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RUN! V/M  作者: でーじん
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1. 始動

人生とは、2気筒エンジンで440馬力を出すことだ。

――ヘンリー・ミラー

「……、……ピピッ、ピピピッ……」


「ん、うむー……」


先明は朝に弱い。


今、彼の隣に置いてあるアラームが、もう五分も鳴っていた。


アラームを止め、彼は長い伸びをした。


パンツ一丁、よれたタンクトップ、ヘアゴムを外したボサボサの髪が、彼が昨日はいかに疲れたかを物語っているように見える。


靴を履いて部屋を出る。


寝る前に泥だらけの作業着を洗濯機に入れた記憶があったので、洗濯機へ向かう。だが、乾燥機能をつけるのを忘れていた。


取り出して嗅ぐと――


「ウッ、クッサ……今日もブルーな一日だ」


嫌々と服を着て、顔を洗い、髪を結び終わると、ちょうど店長が朝食を持ってきた。


「はい、パニーニとミネストローネ。睡眠どうだった?」


「よかった。危うく引きこもるところだった。」


「それは何より。今日はガッツリ働かせてもらうからね、フフフ。先に戻るから、食べ終わった皿とかはドアの隣に置いといて。それじゃ。」


(さらっとブラック企業ぽい言葉言うじゃん)


と、先明は思わずツッコミたいところだったが、部屋のサービスにも満足し、サンドイッチを頬張っていたため、何も言えなかった。


歯を磨いた後、彼は天井の扉を開けた。


この時間帯に、借金をして買った修理用の材料が届くことになっている。


すると、青空から無人配達用V/Mがゆっくり降りてきた。


いくつかの箱と大きな材料を置き、


「ご利用ありがとうございました」


と言って、すぐに去っていった。


そして、届いたものを整理していると、ちょうど今日の対象となる3台が上から運ばれてきた。


「ウソでしょ!?ひどすぎる!」


弾痕だらけでデコボコのもの。


電装系が焼き切れて、まったく動かないもの。


そして、出力ユニットがボロボロなもの。


先明は一旦黙って深呼吸し、それと同時に手を顔に当て、下へ引っ張った。


「夢だと言ってくれ。裏社会に掛かり付け整備士とかいないのか!……しゃーない、やってやろうじゃないか。」


「えっと、まず金槌と溶接ガンね」


(ジーッ、カンカンカン、ウィーン……)


「で、コイツはごっそり交換だな。バッテリーと電磁スターター買っといてよかったー」


(カチッ、ズウィーン……)


「次は貴様だッ! お前は簡単だ、出力ユニット交換するだけ――と思ったら下回り錆びてるじゃないか! ふざけるな!」


作業を続けているうちに、彼はなんと半日で3台を修理し終わった。


さすが、大手メーカーのメカニックは格が違う。


外では鴉が鳴いている。


きっと、夕日は綺麗に違いない。


そう彼は思った。


しかし……彼は、とあることに気づいてしまった。


「あれ? 部品かなり買ったはずだが……」


「いや、待て。落ち着け。まだ流用はできる――」


振り向いた瞬間、残った材料は、金属板を削ったカスと端材のみ。


「しまった! 状態がひどすぎて予想以上に使ってしまった。しかも、これ以上借金できないじゃん……」


彼は、本質的なことに気づいてしまった。


そもそも、店長は彼を逃がすつもりなどなかった。


彼は、ただの駒だ。


このままだと改造すら進まず、本当に「用済み」になってしまう。


「アイツ……やっぱりそう来たか」


「そうか、そうか……フ、フフ、フハハハ……」


先明は笑った。


「それで降参すると思うのか? 自由に対する執念をなめているな!いいだろう、受けて立つぞ。絶対生き延びてみせるッ!」


夜、店長はまた食事を持ってきた。


だが、ドアを開けると、先明は笑みを浮かべながら彼を待っていた。


「おや、こんな最悪な状況でもポジティブにいられるんだ。」


だが、先明は彼の話を無視した。


「スクラップ場に行こう。」


「……え? スクラップ場? なぜ?」


「単刀直入に言うと、マシンのための改造部品探しさ。」


「……逃げるつもりか? 嘘は通じないぞ。」


「そのままの意味さ。信じてくれなければ、一緒に来れば? ちょうど輸送車もほしいところだ。」


「……」


店長は断るはずだと、先明は確信した。


ところが――


「フッ、いいだろう。3rd Genばかりの部品を頼んでたし。」


「予想外な言葉だな。」


「……いいや、予想外でも何でもない。肝が据わっているところが気に入っただけさ。」


「……」


「さ、ご飯食べよう。今日は私もここで食べることにしよう。でなきゃ力が漲らないからね。行くんでしょ? スクラップ場に。」


そして、食事を取った後、二人は輸送用V/Mに乗った。


「店長、ここからスクラップ場まで遠いか?」


「いや、そうでもない。」


「そうか……」


「…………そういえば、もし私が断ったら、君はどうするつもりだった?」


「……跪いて店長の足にしがみつき、靴を舐めながらねだるつもりだった。」


「ゲホッ……私のさっきまでの感動を返せ。」


かれこれ1時間、二人は無事にスクラップ場に着いた。


そこには光もなく、残っているのは静寂のみ。


マシンの墓場だ。


先明はマシンから降り、行動し始めた。


店長は詳しくないので、そのまま重量物の運搬と待機をすることになった。


「とりあえず3rd Genに勝つために、出力と持続力を上げないと……」


あちこち探している先明だが、突然、とあるV/Mに目が止まった。


「それだ! ありがたい!」


――大型重工系V/M


それは、2nd Genによく見られるタイプだ。


大型のジェットを搭載し、高出力化することで、輸送やハードな作業でも楽に行える。


何より、大量生産に向いていた。


ただ、唯一の欠点は、スポーツタイプと違い、当時の規格や規制の影響で取り回しが悪かったことだ。


そのため、工場や建設現場専用となり、狭い道には入れなかった。


ということで、彼は店長に頼み、その四基を載せた。


残りのスペースに金属板やコード、まだ使えるワイヤーなどを載せ、ひと段落したところで帰ることにした。


「今後は直々にここに来る」


先明はそう店長に話した。


帰り道。


過ぎ去る一つ一つの街灯に映し出されるのは、無言で眉間にシワを寄せる岩崎先明。


しかし、街灯のせいなのか、その目の奥が光っているように見えた。


先明は、久しぶりにやる気を感じていた。


そして、彼は何かを感じた。


「店長。」


「嫌な予感するけど、どうした?」


「腹減ったので、帰ったら夜食しないか?」


「嫌だ。太る。」


先明はブルーな気持ちになった。

なぜスポーツタイプのジェットを探さないのかって?


旧世代のV/Mはリセールがいいので、なかなか廃車になりにくい。


それに、スポーツタイプは複雑なメカニズムを採用しているため、修理もしづらい。チームじゃないと時間かかる。

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