対陣中の織田と長曾我部
辺り一面に血の海が広がるのは、ここ伊勢の国北部。西から進軍してきた長曾我部軍は、略奪と殺戮を思うがままにしている。
「ははははは! 進め進め! この地を我らで地獄絵図と化してやろう!!」
馬に乗りながら高らかに非道な発言をしているのは、南蛮衣装を纏った一人の少年。これが、この戦国での長宗我部元親である。
「元親様、伊勢と美濃の国境に織田の軍勢が集まっております。数はおよそ一万。総大将は、丹羽長秀、副将は明智光秀とのこと」
そんな彼のもとに、伝令兵が織田軍の情報を伝えに来た。
「ほほう、遂にあいつと戦う時が来たって訳か! 興奮するねえ......」
それを聞き、舌なめずりをしてニヤニヤする元親。そして背中からぞっとするようなオーラを放ちだす。
「で、では私はこれで......」
寒気を感じた、伝達兵はそそくさと元親のもとを立ち去った。
「そろそろ、あれを開放する時かな......」
元親の笑みは、いつの間にか悪魔の領域に届こうとしていた。
一方、こちらは織田の陣営。軍馬にまたがって、歩は目線の先に見える物々しい軍隊を見つめ、顔をしかめる。
「長曾我部って、こんなに悪魔のような軍勢だったか? どっちかというと、弱弱しい印象があったのだが......」
授業で習った印象と違い過ぎて、歩は首もかしげる。
「一応、戦闘に関しては積極的で『鬼若子』と呼ばれていたらしいですよ」
隣の軍馬の上で晴彦が軽い解説をする。
「それにしても、これって史実の織田軍以上じゃないの?」
「そうですね。これはなかなかに酷いと思います。何せ、血の匂いが数キロ離れた僕たちの所まで届くレベルですから」
この血の匂いのせいで、織田の兵の中でも具合を悪くするものが出るくらいだ。
「兵数はこちらが若干不利だからな。慎重にいくしかないだろう。だがしかし、様子見を続けては民が何をされるか目に見えている。犠牲を少なくするには......」
長曾我部の軍勢はおよそ一万六千。無謀な突撃は被害を大きくしてしまうだけである。
「くそ、こんな時にリョウがいてくれれば......」
歩は思わず唇を噛んでしまう。
「一度、牽制をかけるために攻撃するしかありませんね」
「松野、その通りだ。よし、明日の朝五千の部隊で奇襲をかける」
「分かりました。他の武将さんたちにも伝えてきます」
晴彦は言われたことをすぐに実行に移すべく、軍馬の首を反転させ、一気に走り去っていった。
「......中山さんたちも心配だが、こっちもかなり状況が悪いな。リョウ、俺は君なしで指揮官を務められるか、不安で仕方ないよ」
この場にいない友を頭に浮かべながら、歩は気を落とし続けた。
すみません。間が開いてしまいました。急いで次の話も仕上げていきたいと思います。
里見レイ




