対面
夜になった。明日奇襲をかける武将たちは既に床に就き、留守番部隊の武将たちは各場所で夜の見張りをしている。そして歩と晴彦は、未だに陣の中央で相談をしていた。
「奴らの情報は皆無だ。誰に気を付ければいいのか、どのような戦術を好むのか全く分からないから、この奇襲である程度データを得られればいいんだけど」
「難しそうですね。彼らは固まって行動をしていますので、誰もが要注意人物です。ここは、相手が撤退せざるを得ないような状況を作り上げるしかないですね」
「ただ、それを全く思いつかないっていうのが問題だけどなあ」
「そうなんですよねえ......」
会議をしているが、打開策どころか妥協案すら思いつかない状態だ。ただ、いつもこのような作戦はリョウが立てていたので無理もない。
「埒が明かないな。俺たちも寝よう」
歩は意味のない会議に終止符を打つと宣言した。
「同感です。やはり、僕たちでは防衛で精一杯。欲を出さずにできることをしましょう」
晴彦も賛成する。そして、椅子から立ち上がった。
「では、おやすみなさい」
「うん、おやすみ」
晴彦は、歩に先んじて陣を抜けた。それを見届けた歩は、一つ大きなため息をつく。
「この刀が、俺に何かを語りかけてくる。ここから西へ三キロ、そこへ行けっていう事か......」
腰に差した長刀が、テレパシーのように歩にそう言ってくるのだ。その意をくみ取った歩は、一度人払いをしたという事になる。
「行くしか、ないのか?」
歩は自らに問う。大将が軽々しく単独行動するのは非常識にもほどがあるのだ。
行け。お前が雌雄を決さねばならぬ相手はそこにいる。
刀が歩にそう語りかける。
「......嫌な予感しかしないが、死なない程度にやるしかないか」
歩は自身にそう言い聞かせ、陣を出て西へと向かった。
「ふふふふふ。来たね、丹羽長秀」
周囲には少し強めの風が吹き荒れる荒野に辿り着いた歩は、目の前にいる南蛮衣装の少年にそう声をかけられる。
「お前が、俺を呼んだのか?」
歩は手元の刀を確かめながら質問する。
「ああ。お前の持っているその刀と俺の武器は互いを戦わせるように設計されているからな」
少年は、よくわからないことを口にする。
「俺のこの長刀は、魔剣だという事か?」
「そんなレベルじゃないけど、俺たちが戦うように機能を調整しただけさ。雷光寺歩さん?」
「! お前、この時代の人間ではないのか!?」
本名を言われたら、歩はこう反応せざるを得ない。刀に両手を添える。
「ああ。しかもこの世界を作った人間だよ。この血みどろの実験場をな......」
「ど、どういうことだ? お前らは、俺たちをここに召喚したってことか?」
歩の動揺はさらに大きくなる。次々と訳の分からないことを言われるのだから当然だが。
「まあ、詳しくは話せんがな。ここは旧時代の人間たちを戦国時代に押し込めて、彼らがどのように戦っていくかを観察する実験場だ。魔法などの特殊能力を加えたのは、俺たちが使う上での参考にするため。サンプル対象が同じ時代の同地域なのは、知り合い同士の殺し合いをどのように展開させるかを調査するため。な、簡単だろ?」
「な、なんて非人道的なんだ......」
「カラスも似たようなこと言われたらしいな。ったく、この時代の人間の共通認識なのかね」
非難されたにもかかわらず、その少年はヘラヘラしたまんまだ。
「お前、何者なんだ?」
「コウモリってここじゃあ呼ばれているな。任務は織田の足並みを根底から崩し、戦国を地獄とすること。そして、一族の悲願を果たすことさ」
「......悲願って、何だ?」
「決まってるだろう」
そう言って、コウモリという少年は腰から武器を取り出した。
「一族の仇である、雷光寺家を滅ぼすことさ......」
両手に取り出したのは西洋型の直刀が二本。そう、彼は二刀流なのだ。
「......」
歩も長刀を腰から抜いて構える。戦いを避けられないことは、火を見るより明らかだからだ。
ふうう。ここでまた新キャラです。頑張ります。
里見レイ




