第14話 応援したくなる選手
REVOLT JAPAN二日目。
TOP32進出を懸けた一戦。
配信台ではない。
それでも対戦エリアには多くの観客が集まっていた。
理由は単純だった。
MINATO。
そして人気女性配信者のMio。
話題の挑戦者と有名配信者の対決に、多くの人が注目していた。
その頃、Mioは自身の配信を回していた。
「やばいんだけど。」
開幕から苦笑する。
コメント欄はすでに祭り状態だった。
『きたああああ』
『MINATO戦』
『神カード』
『Mio頑張れ!』
『相手強すぎる』
『景虎だろ?』
『見たかった組み合わせ』
Mioは深呼吸しながらコメント欄を見る。
「いや、本当に強いからね?」
『分かる』
『ランクで当たってたもんな』
『あの試合覚えてる』
『景虎怖かった』
『リベンジ期待』
「ランクの時も普通にボコボコだったから。」
そう言って笑うが、表情は少し緊張していた。
MINATO。
大会初出場。
ランクマッチ一位。
そして今大会最大の話題選手。
ここまで無敗。
LONGまで倒している。
今や誰もダークホースとは呼ばなくなっていた。
対戦席へ向かう。
そこで初めて本人を見た。
「若っ。」
心の中で思わず呟く。
もっと年上だと思っていた。
ランク一位。
景虎使い。
有名プレイヤー。
そんな肩書きから勝手に二十代後半くらいを想像していた。
だが実際のMINATOはかなり若い。
しかも驚くほど普通だった。
大学のキャンパスにいても違和感がなさそうな雰囲気。
どこにでもいそうな青年。
それなのに世界レベルの選手を倒している。
そのギャップが不思議だった。
両者が席に着く。
会場が静かになる。
Mioは玲華。
MINATOは景虎。
そして試合が始まった。
FIGHT――。
序盤はMioがペースを握った。
玲華の機動力を活かして攻め込む。
差し合いでも悪くない。
先制ヒット。
コンボ。
体力リード。
「よし!」
思わず声が出る。
コメント欄も盛り上がった。
『いける!』
『うまい!』
『玲華きた!』
『ワンチャンある!』
だが。
景虎が少しずつ前へ出てくる。
焦らない。
無理をしない。
一歩ずつ距離を詰めてくる。
そして。
差し返し。
カウンター。
コンボ。
体力ゲージが一気に消える。
『うわ』
『減った』
『痛すぎる』
『景虎怖い』
Mioも思わず苦笑する。
「マジで減るんだけど。」
流れが変わる。
そのまま景虎がラウンドを奪った。
二ラウンド目。
Mioは修正を試みる。
攻める。
揺さぶる。
崩しを混ぜる。
一度通った行動を軸に組み立てる。
だが。
通らない。
さっき通った行動が通らない。
二回目も通らない。
三回目には逆に狩られる。
「えっ。」
思わず声が漏れた。
コメント欄も同じ反応だった。
『対応してる』
『学習してる』
『また強くなってる』
『怖い』
『試合中に成長してない?』
MINATOは変化していた。
試合開始時より。
明らかに強くなっていた。
景虎の下段が刺さる。
コンボ。
起き攻め。
投げ。
打撃。
読み合い。
全てが噛み合う。
最後は正拳突き。
KO。
WINNER
MINATO
会場から拍手が起こる。
Mioはコントローラーを置いた。
負けた。
完敗だった。
悔しい。
もちろん悔しい。
だが不思議と納得もしていた。
「強かったー。」
自然と笑いが漏れる。
試合後、配信へ戻る。
コメント欄が一気に流れた。
『お疲れ!』
『いい試合だった!』
『相手強かったな』
『MINATOやばい』
『景虎うますぎ』
『対応力おかしい』
Mioは素直に頷く。
「うん。」
少し考えてから続けた。
「今大会で戦った中でもトップクラスに強かった。」
コメント欄がさらに流れる。
『やっぱり』
『本物だ』
『優勝候補だろ』
『主人公かよ』
Mioは苦笑する。
「主人公かは知らないけど。」
そこで言葉を止める。
少しだけ今日の試合を思い返した。
歓声の中でも落ち着いていた姿。
勝っても騒がない姿。
試合中にどんどん強くなっていく姿。
そして何より。
ゲームを楽しんでいるように見えた姿。
Mioは自然と笑った。
「でも。」
コメント欄が静かになる。
「応援したくなる選手だよね。」
その瞬間。
コメント欄が一気に流れた。
『分かる』
『それな』
『応援したくなる』
『RJ面白くなってきた』
『MINATO頑張れ』
『優勝してほしい』
Mioは頷く。
自分も同じ気持ちだった。
配信画面の向こうでは、また一人の挑戦者が次の試合へ向かっている。
大会初出場。
ランクマッチ一位。
そして今や優勝候補の一人。
天野湊――MINATOは、知らないうちにまた一人、新しいファンを増やしていた。




