第15話 応援の言葉
試合終了後、天野湊は次の試合まで少し時間が空いたため会場内を歩いていた。TOP32まで勝ち上がったとはいえ先はまだ長く、残っている選手の顔ぶれもプロ、有名配信者、海外勢ばかりになっている。少し歩くだけで配信や大会で見たことのある人物が視界に入り、改めて自分が大きな舞台に立っていることを実感していた。
「流石に疲れたな。」
飲み物を買おうとした時だった。
「あ。」
聞き覚えのある声に振り返ると、そこには先ほど対戦したばかりのMioが立っていた。向こうも湊に気付いたらしく、軽く手を上げる。
「お疲れ様。」
「お疲れ様です。」
「強かったー。本当に景虎やばいって。」
「結構言われます。」
「いや、あれは言われるよ。」
二人で笑う。試合中は緊張感のある真剣勝負だったが、こうして話してみると自然に会話が続いた。
「でも思ったより若かった。」
「それよく言われます。」
「二十代後半くらい想像してた。」
「それもよく言われます。」
「やっぱり?」
「やっぱりです。」
再び笑いが起きる。湊も少し安心していた。有名配信者というともっと近寄り難い存在を想像していたが、実際のMioは気さくで話しやすかった。
「ランクマッチの時から気になってたんだよね。」
「何がですか?」
「対応力。」
「あー。」
「試合中にどんどん変わるじゃん。」
「意識はしてないんですけど。」
「絶対してる。」
「そんなにですか?」
「そんなに。」
即答されてしまい、湊は苦笑するしかなかった。昔から相手の癖や行動を見ながら修正することは多かったが、自分ではそれが当たり前になっていた。
その時、Mioのスマホが震える。配信関係の通知らしく、画面を確認したMioは思わず笑った。
「コメント欄すごいことになってる。」
「何て書いてあるんですか?」
「MINATO強いしか書いてない。」
「はは。」
昔はただ家でゲームをしていただけだった。それが今では観客がいて、応援してくれる人がいて、配信で名前を呼ばれている。その変化はまだ少し不思議だった。
「でも今日で完全にマークされたと思うよ。」
Mioの言葉に湊は頷く。LONGに勝った時点で無名の挑戦者ではいられなくなった。これから先は誰もが対策し、本気で倒しに来る。
「ですよね。」
「うん。でもちょっと楽しみ。」
「楽しみですか?」
「どこまで行くのか見てみたい。」
予想外の言葉だった。だが嬉しかった。応援してくれる人がいる。期待してくれる人がいる。その事実だけで力になる。
「頑張ります。」
「よし、それでいい。」
Mioは満足そうに頷くと飲み物を持って立ち上がった。
「次も勝って。」
「頑張ります。」
「あと今度ランクで当たったら手加減して。」
「無理です。」
「だと思った。」
二人で笑いながら別れる。Mioは配信ブースの方へ、湊は次の対戦台の方へ歩き出した。REVOLT JAPANはまだ終わらない。むしろここからが本番であり、優勝候補と呼ばれる選手たちとの戦いが待っている。それでも湊の足取りは軽かった。気付けば応援してくれる人が増えている。その事実が、次の試合へ向かう背中を少しだけ押していた。




