト』

『言い訳下手』


結局何を言っても無駄だった。


配信を終えた湊は急いで準備を済ませ、ミコトとのコラボ配信へ向かう。


配信が始まると同時に、元気いっぱいの声が響いた。


「こんばんはー!」


「こんばんは。」


「聞いてください!」


開幕からテンションが高い。


「今日は違います!」


「何が?」


「今日は本当に成長してます!」


「前回も聞いた。」


「今回は本当なんです!」


ミコトは自信満々だった。


その様子に湊も思わず笑う。


「じゃあ見ますか。」

「お願いします!」


配信では武神タケルのリプレイを確認していく。


「ここですね。」

「はい。」


「なんで飛んだの?」

「いや、通ると思ったんです。」


「本当に?」

「本当に。」


「自信満々だった?」

「めちゃくちゃありました。」

「結果は?」

「対空されました。」

「されてたね。」


コメント欄が爆笑する。


『好き』

『正直すぎる』

『才能ある』

『反省してない』


ミコト自身も笑っていた。


以前なら指導配信という雰囲気だったが、最近は少し違う。お互いに遠慮がなくなり、自然と会話も増えていた。


「でも前より良くなってるよ。」


湊がそう言うと、ミコトが固まる。


「え?」

「前より全然良い。」


「今褒めました?」

「褒めた。」


数秒の沈黙。


そして。


「みんな聞きました!?」


ミコトの声が一段階大きくなった。


「先生が褒めました!」


『おめでとう』

『記念日』

『赤飯だ』

『切り抜け』


コメント欄も大盛り上がりだ。


「いや、そんな大げさな。」


「大げさじゃないです!」


ミコトは本気だった。


「前まで全部ダメ出しだったんですよ!?」

「全部じゃないって。」

「体感です!」


その返しに湊も吹き出してしまう。


こうして笑いながら話していると、初めて会った頃のぎこちなさはもうほとんど残っていなかった。


配信終了後。


通話を切った湊は椅子へ背中を預ける。


疲れているはずなのに気分は軽い。


プロとしての活動は忙しい。LEGACYの準備もある。チーム練習も日に日に厳しくなっている。


それでも楽しい。


少し前まで一人でゲームをしていた自分が、今では多くの人と関わりながら前へ進んでいる。


もちろん目標は変わらない。


世界王者。


その頂はまだ遠い。

だが焦る必要はなかった。

今は一歩ずつ進めばいい。

そう思いながら、湊は明日の練習に備えてPCの電源を落とした。LEGACY開幕まで、残り二週間だった。

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