露子の語る下原の真実 後編
「その日、下原家は二つの派閥が争っていました。一つは、太一様に絶対的な忠誠を誓う一派。あいる、沙恵さん、美樹さんのお父様方は皆そこに属しておりました」
露子は、次の事件について話し始める。さっきの茂の件より明らかに重い導入だった。
「そして、もう一つは佳乃様を下原家の跡継ぎにしようとする一派です。佳乃様は才能も能力も全体的に太一様を大きく上回っておりましたが、彼女は太一様のお父様の姉の子。つまりは分家の人間だったのです」
「なるほど、ドラマとかでよくありそうな話だな。そんで、その佳乃って人が女性だったことがまた話をややこしくしているんだろ?」
聞きての桜庭丸は、物事を瞬時に把握した。
「その通りです。そして、裏側で行われていた抗争は太一様が中学校に入学された瞬間表側に浮き出ました。きっかけは、沙恵さんの家の家族喧嘩です。先ほどお話しした通り沙恵さんのお父様は太一様側だったのですが、沙恵さんの兄である虎和さんは佳乃様側だったんです。虎和様は、幼いころから佳乃様の遊び相手としてお仕えしていたので」
「なるほど、それが京羅美樹と戦った虎和って男か」
「はい。事件は、美樹さんのお父様が下原家の有力奉公人、中曽根家を言いがかりをつけて失脚させたことから始まります。それに怒った虎和さんは、佳乃様と画策してお父様から小渕家を乗っ取ろうとしました。しかし、そこを美樹さんに密告され、佳乃様と虎和さんは下原家を追放されてしまったのです。これを皮切りに、佳乃様側だった奉公人たちは次々と失脚、追放されました。そして、太一様側だった家から警備責任者、専務、メイド長、秘書長が選出され、その娘である私たちが太一様の側近として使えるようになったのです。なぜ女性だけかと言いますと......」
「計略を張り巡らす大人の男たちに恐怖を覚えるようになったから、か?」
「流石です、その通りです。全てが太一様の知らないところで行われ、太一様が気が付いた時には全てが終わっていました。これに、太一様は大いに驚き、悲しみ、そして怯えたのです」
「なるほど。これが下原太一の過去の全てと、黄泉の国の軍勢のメンバーの情報ってことか」
「はい。私が話せることは、これで全部になります」
このセリフを吐いて、くたくたと横になる露子。まだ朝だが、彼女は一日の体力を使い切ったように見える。
「結構複雑だな。これじゃ、そいつらと話し合う余地はほぼないか」
情報を得て、これから戦う相手が一筋縄ではいかないことを改めて認識する桜庭丸。
「ええ。第一、茂様方がどうやってあんなに巨大な力を得てこの時代にタイムリープしたのかが気になります」
「そこは、他のメンバーの特殊能力にも関係しているかもな。松平も武田も該当者はいなかったが」
「織田に、聞いてみますか?」
「そうだな、何気ない世間話として話を引き出すのが有効だろう。最初の話に戻るが、成川リョウに浅井と戦う気がない以上いつ敵に回ってもおかしくない訳だし」
二人はサクサクと話を進めていく。
「俺の知らない間に、随分と話題が具体的になったんですね。鈴木さん」
と、そこに目覚めた太一が割り込む。
「全く、こういう話は僕を交えてやって欲しかったな。少し寂しいよ桜庭丸」
すっと襖があいて吉樹も参戦した。
「ってお前ら! 何で俺にのみ言ってんだよ? これは春日部との合意の上で進んだんだが!?」
突然入り込んで文句を言う男衆に渾身の突っ込みを入れる桜庭丸。
「それが人の過去を盗み聞きした人の言うことですかー?」
「桜庭丸、家族に隠し事は禁止だぞ!」
「だー! 面倒くせえなテメエら!」
頭をかいて桜庭丸はわめく。
「ふふ、意外に太一様と気が合うかもしれませんね」
太一が意外にも吉樹たちと馴染んでるのを見て、露子は笑みを溢す。
戦いは暗礁に乗り上げているが、微かな希望も残っていた。
これで、全陣営を一通り書きました。次は、織田陣営と松平・武田陣営を書いて、長曾我部戦に移りたいと思います。
里見レイ




