表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷宮の底で復讐を誓う  作者: 村上 優司
帰還者としての時間
45/140

大都市アルカリス 招宴と邂逅

本日三回目の投稿です。

これで三章が終わりになります。

巨大猪(ビヒモスボア)の討伐から十日後、冒険者組合(ギルド)がある北区画でで宴が開催されていた。巨大猪(ビヒモスボア)の討伐した事によるお祝いの宴で冒険者や組合(ギルド)職員のために開かれた宴だった。


北区画にある酒場や飲食店では店先で宣伝して客を一人でも多く取り込もうとしたり、売り上げを少しでも上げるために露店を出店する店など北区画は大賑わいだった。


宴の費用は全て組合(ギルド)が支払うので馴染の店に行く者。普段行くことが出来ない高めの店に行く者。露店巡りをする者など各々で宴を楽しんでいた。


他の区画でも市長からの提案で小規模な祭りが開かれていた。巨大猪(ビヒモスボア)の被害が無かったのでその分の予算を使い祭りが開かれた。巨大猪(ビヒモスボア)に恐怖していた市民は皆この祭りを喜び家族や友人たちとこの祭りを楽しんでいた。



クレア達新人冒険者達も北区画の祭りを楽しんでいた。クレア、フェリス、ヴァンが参加しており、フレイヤとザックも一緒に参加していた。フレイヤは冒険者ではないので自分の食事代は払う予定だったがその容姿に惹かれた店の店主や周りの冒険者から食事を進められほとんどタダ同然で食事をしていた。


ダグラスとローザもトリスから明日の昼まで休むように言われ夫婦水入らずで出掛けた。彼らは他の区画で楽しむことにしたのでフレイヤ達とは別行動をしていた。




そして、今回のこの中心人物のトリスは中央区画にある貴賓館に招かれていた。中央区にある貴賓館はこの都市に住む貴族や要人達のパーティーを開く時に使われる。自国、他国問わず貴族や要人達は皆巨大猪(ビヒモスボア)を単独で討伐したトリスに興味があった。


毎年多くの冒険者達が束にならないと討伐できなかった巨大猪(ビヒモスボア)を単独で倒し冒険者を一目見ようと思い至り、貴族や要人達が主体でこの場所でパーティーを開くことになった。


招かれたトリスは略礼装を着て会場に向かった。服装の指定が無かったので略礼装を衣装屋で借ることにした。服の見立ては衣装屋の店員とフレイヤ、ローズに任せたのだが服が一着選ぶのに十着以上の服を着ることになった。着せ替え人形の様にトリスに様々な服を着せ、結局今の服を選ぶのに半日近くの時間を浪費した。


冒険者のトリスにとっては服とは防御力が高い物を基準にし、次に身軽さや通気性を重視していた。今回の服装も礼を欠く服装で無ければ良いと思っていたので服一着選ぶのにこんなに時間を浪費したのは生まれて初めてだった。


余談だがトリスはこれを起に礼服を何種類か買うことを決めた。


トリスが貴賓館までは開催者が用意した馬車で向かった。貴賓館に馬車が着くと直ぐに案内役の男性がトリスを元に訪れた。案内役の男性はトリスを開催者がいる部屋に案内した。開催者は冒険者組合(ギルド)(サブ)ギルドマスター、デフィー・トーシャ。彼にこんなに早く逢えるとはトリスにとって思いもよらなかった。




貴賓館でのパーティーはつつがなく行われた。招待客であるトリスには何人もの貴族や要人達が話しかけてきた。今日は顔合わせの為かそれともトリスを値踏みするするのが目的なのか、トリスを口々に褒め称える。だがトリスを自分達に取り入れようとする露骨なアプローチは無かった。


この都市にいる貴族や要人達は物見遊山でこの都市にいる訳ではない。冒険者が『塔』から持ち帰った希少品を誰よりも早く情報を掴み購入しようと企んでいる。例えば魔鉱石は重度が高い物ほど希少でA級品やB級品はどの国でも欲しがる。そして可能であればS級品の魔鉱石を手に入れたかった。


S級品の魔鉱石は他の魔鉱石とは異なり消耗品ではない。S級品は属性が既に付与されており、膨大な魔力の塊でそれが一つの装置として機能する。現在発見されているS級品の魔鉱石は5つ発見されており、そのどれもが無尽蔵に機能している。


動力には周囲の魔力を取り込んでいるらしく、火の属性であれば熱を無限に放出する。水の属性であれば水を生成し続ける。土の属性であればどんな作物も育てる。今だ風の属性が付与されたS級品は発見されていないが他の属性と同じように機能を有している筈だ。


他にも魔物の角や牙、骨、皮と言った素材は武具や装飾品に加工することが出来る。中には金属よりも固い物や宝石より美しく物が存在する。


そう言った希少品をここにいる者達は皆欲していた。希少品は『塔』の上層に行けば行くほど様々な物が

ある。C階級(ランク)のトリスでは二百五十階までしか行くことが出来ないが、今後トリスがB階級(ランク)になれば『塔』の階層制限がなくなる。そうなった時にトリスと繋がりがあれば希少品も入手できるかもしれないと考え、それまではトリスの機嫌を損ねる様なことはしないようにしているのかもしれない。


そんな思惑が今日のパーティーで見て取れた。トリスは相手に会わせながら無難にパーティーを楽しんでいたがパーティーの中盤を過ぎると何やら急に騒がしくなってきた。どうやら途中から参加する予定だった人物達が付いたようだ。


トリスは貴賓館に付いた時に開催者のデフィーからパーティーに出席する人を聞いた。その人物達がようやく到着したのだ。トリスは一気に緊張し始めた。心臓は五月蠅いくらいに高鳴っているが、頭は冴え心は氷のように冷たく沈んでいくのが自分でも判った。


()()()()()()()()()()()()()()()()()


「はしめまして、トリス殿。私はこの都市の市長のダール、ダール・ラング・レモルです。」


始めに挨拶をしてきたのは市長のダールだった。ダールは右手を差し出し握手を求めてきた。彼の後ろにはリューグナーのモンテゴ、ギルドマスターのワノエルィテ、その秘書のジェテルーラがいた。トリスは彼らに笑顔を浮かべながらダールの手を取り挨拶をした。


「こちらこそはじめまして、冒険者のトリス・S・ノットメークです。お会いできて光栄です。」


トリスの挨拶に気をよくしたダールは後ろにいたモンテゴ達をトリスに紹介した。モンテゴ達はトリスに興味なさそうにしているがそれが嘘だとトリスには判っていた。


「俺の名前はモンテゴ・ルフェナン。リューグナーと言う冒険者パーティーに在籍している。」

「確かリューグナーのトップの方ですね。」

「そうだ。良く知っているな。」

「当然です。この都市で冒険者をするなら上位のパーティーは必ず調べます。この都市のトップパーティーの人とお会いできて光栄です。」


トリスの言葉に気をよくしたのかモンテゴの表情は若干和らいだ。


「では、わしの事も知っているのか。」

「勿論です。冒険者組合(ギルド)のギルドマスター、ワノエルィテ・ヴォルフィール。お付きの方はご子息のジェテルーラ・ヴォルフィール。この度は私が提示した条件を採用して頂きありがとうございました。」

「ほぉ、わしのことも息子のジェテルーラことも知っているのか。」

「ええ、とても優秀な方で実力でギルドマスターの秘書に選ばれたと聞いています。」

「そうじゃ、世間では親の七光りと言うやつもいるがそれは違う。冒険者組合(ギルド)は公平無私。優秀な者は率先して高い役職に就ける。身内だからと言って優れた者を淘汰するのが正しいわけがない。」


ワノエルィテはジェテルーラを如何に優秀かトリスに話すが、当の本人は終始表情一つ変えることはなかった。


「ワノエルィテさん、そろそろその辺で話しを切り上げないと。初対面のトリスさんが困っていますよ。」


ワノエルィテの話しを遮ったのはダールだった。ダールはトリスがワノエルィテの自慢話に呆れると思い率先して中間に入った。ワノエルィテもダールが間に入ったことで少々話過ぎたと自覚し話しを切り上げた。


トリスは最後にジェテルーラと挨拶をしてモンテゴ達から席を外した。トリスには最後にもう一人の人物と会う必要があったからだ。トリスはパーティー会場の大ホールを抜け近くにある手洗い場に向かった。後ろから誰かが付いてくる気配がしたが敢えて無視した。


手洗い場の鏡で服装の乱れを直したが後をつけてきた人物は中までは入って来なかった。トリスは自らの気配を消し、足音を立てずに手洗い場から出るとそこにはカドルがいた。トリスの後を付けてきたのはカドルであった。


カドルはトリスが突然出てきたので驚いたがトリスは『失礼。』と言ってカドル横をすり抜けた。その際にカドルと一瞬トリスと顔を合わせカドルの顔をしっかりと把握した。カドルとの顔合わせはそれだけで十分だった。




トリスはパーティーを早々に切り上げ一人家に戻ってきた。クレア達はまだ祭りを楽しんでいるので家には一人だけだった。だがそれは良かったのかも知れない。トリスの漂う気配が異常だった。椅子に座っているだけなのにそこにいるのは冥府から訪れた死神の様だった。


一般人のフレイヤやローザならその気配を感じたで腰を抜かしてしまうだろう。冒険者のクレア達ですら逃げ出してしまう程の異常の気配だった。


トリスは先ほどあったモンテゴ達ことを思い返していた。トリスいや、エドモスが迷宮を二十年近くも彷徨うことになった原因を作った者達のことを。



モンテゴ・ルフェナン

前の名前はルセーヌ・モルス。エドモスを殺そうとした張本人だ。同じパーティーメンバーで活動していたルセーヌはあの日エドモスを殺そうとした。ルセーヌと『塔』に出かけ、依頼の素材を採取した。その後にルセーヌが寄りたいところがあると言われ、着いて行ったところをルセーヌに襲われた。

運が良かったのか悪かったのかエドモスは『塔』の中を流れている川に落ちた。そのまま迷宮に流れ着きウォールドに助けられた。

自分に生き地獄を味合わせた相手をトリスは許すつもりは無い。

さらにフレイヤの話しを信じるのであれば友人のイーラまでも彼は殺したことになる。


カドル・ガッスパー

彼もエドモスと同じパーティーメンバーだった。エドモスがモンテゴに襲われた日は風邪で寝込んでいた。だが今考えるとそれは不自然だった。カドルは前日に賭博で大損して宿にずっと閉じこもっていた。季節は夏が終わっていたがまだ暑く風邪を引くとは思わなかった。

そもそもエドモス達が行った依頼は彼が受けた依頼の筈だ。内容の割には報酬がいい仕事だったのに金に困っていた筈のカドルが放棄するなんて不自然だった。カドルもエドモスが襲われたことについて加担している筈だ。


ダール・ラング・レモル

元はギルド職員でエドモスの担当職員だった男だ。エドモスがダールに相談した事がそもそもの間違いだったのかも知れない。ダールは当時から出生欲が強く自分の為なら平気で他人を貶める奴だった。だから相談した翌日にジェテルーラが自分と面会したのだ。

ワノエルィテ・ヴォルフィールの犯罪に関わる内容を知ったエドモスをダールはジェテルーラに売ったのだ。自分の欲望を叶える為に。


ジェテルーラ・ヴォルフィール

エドモスを殺そうと計画した張本人に間違いない。ダールから伝わった情報から父親の犯罪を知りエドモスを殺すことを計画した筈だ。ダールの手引きで直接あったがジェテルーラは物静かで不正を行わない清廉潔白の様な人物だった。

だがそれは違っていた。自分の保身の為なら手段を選ばない残酷な人。それがジェテルーラと言う男だ。

父親の犯罪を隠すためにモンテゴとカドルに話しを持ち掛けた筈だ。

彼は父親を庇ったのかそれとも自分の保身を考えたのかは判らない。だがエドモスを殺すように指示したのは間違いなく彼だ。


ワノエルィテ・ヴォルフィール

ギルドマスターのワノエルィテとはエドモスは直接の面識はない。魔術師至上主義などと言った妄想を信じる自己顕示欲の塊の男で、彼が犯した犯罪についての隠蔽のためにエドモスは殺さることになった。

そして彼が犯した犯罪は師匠のウォールドに関わることだった。師匠の無念を晴らすなどと言った殊勝な思いはトリスにはない。ウォールドもそのような事は望んでいない。だが犯罪をした者が平気で人の上に立ちのうのうと生きていることを許せるほどトリスお人好しではない。



彼らはトリスをエドモスとは判らなかった。二十年以上も前に殺した男のことなど彼らには遠い昔の出来事だったようだ。既に忘れた事で今更思い出すことも無いだろう。

それもいいと思った。自分達に敵意を向けている相手が誰だか判らないまま落ちて行くといい。トリスはそう思うことにした。


それよりもこれからの事を考える方がトリスは楽しくて仕方がなかった。



ついにトリスの復讐の相手が出てきました。意外と思った方。予想通りと思った方。

色々なご意見があると思いますが、この五人に対して今後トリスがどのように復讐するか楽しみにしてください。


なお、次の更新ですが少しお待ちください。この度運営側より指摘を頂いた時に過去の話しを見直しました。少し思うところがあるので修正しようと思います。修正は小まめに行うので更新日が頻繁に変わると予想しています。

更新が終わった際に活動報告に記載しますのでよろしくお願いします。


また、いつも通り、誤字脱字の指摘や感想などを頂けると幸いです。

評価やブックマークをして頂けるととても励みになります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ