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『ラウンド1から世界へ。』  作者: 龍崎
* 第2章 挑戦者、ラスベガスへ向かう

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第7話 いつも通り

ORBIT加入発表から一週間。


天野湊の生活は以前とは大きく変わっていた。


朝はチームの練習施設へ向かい、昼から夕方まで対戦とミーティングを繰り返す。帰宅後は配信を行い、その後に自分の課題と向き合う。気付けば一日が終わっていることも珍しくなかった。


それでも不思議と苦ではなかった。


むしろ今までより充実している。


自分が目指していた世界へ少しずつ近付いている実感があった。


この日も練習を終えた湊は、自宅で配信の準備を進めていた。


タイトルはいつも通り。


【ランクマッチ】


視聴者数は配信開始から数分で一万人を超える。REVOLT JAPAN以降、その数字はすっかり当たり前になっていた。


「こんばんは。」


配信を始めるとコメント欄が一気に流れ始める。


『こんばんは!』


『待ってた』


『今日も景虎か?』


『LEGACY楽しみ』


『ORBITの話聞きたい』


画面を見ながら苦笑する。


最近はどこへ行ってもLEGACYの話ばかりだった。


世界最大規模の五大大会。


世界中からトッププレイヤーが集まる舞台。


当然と言えば当然だろう。


「まあ、まずはランクやります。」


そう言いながら景虎を選択する。


LEXの存在は誰にも知られていない。


視聴者も。

配信者も。

他チームも。


もちろん知らない。


それでいい。


今はまだ隠す時期だった。

配信が始まって一時間ほど経った頃だった。

対戦待機中に通知音が鳴る。


NexのDM。


普段なら配信中に確認することはない。


だが送り主の名前を見て思わず目が止まった。


REIGN。


ORBITのエースだった。


「ん?」


思わず首を傾げる。


何かあったのだろうか。


休憩中に内容を確認すると、そこには短いメッセージが書かれていた。


『明日時間あるか?』


それだけだった。


非常にREIGNらしい。


湊は少し考えて返信する。


『あります』


すると数秒後には返事が来た。


『なら昼に来てくれ』


『話がある』


それだけだった。


湊は首を傾げる。


何の話だろう。


チーム練習の予定は入っていない。


ミーティングとも聞いていない。


少し気になったが、今は配信中だ。


考えても仕方がない。


「じゃあ続きやりますか。」


コメント欄へ戻ると視聴者たちは相変わらず自由だった。


『彼女から?』


『プロのお誘い?』


『LEGACY優勝報告きた?』


『未来人おる』


思わず笑う。


当然ながら誰も正解には辿り着いていない。


そのまま配信を続けながら、湊はふと最近のことを思い返していた。


数か月前まで自分はただのフリーターだった。


昼はアルバイト。


夜はゲーム。


それだけの日々。

しかし今は違う。

ORBITに加入した。


多くの人が応援してくれる。


世界王者と同じチームで練習している。


少し前なら想像もできなかった。

だからこそ思う。

ここで満足するわけにはいかない。

目指している場所はもっと先だ。


REVOLT JAPANベスト4。


それは結果としては十分立派だろう。

だが世界を目指すなら通過点に過ぎない。


LEGACY。


世界大会。


そして世界王者。

まだまだ遠い。

だからこそ面白い。


配信終了後、湊は椅子へ深くもたれかかった。


時刻は深夜一時を過ぎている。

疲れているはずなのに、頭は妙に冴えていた。

スマホを見る。


REIGNからのメッセージはそのまま残っている。


『話がある』


何だろう。


新しい練習メニューか。


大会の話か。

それとも別の何かか。

答えは分からない。


だが一つだけ確かなことがある。


ORBITに加入してから、自分の周りは少しずつ動き始めている。


その変化を感じながら、湊は静かにスマホの画面を閉じた。


明日もまた忙しくなりそうだった。

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