滅亡時の力量差
「で、あいつらの戦闘能力についてなんですが......」
黄泉の国の軍勢を名乗るかつての家族との対面まで話した太一は、ここで一度話を区切る。まだ、気持ちの整理ができていないのだ。
「無理に語る必要はないよ。君のその顔で、大体のことは分かったから」
吉樹は太一を気遣う。
「いや、話させてください。情報は、多いに越したことはありませんので」
しかし、太一自身の武将としての誇りがそれを許そうとしなかった。
「いえ、ここは私から話します。太一様はもう十分に話されました。残りは少しですので、後はお任せください」
ここに来て、露子が口を開く。彼女自身、出番を待っていたのだろう。
「お願いするよ、春日部さん」
吉樹はすぐに発言を促す。それほどまでに、太一の表情は疲れ切っているのだ。
「はい。あの後あいるは敵に回り、私たちが呆然とする中沙恵さんと美樹さんが戦いを始めました。それはもう、悲惨としか言いようがなく......」
先制攻撃を仕掛けたのは、殺気立っている沙恵だった。
「消え失せろ! この裏切り者ー!!!」
鎖鎌の先端をあいるに向け、全力で振りかぶった。その時の距離と沙恵の鎌を振る速度から考えると、致命傷は避けられない。はずだった......
「無駄だよ」
茂はこう言った後、軽く指を振る。直後、あいるの前に見えない防御壁が発動し、沙恵の鎖鎌をはじいた。
「あいるに手を出す者は、僕が木っ端微塵にしてあげるよ」
怒りの表情を露わにし、茂の指がまた軽く動く。
「グアア......!」
突如、沙恵は首を絞められた感覚に襲われもがき苦しむ。
「僕は、守りたいものすべてを守ると決めたんだ。だから、邪魔者には容赦しないよ......」
「茂様......私もその中に含まれているということですか?」
「勿論さ、あいる。君に全てを押し付けてしまったことが一番の後悔であり、君の笑顔こそが僕が一番欲しいものだからね」
「ありがとうございます......では、私に覚悟を決めさせてください。私の手で、過去を消去します。その小刀、お貸しいただけないでしょうか?」
茂は笑顔になり、無言で小刀をあいるに渡す。
「じゃあ、お別れです沙恵さん。私はもう、太一様の呪いに囚われなくて良いので」
苦しげに首元を抑えている沙恵の腹に、あいるは滑らかに小刀を差し込む。
「あ、いる。お前は、そんなにもあの時の事を......」
これが、沙恵の最後の言葉となり、彼女は糸の切れた操り人形のように倒れた。
「......あいる、次は私が相手しよう。負けと分かっていても、戦うのが忠誠心という奴だろうからな......」
無機質に死体となった沙恵を眺めた後、美樹が戦闘態勢に入る。
「では、ここは私がお相手しよう。妹を直々に殺せなかったのはちと残念だが、茂様優先だったわけだしな」
両手に鋭利な刃物のついたグローブをはめながら、虎和はにやりと笑う。
「......あなたは、沙恵を憎んでおられるのですか?」
「もちろん。私たちの人生を台無しにした張本人の一人なわけだからな」
「実行したのが、あなたや私の父親であるのにですか?」
「ふっ、父へはもはや憎しみ以上の感情を持っているよ。それこそが、私をここまで連れてきた原動力でもあるがね」
「......そうですか」
納得はしないが理解はした美樹は、ここで話を終了させる。
「じゃあ、始めようか。一瞬で殺してあげるよ」
虎和は不敵な笑みを溢して開戦宣言した。直後、
「バイバイ......」
「な......」
美樹の首元から勢い良く血しぶきが飛び出し、その血を虎和は背中で浴びていた。
「一瞬で美樹の首を切り裂いて、さらに正面では返り血を浴びないところにまで移動する、だと」
今まで呆然と戦況を見ていた太一は、ここぞとばかりに凍り付く。
「太一様!」
次は太一がやられると察した露子は、全力で彼の腕を引っ張り隠し扉を開いて脱出を開始。
そう、太一率いる武田家は一瞬のうちに四天王の二人を殺され、一人に見限られ、あっけないまでに滅亡したのだった。
間に合いませんでしたー! とりあえず、今日中にもう一話出すので勘弁してください!
里見レイ




