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『ラウンド1から世界へ。』  作者: 龍崎
第1章  〜初めての大舞台〜

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第13話 憧れの正体

「よし、休憩。」


夕方。


コンビニのバックヤードへ入った佐藤は、制服のポケットからスマホを取り出した。


REVOLT JAPAN二日目。


仕事中も気になって仕方がなかった。


最近ずっと追いかけている選手がいる。


MINATO。


大会初出場。


ランクマッチ一位。


そして今大会最大の話題選手。


初日は無敗。


二日目も順調に勝ち進んでいる。


気付けば自分でも応援するようになっていた。


「今頃配信台だったよな。」


休憩時間は限られている。


急いで配信アプリを開く。


ちょうど試合前だった。


実況席。


解説席。


観客席。


大型モニター。


会場は凄まじい熱気に包まれている。


「間に合った。」


安堵しながら画面を見る。


そして。


次の瞬間だった。


「……は?」


佐藤の動きが止まる。


画面を見つめる。


もう一度見る。


目を擦る。


さらに見る。


「え?」


そこに映っていた選手の顔を。


佐藤は知っていた。


見間違えるはずがない。


黒髪。


落ち着いた雰囲気。


少し眠そうな目。


毎週のように同じシフトへ入っている。


見慣れた顔だった。


「天野……?」


思わず声が漏れる。


大型モニターには選手紹介。


【MINATO】


実況が叫ぶ。


「ランクマッチ一位!大会初出場の挑戦者MINATOです!」


観客席が沸く。


コメント欄も爆速で流れていく。


だが佐藤の頭には何も入ってこなかった。


「いやいやいやいや。」


混乱する。


だって。


あいつだ。


いつもレジを打っている。


休憩中にカップ焼きそば食べている。


閉店作業で一緒になる。


あの天野湊だ。


「マジかよ……。」


思い返してみる。


ゲームが好きだとは聞いていた。


格ゲーをやっているとも聞いた。


だがそれだけだった。


まさか。


まさかあのMINATOだったなんて。


実況が続く。


「今大会最大のダークホース!」


「中国トッププロLONGへ挑みます!」


画面の中の湊はいつも通りだった。


職場で見る姿と変わらない。


変に気負っている様子もない。


観客の歓声を浴びているのに、コンビニでレジに立っている時と同じような顔をしている。


それが逆に信じられなかった。


「お前だったのかよ……。」


思わず笑ってしまう。


試合が始まる。


だが佐藤は内容よりも湊ばかり見てしまう。


いつも一緒に働いている後輩。


その後輩が。


何万人もの視聴者が見守る配信台に座っている。


実況に名前を呼ばれている。


観客から歓声を受けている。


そして。


世界大会常連の中国トッププロと戦っている。


現実感がなかった。


「意味分かんねぇ……。」


苦笑するしかない。


その後。


景虎が躍動する。


差し合いで勝つ。


読み合いで勝つ。


観客が沸く。


実況が叫ぶ。


コメント欄が爆発する。


そして最後。


景虎の拳がFrostを貫いた。


KO。


MINATO勝利。


会場が揺れるほどの歓声が上がる。


実況も絶叫していた。


『MINATOやばい!』

『世界レベル撃破!』

『優勝候補!』

『本物だ!』

『主人公かよ!』


コメントが止まらない。


だが佐藤は別の意味で固まっていた。


しばらく画面を見つめた後、小さく息を吐く。


「いや……。」


そして笑った。


「すげぇじゃねぇか。」


素直にそう思った。


誇らしかった。


自分の知っている後輩が。


いつも一緒に働いている後輩が。


世界レベルの選手を倒している。


それだけで胸が熱くなる。


同時に納得もした。


最近MINATOの話を振った時。


ランキング一位の話をした時。


RJの話をした時。


天野は妙に反応が薄かった。


他人事みたいだった。


当たり前だ。


本人だったのだから。


休憩終了の通知音が鳴る。


だが佐藤はすぐには立ち上がれなかった。


画面の中では湊が対戦相手へ一礼し、静かに席を離れていく。


観客から大きな拍手が送られている。


その光景を見ながら、佐藤はニヤリと笑った。


「店来たら絶対聞いてやる。」


そして頭を掻く。


まさか自分が応援していた選手が。


同じコンビニで働く後輩だったなんて。


そんな展開。


漫画でもなかなか見ないだろうと思った。

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