第20話 怪物、現る
REVOLT JAPAN表彰式。
長かった大会の全日程が終了し、会場には再び観客たちが集まっていた。大型モニターにはREVOLT JAPANのロゴが映し出され、照明がゆっくりと落ちていく。熱戦の余韻が残る会場には、どこか心地よい疲労感と達成感が漂っていた。
スポットライトがステージ中央を照らす。
朝倉翔太がマイクを握った。
「皆さん! REVOLT JAPAN表彰式です!」
会場から大きな歓声と拍手が巻き起こる。
まず紹介されたのはベスト4入賞者たちだった。
「大会初出場ながら大躍進! ランクマッチ一位! MINATO!」
再び会場が沸く。
湊は少し照れたような表情を浮かべながら前へ進んだ。優勝には届かなかった。世界大会本戦出場権にも手は届かなかった。それでも今大会で最も名前を広めた選手の一人だったことは間違いない。
観客席からは温かい拍手が送られる。
続いて若手トッププロSHADOWが呼ばれ、さらに準優勝者BLADEが紹介されると会場の熱気は一段階上がった。ベテランとして数々の修羅場をくぐり抜けてきた実力者への称賛が惜しみなく送られる。
そして照明がさらに落ちた。
大型モニターに大会のハイライト映像が流れ始める。
逆転劇。
名勝負。
歓声。
涙。
数え切れないドラマが映し出され、最後に優勝の瞬間が映る。
画面いっぱいに一つの名前が浮かび上がった。
【KNIGHT】
会場大歓声。
紙吹雪が舞い、拍手が鳴り響く。
「REVOLT JAPAN王者!! KNIGHT!!」
KNIGHTがトロフィーを高く掲げる。
観客は総立ちだった。
五大大会王者。
世界大会本戦出場権獲得。
誰もが認める最高の締めくくりだった。
優勝インタビューが終わり、記念撮影も終了する。
誰もが表彰式の終わりを感じていた。
しかし。
「皆様。」
突然、運営責任者がステージへ姿を現した。
会場がざわめく。
予定にはない登壇だった。
「本日はREVOLT JAPANへご来場いただきありがとうございました。」
拍手が起こる。
だが責任者は笑みを浮かべたまま続けた。
「ですが。」
その一言で空気が変わった。
「CHRONOS STRIKEの戦いは、まだ終わりません。」
大型モニターが暗転する。
実況席でも朝倉と村瀬が顔を見合わせた。
「何か来ますね。」
観客席もざわつき始める。
そして運営責任者が高らかに宣言した。
「次なる舞台。」
「五大大会最高峰。」
「ラスベガス。」
その瞬間。
会場が爆発した。
『LEGACY!』
『きたああああ!』
『ラスベガス!!』
『世界最大規模!!』
大型モニターに映像が流れ始める。
ネオンに包まれた夜の街。
巨大ホテル。
埋め尽くされた観客席。
世界中から集まるプレイヤーたち。
そして画面中央に浮かび上がる巨大な文字。
【LEGACY】
歓声が天井を揺らした。
「五大大会最高峰!! LEGACYです!!」
朝倉も思わず叫ぶ。
「年間最大の大会ですね。」
村瀬も頷く。
「世界中のトッププレイヤーが集まる、本当の意味での世界大会です。」
しかし映像は終わらない。
運営責任者が再び口を開く。
「そしてLEGACY開幕に合わせて、大型アップデートを実施します。」
会場が揺れた。
『アプデ!?』
『新キャラ!?』
『来るぞ!!』
『マジか!!』
実況席も前のめりになる。
そして大型モニターが真っ暗になった。
重低音。
破壊されたステージ。
一瞬だけ映る人影。
次の瞬間、その影が視界から消える。
速い。
あまりにも速い。
鋭い蹴りが連続で叩き込まれ、相手の体力が一気に消し飛ぶ。さらに空中コンボ、追撃、ラッシュ、ラッシュ、ラッシュ。
誰も見たことのない攻撃速度だった。
会場が静まり返る。
そして映像の最後。
巨大な文字が浮かび上がる。
【NEW CHARACTER】
歓声。
悲鳴。
拍手。
そして。
ついにその姿が映し出された。
黒い道着。
鍛え抜かれた肉体。
獲物を狙うような鋭い眼光。
圧倒的な存在感。
名前が表示される。
【LEX】
会場が爆発した。
『うおおおおおお!!』
『きたあああああ!!』
『かっけぇぇぇ!!』
『絶対使う!!』
『主人公キャラだろ!!』
「LEXです!! 新キャラクターLEX!!」
朝倉が絶叫する。
映像はさらに続く。
韓国テコンドーをベースとした高速格闘術。
息つく暇もないラッシュ。
超高難度コンボ。
一度触れば終わらない攻撃継続。
見れば見るほど尖った性能だった。
村瀬も真剣な表情になる。
「これはかなり特殊ですね。」
「扱うのは難しそうですが、使いこなせればとんでもない性能になると思います。」
映像の最後。
紹介画面が表示される。
LEX【怪物】
韓国
テコンドー
超高速ラッシュ
超高難度コンボ
攻撃継続能力特化
会場は再び大歓声に包まれた。
『LEGACY荒れるぞ』
『研究始まる』
『プロどうするんだ』
『絶対強い』
『怪物きた』
そして運営責任者が最後の宣言を行う。
「LEXは来週のアップデートで実装。」
会場が沸く。
「そして。」
さらに間を置く。
誰もが次の言葉を待った。
「LEGACYにて使用可能となります。」
その瞬間、今日一番の歓声が会場を包み込んだ。
REVOLT JAPANは終わった。
だが世界は止まらない。
五大大会最高峰LEGACY。
世界中の怪物たち。
そして新たに現れた怪物――LEX。
その発表を見つめながら湊は静かにモニターを見上げていた。
敗北の悔しさはまだ消えていない。
だが胸の奥では、新しい闘志が静かに燃え始めていた。
世界への挑戦は、ここから始まる。




